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[感想と考察]市川春子作品集【虫と歌】〜星の恋人〜編
はじめまして。Takiと言います。アニメ宝石の国からズブズブと沼に落ちた市川春子オタクです。
最近オタク仲間が短編集を買ってくれまして、感想を言い合っていたところ熱が高まりまくったため、ここに感想と軽い考察を残すことにしました。
暇つぶしにでも見てもらえると幸いです。私自身の文才はまるでありませんが、ぜひ短編集を読んだ後に眺めてほしいです。
今回は短編集1冊目「虫と歌」収録の「星の恋人」編です。
短編集はどれも文学的で説明が少なく、理解の難しい部分もあるので個人的にはいろんな人の感想・考察を見るのは楽しいです。
〈あらすじ〉
主人公・さつきは母と祖父がフランスへ2ヶ月旅行する間、面倒を見てもらうために母の弟である「叔父」に久しぶりに会いに行く。
叔父の家に着くと叔父にはいつの間にか娘「つつじ」がいた。
娘の存在に驚いたのも束の間、叔父は口を滑らせ主人公の出自について話してしまう。
突然知った自身の特殊な出自に驚きつつも、共に生活するうちに主人公はつつじと仲を深めていく…
【注意】ここから先はネタバレへの配慮を一切しませんのでご注意ください。
主人公の正体は人間ではなく、母の頼みにより叔父が植物の細胞から作った生命体だった。
そして4歳の頃に切り落とした指を叔父が育てた結果、生まれたのがつつじだった。
〈オタクのひとりごと〉
いや本当この作者性癖隠さないな〜〜
と改めて思います。短編集2冊全体を通して必ず
①人の形をした、人でないもの
②生と死
③痛みを伴わない身体の欠損
が登場しますからね…ただ毎回これを出しているのにすべての話が面白いのがまた天才かなと…
(あと高確率で天才が出てきますね)
閑話休題
いやーーーーーー好きな話です本当に。
主人公を思って腕を切ったつつじは子供に戻り、記憶を無くしてしまいますが、つつじが切った腕はこれからつつじの思いの通り、主人公を好きになるんじゃないでしょうか。
「主人公が共に過ごしてきたつつじはもういない」ことを象徴するシーンとしてP48で「(フィルムが)まっくろ...」と言うのが良いですね………
このフィルムはP16で叔父が使用したものだと思われますが
叔父「しまったフィルムがデイライトだ!映ってないかも」
と言うように、フィルムがデイライト用※であるとことから映っていないんでしょうね
※屋外の明るさで撮影した際にちょうどよく映るフィルム。室内では光が足りない。
〈ここが好き!〉
①シリアスな話の中に組み込まれたユーモア
「星の恋人」はなかなか切ない話なのですが、序盤の叔父さんが口を滑らせて焦る様子や、言ってしまった事実をウソだったことにできないかな、と発言するシーンなどがユーモアに満ちていて面白いですね。
いかつい見た目をしているのに、人並みに焦るシーンがあるというのは「宝石の国」の金剛先生に似ていますね(というかビジュアルがほぼ金剛先生)
②P17のコマ割り
洗濯物の紐でコマ割りしてますね。短編集は独特なコマ割りが多くて見ていて面白いです。
③P52の一枚絵
短編集はどれも最後のページの後に小さな絵が描かれているのですが、これがどれも話の後日談を示しているようで好きなんですよね…
「星の恋人」の後の一枚絵は、おそらく「子供に戻ったつつじ」が「切られた腕から生まれたつつじ(仮)」をあやしているシーンなのではないでしょうか。
本編中では「つつじ」が記憶を失ってしまったことに悲しみを持ちつつも「子供に戻ったつつじ」の成長を望む、という切なさの中に希望を持った終わりでしたが、P52の絵によって「つつじ」が思いを込めて切った腕が無事「つつじ」の思いの通り成長していっていることがわかり、よかった…本当…よかったなって………(突発限界オタク)
またP19の一枚絵も素敵ですね。市川春子作品の大コマは、全体的に静かな雰囲気を持つものが多く独特だと思います。
いや本当好きなところあげていったらキリないですね…「特別製のニセ物」とか「君とまた一緒になりたい」とか、この辺の語彙センスかなり好きです。
〈考察?〉
考察というか、何度か読み返していて気付いたことです。
・P37、さつきの脚が映るコマがありますが、よく見ると濡れています。
きっとつつじが欲しがっていた貝を拾いに行ったんでしょうね。海に入るのは良くないと言われているのに拾いに行くのが素敵です。
〈最後に〉
短編集の1話だけなのに、割と長めの記事になってしまいました。宝石の国が好きな方なら買って損はないと思いますので、ぜひ買ってくださいね。
(特に今は宝石の国が休載中ですから、市川春子成分の吸収にちょうど良いんじゃないでしょうか)
短編の他の話についても書くかもしれません。
拙い文ですが、最後まで読んでくださりありがとうございました。