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Massive Attack『100th Window』リリース20周年に寄せて。

「私を構成する9枚」

ひと昔前一世を風靡したハッシュタグの一つ、当時主宰はまだジャズ研在籍中だった頃でしょうか。正直あんまり講釈垂れるのが上手じゃなかったもので、せめて音だけでも後輩世代にあれこれ遺せたらと頭を悩ませ選び抜いた9枚の中に、残念ながら潜り込んでしまったジャズ以外の作品群がありました。ここら辺、趣味が出ますね。Underworldとか挙げたような気もする。

そりゃあ、世間的には『Mezzanine』が圧倒的プレゼンスを誇っているのは間違いない事実です。マッシヴといえば「Teardrop」でしょう。しかしそれでいて多感な中学時代にリアルタイムで耳にしてしまったものだから20周年という節目、無論記事にしない訳にはいかない。主宰が衝撃を受け今もなおベストに挙げ続ける1枚『100th Window』。

ダンスミュージック変革期のリリース

砂原良徳『LOVEBEAT』20周年の折にも触れましたが、世間がノストラダムスだなんだと騒ぎ立てていた00年前後において、ダンスミュージック界隈は大きな転換期を迎えておりました。まだそれほどレコードショップの棚配置が細分化されていなかった当時、俗に言う「音楽性の違い」とは裏腹に長年寄り添ったチームの分裂あるいは不和が囁かれる異常事態が相次いで。

その一つがグラント・マーシャルの脱退でした。いわば片腕を失いながらほぼソロワークスとして本作のレコーディングに臨んでいた3Dの苦悩は、当時発売されたサンレコの特集記事にも色濃く滲んでいた。ミニマリズムあるいは引き算の美学が随所に感じられる無機質で透明感のある音像、他方表向きは「子育てゆえの離脱」と語られがちですが真相は果たして。

「コピーコントロールCD」時代の産物

特徴的な音像から医療ドキュメンタリーの場面に使用される機会が多かったアルバムでもある。当時3Dが「退屈な使われ方」だと嘆いていたのも非常に印象に残ってますね、型にハマった音楽を嫌う姿勢が現れていたのかも。20周年リマスターの声は掛かっているのか否か、つまり『Mezzanine』を全く新しい音像で届けてくれた2018年の感動を今一度体全体で味わいたい所存。

ですが、いまだ音沙汰ない状況。諸般の事情が重なり来日公演も無期限延期の状態が続いてますから、ただ信じて待つことしかできません。エレクトロに傾倒し黒人音楽性を排除した理由、ラップというより詩の朗読に近い質感へ辿り着いた経緯。次作『Heligoland』まで続くいわば3Dの'独断状態'から繰り出される内省的サウンドが、当時中学生の主宰を大きく胸打った。

2003.2.10→2023.2.10

2022はHorace Andyの精力的な活動が印象に残った1年でもありましたし、今年2月に発売されたYoung Fathersの新譜も素晴らしかった。マッシヴ周辺が今めちゃくちゃ「温まっている」状態なだけに、次なるアクションが気になるところです。日本のファンはまだ『Mezzanine』完全再現ツアーの恩恵にすら預かれていない、時計の針がずっと止まったまんま。


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