私が離人症になるまでのお話
part4 「T君」
中学3年生の夏終わりに1人になった私は、受験期で友達作りを諦めることにした。あと半年、受験でもうほとんどの友達と会わなくなるし、それに向けて授業も自習が増え、空き時間に1人でいても目立たなくなった。
勉強自体は好きだし黙々と1人で作業するのも好きだったからとりあえず1人で半年やり過ごそうと思っていた。
ここからが地獄だった。
とある男の子が、私のことをターゲットにした。
T君といい、小学校が一緒で当時は比較的仲良くしていて、小学1年生くらいの頃に女の子同士の恋バナで誰が好きかを(いなくても)絶対言わなきゃいけない時に、
強いていうならでその時席が近くよく喋っていたT君の名前をあげ、
ここだけの話が広まってT君から俺も好きだよと告白されたくらいの仲のよさだった。
子供だったので付き合うなどはなく普通にそのまま過ごし、クラス替えで別々になって中3で久しぶりに同じクラスになった。
当時彼は爽やかいい子だったけど、そんな面影はなく女よりネチネチして休み時間にいつメンと男子トイレ集合、出てきて嫌な噂話をしたんだろうなという空気を纏いながら、いつメンだけにわかるあだ名でターゲットをバカにし、目配せしてはクスクス笑う奴に変わっていた。
T君のいつメンは他クラスにもいたが私のクラスに固まっていて、7~8人いた。
T君は、男も女も自分に逆らえない奴は見境なくターゲットにし、いつメンの中でも気のくわないやつはターゲットにした。
集団で無視し、かつ本人に聞こえるか聞こえないかの距離で悪口や陰口、有る事無い事噂話をしてクスクスして、先生には何もなかったように振る舞っていた。
次のターゲットが私だった。
正直自分がターゲットになると思っていなかった。
今までT君のいつメンの中や、スクールカーストの最下層の子、目立った子に白羽の矢が立つことが多く、T君に近付いていないから安心していた。
1人でもなんとか頑張ろうと思っていたけど、無視されるのはまだいいけど、嫌な感じで視線が自分に向いていて、何か言われてるけど直接は絶対に言ってこなくて、でもキモいとかやば〜みたいな言葉だけはうっすら聞こえてくる空間にずっといなきゃいけなくて、泣かないようにするのが精一杯だった。
その空気はクラス中に伝染し、全然関係ない子も私を遠巻きにするようになった。
私自身も、私に話しかけられたら嫌かな、T君たち見てるもんね、と思って誰にも話しかけられなくなった。
相談できる友達がいなかった。
守ってとかまで言わないから、普通に接してくれる友達が欲しかった。
苗字でいいから、私個人の名前を呼んでくれる人がいて欲しかった。
担任に名前を呼ばれただけで泣きそうになるくらい、誰にも関わらなくなった。
担任に名前を呼ばれた時だけ、目が覚める感覚があった。
今思えばこのあたりで症状があったのかもしれない。
でも当時の私は気がつけない。
1人が、孤独になった。
続く