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1984の世界は中国や米国というよりもあれだった

大丈夫です。「あれ」は日本ではありません!

先日、監視資本主義の本の紹介いたしました。
中国の場合は政府、米国の場合は私企業が個人情報というか行動を監視し、操り、資源のように扱う世の中になっているという話です。もちろん他の国もそうなってきていますが、中国と米国の支配規模が大きくて巻き込まれている状態でしょうか。

で、この状況が話題になる度に、英国人作家、ジョージ・オーウェルが1949年に出版したディストピア小説「1984」を思い起こさせるというのを良く聞くんですよ。「アニマルファーム(動物牧場)」の方は読んでいましたが、こっちは読んだことがなかったんです。

さてネタバレにならないように感想を書きます。

最初はね。ソ連やひと昔前の中国っぽい設定かなって思うんですよ。でも段々と、いやそれより酷い。人間の信頼関係が成り立っていない。北朝鮮のイメージに近い。ってなってくるんです。

しかし設定は全体主義も共産主義も資本主義も失敗した後の世界。南北アメリカと英語圏がまとまった未来の連合国オセアニアが舞台。テクノロジーは双方テレビ通話のようなものを使っている。それで米国の「監視資本主義」に近いのかというと全然違うんです。レイ・ブラッドベリ、カート・ヴォネガット、フィリップ・K・ディックあたりのディストピアよりも、1984は絶望的なんです。

あ。アメリカの絶望ディストピアはビフ大統領だったわ。

1984のやり切れない雰囲気…あれだ。フランツ・カフカの「城」を思い出しました。どこに何を文句言ったらいいのかもわからない系ディストピア。そうなってくるとやっぱり今の中国に似ていると言えるか…でももっと絶望的。

ここで私は気が付いてしまいました。完全に1984設定の物語を…つい最近、14歳の息子と観たところだったんですよ。
なんと日本の作品です。それは…

はたらく細胞!

はーたらっくサイボー!

共産主義も組織を「細胞」扱いしますけれど、1984は、本当に人体の中の細胞さんレベルでその世界にいるんです。
よし。はたらく細胞で1984を説明してみます。

主人公は赤血球の男性。公団に住み、政府の支給品で暮らし、働き詰め。行動を何から何まで監視され、全てを報告しなければいけない。しかしその生活に疑問を持ってしまう。

近所には異変が起こると逮捕しにくる白血球やキラー細胞、マクロファージのようにすぐに情報を伝達する奴らが歩き回っている。街中に樹状細胞の罠が仕掛けられており、隠れられる場所は無い。小さい頃から職務を全うするためだけに育てられ、命を懸けて命令どおりに休みなく働く。

そんな彼らも実はエリート。ほとんどの人口は「普通の細胞」、最低限でただ生きて消費し、再生産を繰り返す。
何かあればすぐに殺される。

でもそんな普通の細胞の方が、自分より自由じゃないか。

疑問を持った赤血球男性はある日、一人の赤血球女性と恋に落ちてしまう。そして疑問は膨らんでいく。

この世界じゃない世界があるんじゃないかと。

しかし彼らに命令を下している脳や神経がどういう仕組みかは全く知らない。人体という宇宙が何だかはもっと知らない。

ね。絶望的でしょう。

赤血球が自由な世界を求めたところで、どうするよ。
知ったところでどうするよ。
体外に出たら終了だし。

なので他の免疫細胞の登場人物たちの冷酷さが、段々と優しさにも見えてくる。

そうさ。ビッグ・ブラザーの愛なのさ。

恐ろしい話だぜ。
はたらく細胞。

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