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砂明利雅
2023年7月17日 02:35
大広間内を駆けるその黒影は、激しい足音を立てながら、壁際に座る宴の参加者の目の前を疾風のごとく通り過ぎた。一瞬の間に中央の空間にいる私と菊花様の横を通り過ぎ、私たちに空気流を浴びせると、そのまま王の座す玉座に向かっていった。途中に立つ兵士の槍が弾かれ、金属音を響かせる。兵士は飛ばされ床に倒れた。そのまま黒影は王の元へ到達してしまった。 あっという間だった。その者は玉座の裏に回り、王の右腕を左手
2023年7月17日 03:57
人々が我先にと逃げ回り、怒号が飛ぶ。一方では悲鳴、嗚咽、そして狂喜の笑い声が上がる。まさに混沌であった。 そんな中、私と允明は刀を向け合ったまま対峙する。背後には菊花様がいる。彼女に奴を近づかせはしない。「どうした? かかってこいよ、豊蕾。この雑魚女」 大柄の允明が見下してくる。亡き龍翔が斬ってつけた左頭の傷からは血が流れているが、その勢いはおさまりつつあった。允明はさっきまで痛がる様子