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あらすじ小説情報本文 紘斗 は気怠そうにベットに横たわっている 英里奈 を横目で見やる。 ――英里奈に坊主にしてもらうといつもこうなる。 夏の県大会予選で敗れ甲子園のない夏、三年が引退し、秋の大会に向け部活の練習は二年と一年の新チームが作られつつあった。 部活が終わり、その足でマンションの隣に住んでいる幼馴染の英里奈の家に立ち寄った。バリカンを持って「やってくれ」といつものようにお願いして、いつものように五分刈りにしてもらう。終わるとどちらからともなく求め、英里
あらすじ小説情報本文 「ただいま」 夫の亮介が帰ってきた。妻の紗英は今日はいつもより遅かったなと思い、出迎えるために玄関に向かう。 「おかえり」といつも通り声をかけた。ふと亮介を見ると、髪がスポーツ刈りまで短くなっていることに驚いた。「ずいぶん短いね」と聞くと、「暑いし、なんかスッキリしたくてな。さっばりしたよ」と頭に手をやりながら答える。 雰囲気がずいぶん変わった夫にドキドキしながら「ご飯できてるよ。」とリビングに向かった。 「夕飯は何?」 「生姜焼きだよ」
あらすじ小説情報本文 夫は自由だと思う。髪が伸びれば切る、それ自体は当たり前の事かもしれない。大多数は床屋に行くのだと思う。夫はその時の気分によって変わる。気になって仕方ないのか、突然自分で切ったりもするし、普通に床屋に行く日もある。 そして時には、妻である私に切らせたりもする。何ら技量がある訳ではないので、バリカンで坊主にするしかできない。 坊主になっても夫は文句一つ言わないし、いつもと変わらない態度だ。彼にとってはたかが髪なのだろう。その感覚が私とはまるで違うも
あらすじ小説情報本文 ジャーと蛇口から水を出しシンクで洗い物をする。今日は休日で夫の真也と二人でお昼を食べた後だった。妻の三佳と真也は結婚して三ヶ月が経つ。だいぶ二人での生活に慣れて来た頃だった。 「なぁ、髪はいつ短くするんだ?」 藪から棒に夫から聞かれた。 「え?あぁそうね。今度、美容院に予約するわね。」 そう言ってはぐらかす。三佳の髪は背中を覆うくらいの長い髪である。結婚式の為とはいえ、せっかく伸ばした髪を短くするのは、なかなか抵抗があった。三ヶ月間、何かと
あらすじ小説情報本文 明彦と遠距離恋愛となって三ヶ月が経った。人員補充の為と突然の地方転勤だった。期間は決められていない。 彼と私は学生時代から東京でずっと一緒だった。これからも変わらないと思っていた。急な話で仕事を辞める訳にもいかず、付いて行かなかった。 電話やメールで連絡は取っていた。最初こそ寂しかったが、時が経てば一人の生活にも慣れ、寂しいという気持ちはだんだんと薄れていった。 一方で明彦は会えなくて寂しそうに見えた。ただ休日が合わず、東京に来てもらうのも
あらすじ小説情報本文「髪切らないのか?」 ソファーで隣に座る夫が聞いてくる。夫と結婚して一年、私は髪を切っていない。一つに結んではいるが、伸び放題で痛んでいる。それが気になるのだろうか。 「あー、うん。その内ね」 適当にその場を誤魔化しておく。 「その内って、大分痛んでいるだろう」 「そうかもね」 「何か切らない理由でもあるのか?」 「これと言って特には……」 言っても理解されそうにないので言葉を濁す。早くこの話題が終わって欲しい。 「せめて揃えた方が良くな
あらすじ小説情報本文「ねぇ勝、バリカンして?」 彼女の千香からおねだりをされる。 「また? この前から一ヶ月も経ってないぞ」 「暑くてスッキリしたいの。お願い? ね?」 上目遣いでねだってくる。いつもの事だった。 「仕方ないな。分かったよ」 準備しようと立ち上がった。 「やったー!」 ◇ 発端は半年ほど前だった。髪の量が多い千香は、いくら梳いても髪が首に張り付いて鬱陶しいと愚痴をこぼしていた。当時、千香の髪は肩下十センチくらいの長さだった。 「内側を
あらすじ小説情報本文 「私、髪フェチなの」 意を決して彼に告白する。冷静に言ったつもりだが心臓はバクバクとうるさかった。 「髪フェチって?」 その言葉を本当に知らないかのように、首を傾げて聞いてくる。 「長い髪そのものに執着する人もいるみたいだけど、私は長い髪をバッサリ短く切られることに興奮する断髪フェチなの」 性的な嗜好を自ら告白するのは恥ずかしかった。羞恥で体のあちこちに汗が滲む。 「へぇそうなんだ。どうしたんだ?突然そんな事を言い出すなんて」 ふぅ
あらすじ小説情報本文 それは突然の事だった。 「ヘアドネーションしようと思うの。」 ――何・・・だと・・・? 驚きのあまり、ギギギと首を動かして妻に向いた。すごい形相だったのだろう。 「そ、そんな驚かなくても。ここまで伸びた髪なら役に立つかなって」 「ちょっ、ちょっと待て。分かっているのか?髪が短くなるんだぞ。すぐには戻らないんだぞ」 「そんな事くらい分かってるわよ」 「まずはもちつけ。せっかくここまでキレイに伸ばしたんじゃないか。子供のように慈しんで、一緒に二