#7【営業ノウハウ】価値を訴求する、とは
「価値」という言葉は、皆さん日常的に耳にされていると思います。
特に営業においては、この「価値」をお客様に訴求することで、プロダクトやサービスをご契約いただき、対価を頂戴するのが主な仕事です。
では、「価値」とはつまりなんでしょう?
これを正しく捉えて伝えられている人はどれだけいるのでしょうか?
今回は「価値」を正しく訴求して成果につなげるためのノウハウをご紹介していきます。
価値とは
そもそも「価値」ってなんぞや? から話していきます。
いや、そのくらい知ってるわ! という方も、前提となる定義の認識一致が重要なので我慢してご覧いただけると幸いです。
「価値」というのは、その人や会社のニーズに対して、どのくらい満たせるかという定量化可能な(場合の多い)効果のことを指します。
(※もちろん定性的な効果でも十分価値となり得る場合も多くあります)
時々プロダクトの機能やサービスの長所を一方的に説明して「価値」と言っている方もいらっしゃいますが、それはあくまでも強み、特徴です。
「価値」とは、あくまでも受け手(買い手)側が主観的に判断するものであるということは大前提として頭に置いておきましょう。
そして受け手(買い手)がその「価値」への対価をどのくらいまで許容できるかが売値のポイントとなるのです。
よくあるたとえ話で、日本百名水に数えられる湧き水の近くでタンクいっぱいに湧き水を詰めて帰る人にミネラルウォーターを売っても売れないけれど、砂漠で遭難してのどが渇いた人に売れば仕入れ値の何倍出しても買う、というやつですね。
独り善がりの「価値」は決して響きません。
ミッションを確認しよう
それではその「ニーズ」はどのようにして計るか、という話です。
もう一点、前提となる言葉の定義を合わせたいのですが、世の中には「課題」と「問題」を混同してしまっている方が非常に多いと思います。
「問題」とはProbrem、つまりある場所で発生している一般的にネガティブな事象のことを指します。
対して「課題」はChallengeで、つまり何らかの目的を達成するにあたり阻害要因となっている「問題」のことを指します。
「課題」を追求するにあたっては、なんらかの目的があることが前提となるのです。
この目的を明らかにするのに、買い手のミッションを確認するのです。
ミッションは会社単位、部署単位、個人単位など粒度は様々です。
会社であれば中期経営計画や当年度の経営目標、経営戦略など。
部署単位であればその部署の目標。
個人単位であれば、その人が会社から課された目標。
営業ならば個人売上目標だったり、物流部門であれば全物流拠点の業務運用平準化だったり、輸配送コストの削減だったり。
この目標を達成するためのいくつかの施策があって、その施策の進捗指標としてのKPIがあって、着実に進捗させるためのKAIがあるはずで、その施策を実現するにあたって乗り越えなければならない阻害要因(問題)が「課題」なのです。
この課題が解決できること、ミッションが達成できること、あるべき姿を実現できることがニーズであり、そのニーズが満たされること=ミッションの達成が期待効果となるわけです。
潜在課題の示唆
得てして人の視野というものは限られてしまうことが多いです。
ミッションの阻害要因は限定的な部分や一部の側面しか顕在化していないというケースは多くあります。
そういった場合に、他社事例やあるべき姿の解像度の高いイメージ、ミッション実現の更にその先を見せてあげることで、潜在的な課題に気付かせることができます。
潜在課題とは単に現在見えていない、隠れた課題だけではなく、上記の通り、短期的には発生しないが、中長期的には発生し得る課題も含みます。
これら潜在課題に気付かせ、顕在課題と並べてミッションの実現のために優先して解決すべき課題をピックアップすることで、それが解決されることの「価値」を最大化することができます。
根本原因を探ろう
顕在課題に関しても、明らかになっている事象をそのまま捉えることは危険です。
問題には必ずそれが発生している根本原因があり、その根本原因を探し出して根治させないと、表面的な問題に対する対症療法にとどまり、ミッション実現を阻害する課題が完全には解決できない可能性があります。
それでは期待効果も薄れてしまい、価値が正しく伝わらない恐れがあります。
「Why?を5回繰り返す」と先人たちが言うように、お客様が伝えてくる顕在課題を額面通り捉えず、それは何故発生しているか、その課題はどうすれば根本的に解決できるか深堀りして根本原因の究明と解決を意識しましょう。
正しい価値訴求をしよう
ここまで詳らかにすることができれば、正しい価値訴求のための材料は揃っています。
ミッション=目指すべき姿
現在の状況と阻害要因(課題)
課題が解決されたときの期待効果
課題の解決策(提案するソリューション)
これらの要素で構成されるのが「価値」です。
ここに見積が入ると、「価値」を享受するための投資額、つまりROI(投資対効果)を示すことができます。
これで提案骨子はできあがりです。
更に、「ミッションはいつまでに達成しなければいけないか」というコンペリング・イベント(差し迫った状況≒期限)を示すことで、スケジュール案も作ることができます。
ここに体制案などを加えれば、提案書の核の部分は完成します。
※コンペリング・イベントについてや私の提案書の作り方などはまた別の機会にお話できればと思います。
今回の話で、独り善がりに製品やサービスの機能紹介をすることが価値訴求なのではない、ということはおわかりになったと思います。
正しく価値を訴求することで、無用な値引きや競合との細かい機能比較を防ぐことができ、受注確度を向上することができます。
ご提案の際にはこの話を思い出してみてください。