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「ボクたちはみんな大人になれなかった」を読んで、もう美しい恋はしないなと悟る。

淡々と進む、ラブストーリー。
一途で、滑稽で、胸が締め付けらるような幸せと切なさが混在する、そんな私小説。
わたしはもうこんな風に、ままならない恋愛はしないだろう。
やっとの思いで作り上げたこのわたしの世界を、もう恋愛で乱したくはないのだ。

人生でたった一人、自分より好きになった人と、主人公との過去と今を描いた物語。
特に大きな事件も起きないし、わたしたちが普通に経験するような、大好きな人との恋愛や、毎日うんざりするような仕事の日々が、淡々と綴られている。

「好きな人のお祝いで、眠いと行くの」
彼女が受話器の向こうで大きく伸びをしたのが分かった。

”好きな人”。それが衝動的に出た言葉だとしても、それが後々撤回されたとしても、ボクにとって脳が痺れるような言葉だった。

ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻

2人が付き合うことになった日の、電話での彼女からの言葉。

誰かと付き合うことになって、どこかまだその実感がない時にふとした相手の言動で、わたしはこの人の彼女なんだと実感する。
この瞬間を何度経験しても、わたしは毎回たまらなく幸せな気持ちになる。
好きな人の特別になるということは、もしかしたら1番幸せなことなのかもしれない。

たとえハリボテの夢だったとしても、人間は背中のリュックに何か入っていないと前に足が進まないようにできているのだ。荷物は軽い方がいい。だけど手ぶらでは不安過ぎるんだ。

ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻

わたしは自由で気ままな独身を謳歌しているようにみえるだろうけれど、不安だ。
本当の意味で1人を楽しめるのは、自分には帰る場所があると思えるとき。
愛するあの人の元へ、今日もちゃんと帰れると分かっているから、1人の時間も楽しめる。
自分のリュックには何も入っていないと分かってしまったら、そこで立ち止まってしまうはずだ。


描かれる初々しい2人の恋愛は、あまりにもままならなくて儚い。
そんな美しい恋は時に苦しくて、いや、そのほとんどが苦しくて、世界がそれだけになってしまったように感じる。
そういう恋、嫌というくらい経験したから、わたしはもういいや。
もっと確実で確かな愛を探す年齢になっただけだと信じて、懲りずに今日も婚活をしてきました。オツカレ。


解説にも書いてあったけれど、この小説はフィクションも混ざっている私小説なのだが、書き手としての「自分に酔う」スタンスと「自分を突き放す」スタンスが絶妙なバランスなのだ。

燃え殻さんのセンスなんだと思う。
もちろん才能の部分もあるだろうけど、それよりも生まれ持ったセンスのようなものを感じた。

わたしはこうして日々書くことを続けているけれど、面白いと思ってもらいたいとか、誰かの心に残る文章を書きたいと思うがあまり、自分らしさというよりも、ウケが良さそうな表現をしてしまいそうになる。
でも、燃え殻さんのセンスに触れて、わたしにセンスがあるかどうかはさておいても、ありのままの自分で書いていこうと思った。

ありのままの自分で書いて、わたしらしいnoteを作り上げる。
またひとつ、これからの目標ができた。

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ぱいなっぷる子
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