「宿敵」八木義徳
宮津信夫と平田啓介は無二の親友であり、二人は小説家としてライバルである。
平田の成功に嫉妬をあからさまにする宮津。恋愛観の違いや恋路を邪魔する言動に耐えきれず、平田は宮津に絶交を言い渡す。
友人Kは二人を仲直りさせようと必死だが、私の目には揉める種を蒔いているのはKのように思われる。
宮津は手術の失敗で、36歳で病死。仲直りの機会を失う。
平田は『宮津は自分以外の人間を生涯、一人も愛することが出来なかった人間』と評している。
そんな宮津に妻がいる。宮津が結婚するに至る経緯が書かれていない。
また、平田には死別した妻と子がいたがいつの間にか再婚している。
再婚に至る経緯が書かれていない。大事な部分が書かれていないようで物足りなさが残った。
復讐とは――君の二倍も三倍も生き続けることだ。「無二の親友」にして、「永遠の敵」なる友よ。《平田の手記》
八木義徳氏は「私小説」を書いている。もしかしたら、小説の中で、「悪・陰」は宮津、「善・陽」は平田として、自分の中に棲んでいる人間の表裏を描いたと思う。
没後二十年、町田市民文学館で、「世界の果てで生き延びろ―芥川賞作家・八木義徳展」が開催されました。単行本に収録されていない「宿敵」が冊子として発行になり、『室蘭市港の文学館』に置いてありましたので、頂いてきました。