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普通が問われる時
普通でないは“生きづらい”か――
かっこ悪くたっていいよ
そんなこと問題じゃない
君のこと笑うやつは
トーフにぶつかって死んじまえ
ザ・ブルーハーツ
人とは何か。
そう問われ答えて曰く、
問いのうちに答えがある、
などと、
特に考えもなしに書き出してみるとそんな気がするもので、人であれ世界であれ〈この私〉のみている、あるいは知っている〈それ〉がそのまま答えであるならば、
人とは何か。
そう問われて思い浮かべた〈それ〉が、皆様それぞれにとっての〈人〉であり、そうしておそらくはそれが普通の〈人〉となりましょう(大谷翔平を指してこれが人だとなれば世には人でなしばかり)。
たゞたしかに記録されたこれらのけしきは
記録されたそのとほりのこのけしきで
それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで
ある程度まではみんなに共通いたします
(※傍点筆者)
宮沢賢治
〈普通〉とはおおむねそうだといいうる共通項であるとしても、人それぞれに感性は異なり、それぞれ〈個性〉に応じた〈普通〉があり〈当たり前〉があると言えますが、〈それ〉が通用する場であれば問題はない、否問題たりえぬ(自宅でなら全裸で過ごしても問題なきように)。
〈普通〉が問題になるのは〈個性〉に応じた〈それ〉が多数派の〈それ〉とは異なり、かつ異なることによってその場に居づらくなる、または排除される(恐れがある)ことでありましょうが、誰しも他者とは異なっているゆえ誰にでも起こり得る問題であります。
あらゆる人にとって当然で当たり前だと感じる「ものの感じ方」や「価値観」は,その人の脳や神経のメカニズムに大きな影響を受けている
村中直人
脳科学の知見によりますと、先天的に脳や神経の働きはみな異なるので人それぞれに見えている世界は違うといいます。
ですので多数派の〈普通〉は必ずしも誰もが訓練学習という努力によって、あるいは教育によって後天的に獲得できるものではないという視点と、獲得しえぬということもまた〈個性〉であるという少数派への〈理解〉があればいい、というのが本稿の立場でありますが、
〈個性〉はシステマティックに疎外され、人は“生産性”という〈能力〉で評価される能力主義が社会を支えているという側面も現実である以上、無視することはできませぬ(企業の経営者はもとより為政者や官僚は有能でなければ)。
自己責任、自助努力が求められる世にあっては、〈普通〉や〈当たり前〉とはできて当たり前、できるのが普通という評価軸となり、〈普通〉であるか否かということは〈個性〉ではなく〈能力〉の有無、優劣の問題となってしまう。
ここに強者と弱者という構造が生じ、強者は強者であるために弱者を弱者たらしめようとおよそ生産性のない、足の引っ張り合いを演ずるのかも知れませんね。
(能力に限らず)普通ではないことを理由に排除するとは子どものいじめと変わりませぬが、みないつ自分が蹴落とされるかも知れぬというマインドゆえ、共助という考えはない、これが今の日本の多数派、“普通の人々”でありましょうか。
こんな時代だからこそあえて申し上げますと、
能力とは差異である、
個性とは絶対である、
合わない集団とは適度に距離を取り、
自らに由りましょう。
私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。
金子みすゞ
“みんなちがって、みんないい”
100年以上前に書かれたこの一文の解釈は時代によって、場所によっても、人によっても異なるでしょうが、イギリス在住のコラムニストのブレイディみかこ氏が、みんな違うのは残酷だと言っておられて🔗、誰もが他者とは絶対に異なる自己であるにも拘らず、多様性が世界の普通であり、正しいかのような振る舞いを画一的に求められ、その結果自己が疎外されている。
個人だけではない、国家単位でも、グローバリズムという名の下に。
されど〈それ〉も今、揺り戻されている。
何が普通か分からぬ時代が早晩やってくるでしょう。
アメリカで山火事に続いてまた痛ましい事故が起きましたが、人事において能力より“多様性”を重んじたと前政権をここぞとばかりに非難する現政権。
“力による平和”、“自国最優先”を掲げておりますが、“祈るのが平和”であり自国の防衛は外国頼みといまだに寝ぼけているこの国は、果たして世界についていけますでしょうか。
普通が問われている今、先はおろか、きっと何も見えてはおりますまい。
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今?
お読みくださりありがとうございました。
寒波が来るそうで。
皆様、遭難などされませぬように。
竹中直人監督・主演『普通の人々』(1993)
昔はまだこういう普通の人が
何処にでもいたものです(嘘)
おおらかさが懐かしい
貧すれば鈍するですかね