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無料で読める断髪小説

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noteに掲載した無料の断髪小説をまとめたものです。全て5000文字未満の短編小説です。 初めてご覧になる方は、まずこちらから読むのをオススメします。 お気に召しましたら、有…
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2021年8月の記事一覧

断髪小説『転勤と遠距離恋愛と10分カット』

あらすじ小説情報本文 明彦と遠距離恋愛となって三ヶ月が経った。人員補充の為と突然の地方転勤だった。期間は決められていない。    彼と私は学生時代から東京でずっと一緒だった。これからも変わらないと思っていた。急な話で仕事を辞める訳にもいかず、付いて行かなかった。  電話やメールで連絡は取っていた。最初こそ寂しかったが、時が経てば一人の生活にも慣れ、寂しいという気持ちはだんだんと薄れていった。  一方で明彦は会えなくて寂しそうに見えた。ただ休日が合わず、東京に来てもらうのも

断髪小説『名もなき夫婦の話』

あらすじ小説情報本文「髪切らないのか?」  ソファーで隣に座る夫が聞いてくる。夫と結婚して一年、私は髪を切っていない。一つに結んではいるが、伸び放題で痛んでいる。それが気になるのだろうか。 「あー、うん。その内ね」  適当にその場を誤魔化しておく。 「その内って、大分痛んでいるだろう」 「そうかもね」 「何か切らない理由でもあるのか?」 「これと言って特には……」  言っても理解されそうにないので言葉を濁す。早くこの話題が終わって欲しい。 「せめて揃えた方が良くな

断髪小説『バリカンと彼女』

あらすじ小説情報本文「ねぇ勝、バリカンして?」  彼女の千香からおねだりをされる。 「また? この前から一ヶ月も経ってないぞ」 「暑くてスッキリしたいの。お願い? ね?」  上目遣いでねだってくる。いつもの事だった。 「仕方ないな。分かったよ」  準備しようと立ち上がった。 「やったー!」 ◇  発端は半年ほど前だった。髪の量が多い千香は、いくら梳いても髪が首に張り付いて鬱陶しいと愚痴をこぼしていた。当時、千香の髪は肩下十センチくらいの長さだった。 「内側を