空を見上げて

朝起きて、テレビをつけるのが日課だった。
情報番組を見て、天気予報を見るためだ。
そして、画面の脇に小さく表示される交通情報を目にしては、
人身事故で運転見合わせの文字にため息をつく。
自分が利用する路線が止まっていたら、家事の手を止めてすぐに家を出る準備を始めなければならない。

そんな朝の時間を送っていた。
テレビは何かずっとワイワイと情報を垂れ流し、
私はそれに振り回されながらバタバタと家を出て行く。

リモートワークに切り替わり、
家にずっといる生活をはじめてから、
朝 テレビをつけることをやめた。
天気予報を見る必要がなくなったからだ。
その日着る服は、暑かったり寒かったりしたら、着替えればいいし、
洗濯物は、雨が降りはじめたらすぐに取り込むことができる。

世の中のみんなと同じようにあれこれと家のかたづけをはじめてから、
掘り起こしたCDをかけるようになった。
子供が小さかった時によく聞いた思い出など
音楽は忘れていた記憶を連れてきてくれる。
CDで順番通りに聴くというのは、物語を読んでいるような気持ちになるのは、私だけだろうか。

音楽とともにある朝の時間は
心穏やかで、
家事もはかどる。

朝起きて、窓を開ける。
今日の天気はどうかな?
気温はどうかな?
テレビ画面の代わりに空を見上げる。
そして、その日の気分にあった服を選び、軽く身支度をしたら
エプロンをつける。
音楽を選んで、朝食の準備を始める。
私の一日がはじまる。

自分で考え自分で選ぶ。
いつでも修正できる安心感。
自分の感覚をだんだん取り戻せてきたかもしれない。

曇りの日や風が強く吹いている日は
日に何度も空を見上げる。
そうやって、忙しい世の中と切り離された私の毎日は過ぎて行く。

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