国際バカロレアの教育から学ぶ8:教科の枠をこえた学習
国際バカロレアの初等教育プログラム(Primary Years Programme:PYP)では、教科の枠をこえた学習を重視しています。
3歳から12歳の子どもたちが、自分たちが生きる世界についての理解を深めるためには、既に持っている知識や経験と新しい知識や経験との間につながりを見つけていくことが有意義である、とPYPでは考えられています(IBO 2018)。
PYPで学ぶ子どもたちは、「人間の共通性」に関連するとされる次の6つの「教科の枠をこえたテーマ(Transdisciplinary Theme)」を中心として学習します。
私たちは誰なのか(Who we are)
私たちはどのような場所と時代にいるのか(Where we are in place and time)
私たちはどのように自分を表現するのか(How we express ourselves)
世界はどのような仕組みになっているのか(How the world works)
私たちは自分たちをどう組織しているのか(How we organize ourselves)
この地球を共有するということ(Sharing the planet)
PYPの教科の枠をこえた学習は、伝統的な教科の学習に支えられています。
PYPでは、6つのテーマに向き合いながら、探究的に学習に取り組むことになります。
PYPの「教科の枠を越えた学習」は、アーネスト・L・ボイヤーによって1995年に提唱された「核となる共通性(The “Core Commonality”)と呼ばれるカリキュラムの枠組みを参考にしています。
アメリカの教育学者ボイヤーは、カーネギー教育振興財団理事長を務めた人物で、キリスト教会(Brethren in Christ)の牧師でもありました。ボイヤーが考案した「共通性」には、次のものが含まれます。
ライフサイクル
シンボルの使用
集団の一員であること
時間と空間の感覚
美しいものへの反応
自然へのかかわり
生産と消費
目的をもって生きること
ボイヤーの教育論の根底には、聖書的視点・価値観が窺えるといいます(太田 2021)。
次回は、PYPが参考にしたボイヤーの教育観について、ご紹介します!
〇参考文献
太田雅子「1.聖書・キリスト教的価値観と国際バカロレア」太田雅子・鈴木光男・飯田真也・福重浩之・和久田佳代・二宮貴之・細田直哉「国際バカロレア(IB)教育についての考察―各教員の専門・関心分野における教育との比較検討―」『聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要』第19巻、2021年、pp.51-64.
ボイヤー, E. L. 著、中島章夫監訳『ベーシックスクール―アメリカの最新小学校改革提案』玉川大学出版部、1997年.
International Baccalaureate Organization, Learning and Teaching, International Baccalaureate Organization, 2018.
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