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世界「倒産」図鑑のとってもマニアックな読み方

まず最初にお伝えしたいこと。


この文章は、自主的にサナフミが書いたものであり、公式でもなければ、頼まれたものでもありません。筆者の考えと多分に違っている点もあります。

あくまで、サナフミが筆者の荒木さんへ感謝と敬意を表したものであります。

365日Voicyの「荒木博行のbook cafe」を聞き
隔週で、flier book laboでディスカッションした人間が綴るマニアックな文章であります。

タイトル

前作がビジネス書図鑑であったから、その流れで図鑑形式にした、と想像するのは容易ですね。

また、「倒産」の文字が大きいように、
あえてフォーカスしづらいテーマを取り扱っているところに、この本の醍醐味があります。

が、サナフミとして着目したいのは、サブタイトル。

「波乱万丈 25社でわかる 失敗の理由」

気づきませんか。

そう、このリズム、五(四)、七、五です。
アマゾンなどでは、空白なしで文字が続いていますが
本の背表紙、表紙、は必ず、この区切り方になっています。

これはflier book salonで対談をした「すべての知識を20字にまとめる」浅田すぐる氏の著作を思い出さずにはいられないです。

(ただ、当然ながら編集者の方からの提案の可能性も否定できない)

どちらにしろ、日本人の読者としてしっくりくるタイトルの付け方であります。

はじめに

いきなり「荒木節」が炸裂な箇所。

一言でいれば「肉と野菜」である。
注)「肉と野菜」とは、バランスが大切、という意味。肉を食べ過ぎても、野菜を食べ過ぎても健康的ではない。両方バランスよく摂ることが健康的だ、というニュアンスを含んでいる。
 応用例)論理と直感、主観と客観など。

成功例ばかり学ぶのではなく、失敗事例からも学ぶべき。そして、評論家ではなく、当事者の視点に立って学ぶべきである。

これが、コアメッセージ。

荒木さんのこの思考の原点は「イノベーションのジレンマ」だと考えられます。
著者である、クリステンセン氏を「師匠」と呼んでいるところから推察されます。
(リンクはクリステンセンの著作を紹介しているVoicy)

そして何より、その後に続く
「過去の亡霊」型のフレームは、クリステンセンの影響を受けていると、これまた推察できます。

荒木さんの思考の源泉を学びたい人は、クリステンセンは必読。

目次

読者の皆さんは気づいただろうか。
「〇〇型」と書かれた箇所は吹き出しになっていることを。

これは、後に触れますが
各社の事例を紹介するページでも

「どういう会社だったのか」
「どのようにして倒産に至ったのか」
「なぜ間違えたのか」
「私たちへのメッセージ」

は全て吹き出しになっています。

これはつまり、会話(対話)の形式。
荒木さんは、一方的に講義をするよりもディスカッションしていくことを好んでいます。ビジネススクールでも、相手に問いを投げかけ、一緒に議論しながら論点に沿って思考を深めていく。そんなスタイルですね。(授業を受けたことないですが)

だからこそ、著作においても、語りかけて、問いを投げかけているような雰囲気を感じられるようになっている(のではないか)と思います。

Voicyのチャンネルのリスナーであれば、頭の中で音声が再生されている。そんな気分を味わえる吹き出しのメッセージになっています。

各社に事例ページ

それでは、本書のメインとなる内容に入っていきます。
ここは内容をさらに分割して、

・イラストページ
・内容(メイン文章)
・ライフラインチャートページ

の3つに分けて考察していきます。

・イラストページ

まず触れるべきはイラストでしょう。
ただ、「かわいいなー」「面白いな」だけで
通り過ぎるのは、もったいないです。

よく考えてみましょう。倒産した企業が人になっているんですよ。しかも、どこか納得をしてしまうようなイメージ。

我々は、なぜ納得感を感じるのでしょうか。

それは、分析をする人は「メガネ」をかけている。
欧米の人は、鼻が高く、スーツのビジネスマン。
のように、多くの人が持っているそれぞれのイメージをうまく掴んでいるから。

いやいや、そんなことはないと思う人でも、中身を読んだ後に、もう一度イラストを見ると納得してしまう。そんな不思議な魅力がありますね。

そもそも、このイラストページは、
「この企業を一言で言うなら」と要約しているページです。

・倒産に至ったキーポイント
・倒産した会社のイメージ=イラスト

きっと荒木さんは、何度も消しゴムで(バックスペースキーで)書き直した箇所ではないでしょうか
(わからんけど)

よく言う、できるビジネスパーソンは、要約力(一言でまとめる力)が高いと言われています。まさにお手本のようなまとめ方。あっぱれでございます。

さらにここからの学びを活かすのであれば、
我々も本を読んだ後に
「本を擬人化(キャラ)にするなら、どんな人か」
とイメージをして、イラストを描いてみてはいかがでしょうか。

誰かに見せるわけでもないので、一人こっそりとメモ帳に書き出してみる。そうするだけで、記憶の残り方が変わってきます。

「1分で話せ」とかであれば、命令口調の人かもしれません。本を読んで、言葉でまとめることは比較的やりやすいですね。言葉から言葉の変換なので。

しかし、言葉からイラストになると、必ず自分の頭を通して、インプットからアウトプットへ変換する必要があります。良い思考のトレーニングになりますよ。

さて、次に行きたいところですが、もう一つだけ。

ページ右上の番号を見てみてください。

「001」や「014」と書かれています。
なぜ、「1」や「14」ではないのでしょうか。

考えられるのは2点。
1.いつか世界「倒産」図鑑の続きを書くため
2.「この本には載っていないけど、世界にはたくさんの倒産事例があるよ」と言うメッセージ

Voicyチャンネルのリスナーであれば、この本を作るにあたっての荒木さんの苦悩を知っているかと思います。「時間がないんですよ、やばいです」と漏らすコメントはきっと本音。読者としては、パート2を気長に待ちましょう。

・内容(メイン文章)

先ほどは、会話形式の吹き出しについて触れました。
その内容を見てみると、これらの問いかけは「2W1H」になっています。

「どういう会社だったのか」=What
「どのようにして倒産に至ったのか」=How
「なぜ間違えたのか」=Why
「私たちへのメッセージ」 =So What(だから)

これまたお手本にしたい思考のフレームです。
本を読んだり、情報をインプットする際に役立ちます。

先ほど触れた、浅田すぐる氏の著作に詳しく載っていますので、ご参考まで。

ここで押さえておきたいのは「私たちへのメッセージ」の部分。これは、倒産事例から何を学ぶべきなのか、その学びが抽出された部分。

ここは、「なぜ倒産したのか」と問いを重ね、抽象化された要素を現在の私たち(ビジネスパーソン、経営者)に当てはまるよう具体化している。

そう、「具体と抽象」です。
注) 具体と抽出とは、荒木さんがよく話をするキーワード。何かを学んだり、考えたりするときに物事を抽象的、具体的、両方の側面から考えることが大切。その視点を自由自在に動かせる訓練をしましょう。と語っている。

例)自分にとってのキャリアを具体的に考えたら、人類にとって何が必要かを抽象的に考えてみる。そこからまた、個人のことを考えてみる。など。

荒木さんに限らず、ビジネス書の中でもキーワードとなることが多く、「地頭力を鍛える」で有名な細谷 功氏もそのままのテーマで本を書かれています。

私たちも、本を読んで終わりでなく、自分に置き換えてみると、何が言えるのかを自分自身で抽出できるようになりたいものです。

・ライフラインチャートページ

最後のパートてずが、このページには「チャート」と「3つのポイント」が書かれています。

「はじめに」でも書かれていたように、ライフラインチャートについては、荒木さんの主観が大いに含まれています。幸福度とあえて漠然とした指標を選んだところにも、その思いが表れています。

では、なぜ荒木さんはこのチャートを描いたのでしょうか。難しいこと、同じようなチャートの形になることはわかっていたのに。

サナフミが考えるに、このチャートは
「あなた(の企業)は、今どこにいますか?」
というメッセージであると思います。

コアメッセージとして、当事者意識を持つ、とありました。

「倒産」図鑑なので、当然何度見ても、どの企業を見ても最後は急激な下り坂のグラフになっています。

そのグラフは読者に問いかけています

・では、あなたの企業の場合はどうですか?
・下り坂に入る前の頂上ではないですか?

あえて、繰り返しチャート化していることで、企業にも寿命があると伝えているように思えてなりません。
肝に銘じます。

そして、ポイントを3つまとめた箇所。

この中には、個人(キャリア)への示唆、企業経営における教訓が含まれています。

ここのポイントも抽象度が違います。

明日からできそうな具体的なポイントもあれば、
こう考えた方が良いという抽象的なポイントもあります。

先ほど「具体と抽出」について触れましたが
視座が高い学びほど抽象的なものになりやすいため、企業(経営者)の視点で書かれたポイントは抽象的であります。

「私には関係ないや」ではなく、その抽象的なポイントほど、「自分に置き換えてみたら何が言えるのか」を考えることに価値があると思います。

風呂敷畳み人

奇抜なアイデアや大きな構想を語ることを「風呂敷を広げる」と言います。

その傍ら、実行可能な状態に落とし込む、つまりオペレーションレベルまで描き、実行することを「風呂敷を畳む」と言われています。
(Voicy界隈では)

そのチャンネルはこちら。

いきなりなんの話だ、となりますが

これは、019「マイカル社」の事例で書かれている
風呂敷を畳み切れず倒産
の背景説明であります。

荒木さんは、毎日Voicyを更新する中で、他のチャンネルのパーソナリティとの交流があります。
読書をテーマにしていることもあり、他者とのコラボも行いやすく、様々なイベントに参加されています。

その中で、風呂敷畳み人の設楽さん、野村さんとの対談イベントも実施されています。

執筆活動中の学びを著作の中にアウトプットされているところは、さすがです。

ちなみに、この「畳み人」についての本
も来年2月に発売されるので、乞うご期待です。

おわりに

さて、長々と書いた文章もそろそろ畳んでいかなければなりません。

最後に書かれているのが

戦略的=
「考える論点の多さ」×「考える時間軸の長さ」

つまり、物事を相対的に捉えよ
というメッセージではないでしょうか。

悩むことがあったら、
80歳になった自分から今の自分を見てみる。

これが正解だ!と思ったら
ユヴァル・ノア・ハラリ 氏も同じように考えるか
と立ち止まってみる。そんなことが大切だと思います。


長文を最後まで、お読みいただきありがとうございました。

つくづく、人は環境に大きな影響を受けると思います。特に、普段どんな人と交流を持つか、が大切であります。

私の場合、毎日Voicyで荒木さんの思考に触れ、時に読書会で議論を交わす。そうしているうちに、その思考プロセスがインストール(インスパイア)されているように思いました。

以上、私の抽象化of抽象化の学びでした。

誰かのお役に立てれば幸いです。










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