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道民のソウルフード

当たり前に食べていたものが食べられなくなるのはツライものだ。
不漁・不作というだけでなく
違う土地に引っ越すと食べ物も違うもので。
40年以上も前の話だが
通信制の大学の夏季スクーリングで
修学旅行以来初めて北海道を離れて東京の夏を過ごした時
ホームシックには全くならなかったが
ラーメンが恋しくてたまらなかった。
東京だから大抵のモノはある。
だがしかし!ラーメンが無い!
学食にラーメンはあったが・ラーメンじゃなかった(泣
麺が中華そばという細くて縮れてなくて引っぱるとのびる麺で
あの、札幌ラーメンのしっかりと縮れた中太の麺ではなかったし
上に乗っているモヤシが初めて見る「大豆モヤシ」で
自分がなじんでいた小さな豆のモヤシではなかった。
懐も寂しいからそうそう外食はできなかったが
どうしてもなじんだラーメンが食べたくて東京の街をさまよったのである。
結果
「札幌ラーメン」も「元祖札幌ラーメン」も「札幌味噌ラーメン」も
みんな中華そばで大豆モヤシで
自分のなじんだ札幌ラーメンではなかったのである。
スクーリングを終えて北海道に戻って
自分でラーメンを作って食べたときには本当に生き返った気がした。
イマドキは札幌ラーメンのセットがどこでも手に入ると思うので
北海道を離れている方々は今の世の幸せをかみしめて欲しい。
さてそれよりさらに昔
姑が言うには
北海道を離れた親戚が
「北寄貝」や「ホッケの開き」や「ジンギスカン」が食べたい
と言ってきては送ってやったのだと。
北寄(ホッキ)貝は、大人のこぶしくらいの黒い貝で
ワタを取って開いたものを熱湯にさっとくぐらせて刺身で食べる。
ホッケの方は北の海の魚なので東京ではナカナカ売っていない。
以前、東京の大学の先生が北海道に来た時に居酒屋でこれを食べて
「ボクはこんなに旨い魚を食べたことが無い!」と
非常に喜んでくれたことがあった。
また、ジンギスカンは名前自体は広く知られていたが
これがお店ではなく家庭で普通に食べることは知られていなかったようだ。
これはほら、大阪のタコ焼きやお好み焼きみたいなものだろか。
さらにまた
私も30年以上前になるが東京で2年ほど暮らしたことがあって
その頃には札幌ラーメンのセットは手に入ったものの
ホッキ貝も羊肉もホッケの開きも見つからなくて
下宿していた頃のように東京をさまよったのであった。
ジンギスカンを食べたくて、タレは自分で作れたのだが
東京では羊肉自体が見つからなかい時代であった。

なるほど、ソウルフードというものは
離れて初めて「え、無いの!?」と気が付くものなのだなあ。