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思想弾圧のために「ローマの休日」を偽名執筆した共産党員「トランボ ハリウッドで最も嫌われた男」

公開時から見たいと思っていながら見逃していたトランボ
NHK BSで録画視聴することができました。

タイトルに書いた通り、あの名画「ローマの休日」の脚本は共産主義者として迫害され、仕事を失った脚本家がやむなく他人名義で上梓したものだったという実話を基にした映画です。

冒頭から非常にテンポ良くトランボの人物像や共産主義者の立場が描かれて、この映画の世界へ導いてくれます。信念を曲げない姿勢、正義感、非暴力、仕事、仲間たち、娘とのやりとり。多くの要素を並べて主人公への共感を引き出す素晴らしい導入部。折しもハリウッドでは俳優やスタッフによるストライキが決行されており、今の状況と重なるではありませんか。

しかし、話は勢いよく暗転の方向へ進み、トランボが窮地に陥り、遂には刑務所送りに。一体どんな人物がどのように言論抑圧、反共、赤狩りに加担したのか、理不尽さに震えてしまいます。少ないながら、言論の自由を訴えた人がいたことも垣間見えながらも、生活のために圧力に屈する側も描かれます。

当てにしていたリベラル派の最高裁判事が突然二人も死去するなど、思わぬ不運とアメリカの裁判制度の機微にも、近年のギンズバーグ判事の死去とトランプ前大統領による保守派判事の任命が思い起こされます。

政治や世界情勢が如何にエンターテイメント産業に影響を及ぼし、表現が規制され、あるいは自主規制されたのか。愛国の名のもとに行われたことは正しかったのか。深刻なテーマを扱いながらも、確実にエンターテインメントとして仕上げてくるアメリカ映画の技量、それにはいつも感心せずにいられません。エンタメに仕上げるために、そぎ落としたり単純化したりの作業があったと思われますが、深みを失わずにメッセージを届けられる。さすがです。

アカデミー賞女優、ヘレン・ミレンの演技も強烈で、上手すぎて本当に憎らしくなります。しかも本人激似!衣装も楽しい!

映画好きならぜひぜひ、ハリウッドの黒歴史(だと思いたい)、レッド・パージの一端をこの映画で追体験してみて欲しい作品です。







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