映画『ジョーンズタウン』ー”地上の楽園”と呼ばれた町に隠されていたもの
1978年、約900人の死とともに、世界中にその名を知らしめた「ジョーンズタウン」。その小さな町で起こった驚異的な事件の背景には、一体何があったのでしょうか?
今回は映画『ジョーンズタウン』の解説をお届けします。
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ジョーンズタウンとは
映画の舞台である「ジョーンズタウン」とは、ジム・ジョーンズ率いるアメリカのキリスト教系カルト「人民寺院」によって、ガイアナの約124万平米の土地に建設されたコミューンのことです。
人種平等を掲げて設立されたこの小さな街は、そのほとんどがアフリカ系アメリカ人で構成されており、肌の色や信条に関係なく平等に暮らすことができる「地上の楽園」として人々に知られていきました。
もともと人民寺院は、貧しい黒人たちや社会的弱者への救済活動などを通して米国各地の人々から支持を得ており(信者の大半は黒人だった)、
ジョーンズは、獲得した信者たちをこのガイアナに移住させ、自給自足の生活をさせることで、人種差別のない”社会主義者のユートピア”を新たに築き上げようとしたのです。
「ジョーンズタウン」の怪しいもう一つの顔
しかし、元信者や信者の家族から、コミューンの生活環境を問題視し、「ジョーンズタウン」の内部調査を求める声が高まったことで、記者や議員が押しかけるほど深刻な事態になっていきます。
これが、まさに映画で描かれていたレオ・ライアン議員らの訪問のときです。
ちょうどその頃、人民寺院の脱退者が暴力や虐待などを訴えていたこともあり、米国内からは「ジョーンズタウン」への非難と懐疑的な目が向けられていました。
実際、後の調査によると、住民たちは過酷な環境のもと朝から夕暮れまで週6〜7日も働きづめにされ、ジョーンズの定めたルールを少しでも破ると暴行を加えられることがあったといいます。
また、子供は親からできるだけ隔離され、家族の絆を弱めることによって、人民寺院だけに意識が向くように仕掛けられていたのだそうです。
議員やカメラの前ではその素顔を全く見せていませんでしたが、住民に少し突っ込んだ質問をすると気まずそうに目を逸らしていたり、薬を飲んでいたと思われるジョーンズの精神状態が正常でないことは明らかでした。
そして、わずかながらにもその証拠の片鱗を掴み取ったリポーターたちは、数名の帰国希望者とともに帰ることを決意します。
この時、帰国を申し出た信者は16名ほどでした。
しかし、コミューンを去りたいものがいることにショックを受けたジョーンズが部下にライアン議員の攻撃を命令したことで、ライアン議員、そして、マスコミ関係者や脱走予定であった信者を含む計5名が、空港で射殺されてしまったのです。
なぜ集団自殺を成し遂げられたのか
この映画で何よりも衝撃的であったのは、議員らの襲撃事件後、なんのためらいもなく薬を飲んでいくジョーンズと信者たちの姿ではないでしょうか。
実は、度々教団内で集団自殺の予行演習を行っていたというジョーンズ。
彼は「最終的に信者全員が共に死に、その後魂はひとつになって他の惑星で永遠の至福を得る」という持論を唱え、定期的に”毒入り”のジュースを信者たちに飲ませるという、おぞましい訓練を行っていたのだそうです。
その回数は、多い時でなんと年43回にも及び、集団自殺に賛成しない信者は皆の前で名指しされ、糾弾させられました。
その影響もあってか、実際にシアン化物入りの液体が渡された際も、素直に従う信者たちが多かったそうです。
もちろん、中には逃げようとするものやパニックになったものも一定数いましたが、彼らのほとんどは無理やり薬を飲まされるか、銃殺されました。
ジョーンズタウンの住民約1,100人のうち、亡くなったのは909名。そのうち約300人が未成年の子どもでした。
この"ジョーンズタウン事件"は、2001年9月の同時多発テロ以前で「最も犠牲者を出した事件」となったのです。
明かされない住民たちの本心
劇中のジョーンズの言葉は、全て実際のカセットテープに記録されていたものです。
特に、エンドロールで流れているテープは ”死のテープ” とも呼ばれ、今もしっかり残っています。
その音声からは、「狂気の独裁者」としてのジョーンズの姿が見えてくる一方で、単なる盲目的な信仰心だけでなく、腐敗した現実を捨て、”作られた理想郷”を求めようとする信者たちの姿が見えてくるようでもあります。
秘密裏に見つかった信者たちの遺書の中には、
「人種平等を掲げたジョーンズタウンの方が、米国よりも自分たちを迎え入れてくれたように感じたことを、集団自殺によって世間に知らしめたかった」といった主旨のものもあったそうです。
また、とある生存者の黒人女性はこう証言しています。
なぜ多くの人々が彼についていき、この「ジョーンズタウン」で住民たちがどれほどの生活をしていたのか、ということに関しては、長年にわたるセンセーショナルな報道の数々やプロパガンダ活動、矛盾のある様々な主張によって、もはや何が真実かわからない状態となっています。
ただ、アメリカ国内で肌の色によって差別され、居場所を求めて戦うくらいなら、彼らはジョーンズというたった1人の男にすがるしかなかったのかもしれません。
※今回参考にさせていただいたこちらの記事では、ジョーンズタウンでの生活の実際の写真を見ることができますので、もし興味がありましたらぜひ見てみてください! ↓
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