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「想像する力を武器に」 ~押谷仁教授の2月時点での提言をいま読むこと~
厚生労働省新型コロナウイルスクラスター対策班メンバーの押谷仁教授の記事を読んだ。2月4日から22日まで、4回にわたって書かれている。
これを知ったのは本当に偶然だ。私は医学には素人で、正直に告白するとニュースも四六時中見てチェックしているわけではない。
ただ、すぐれた専門家が、すでに2月の段階で、3ヶ月後のいまを見通した文章を書いておられたことを見つけて、驚いた。
その驚きを共有してくれる人がいることを信じて、書くことにする。
記事のタイトルは「新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか」No.1~4。
とくにこれだけはぜひと思うNo.4のURLを貼っておきます。
サブタイトルは「想像する力を武器に」。
https://www.med.tohoku.ac.jp/feature/pages/topics_217.html
押谷教授のメッセージの基調となっているのは、
「今回のウイルスの封じ込めはいままでの対策では通用しない」
という警告。
それに続いて、冷静に具体的な対策が述べられていくのだが、
いま読みたいのは、そこをつらぬいている精神性、倫理性だ。
「想像する力を武器に」。
その必要性は、5月半ばを過ぎたいまも、少しも減ってはいない。
「東京オリンピック・パラリンピックへの影響を心配する前に、このグローバルな危機に際し、日本がどんな役割を果たせるのかを考えるべきである。それができないような国にオリンピックやパラリンピックを開催する資格はないと私は考えている。」(No.1)
「このような21世紀の問題に対峙するために最も大切なことは、他者を想う想像力だと私は考えている。武漢で自らの結婚式を延期して患者の診療にあたっていた青年医師が死亡したことが報道されている。どれだけの日本人が彼の無念さを想像できているのだろうか。」(No.4)
「これまでほとんどの一般の人たちは自分がこのウイルスに感染しないためにはどうしたらいいかということのみを考えてきたはずである。政府やメディアの情報も、そういったものが多かった。手洗いやマスクがこのウイルスの個人の予防にどの程度効果があるかどうかは実はよくわかっていない。しかし、個人がこのウイルスとの闘いに確実に貢献できることがある。それは、ウイルスに感染した、もしくは感染したかもしれない人が最大限の努力をして他の人に感染させないようにすることである。」(No.4)
「このウイルスに感染しても多くの人にはちょっと長めのインフルエンザのようなものか、それよりも軽い人もいるはずである。しかし、その人が誰かに感染させそこから感染連鎖が始まってしまうとその先には確実に重症化する人がいる。さらに亡くなる人が出てくる可能性もある。そこで亡くなる人は「60代の女性」ではなく、もしかすると来月生まれてくる初孫の顔を見られていた女性だったかもしれないという想像力を持つことが必要だと私は考えている。」(No.4)
みずからの結婚式を延期して患者の治療にあたり、落命した青年医師(実在)。その家族、婚約者。
ただの患者数「1」、「60代の女性」ではなく、私たちの誰かの大切な人であるその人(仮定)。そのご主人、娘さん、息子さん、お兄さん、妹さん、お孫さん。
押谷教授のことばには、具体的な「人間」の顔がある。
教授ご自身と、彼の想像の中にいる、生きている人々の顔が。
想像力って、ようするに他人を思い、考えることだ。
先日私が引用したのと同じジャック・アタリ氏の発言を、さっき、ある有名な小説家が(名前はふせます)なんかすごくいいかげんにまとめているのを見つけてしまって、おいおいおいそこじゃないでしょと思ったので、自分の過去記事で申し訳ないけれど、もう一度ここに紐づけさせてください。
「ポジティヴィズムと楽観主義はちがう」ってそれだけじゃ言葉遊びでしょ。他人のことを考えよう、それが皆が生きのびる道だって話でしょう。
(自分をふくめて、ブンガクやゲージュツやる人間の「想像力の欠如」をひじょうにもどかしく思う毎日です。だからこんな記事書いてしまうんだ。私たちから想像力とったら何が残るの? 目をつぶって癒しに逃げこんでるだけじゃダメなんだよ。)
この3か月、とくにこのひと月半、不安にさらされつづけて、いいかげん想像力が麻痺している自分を感じる。
正直、麻痺させないとやってこれなかった。
だけどちがう。こういう時だからこそ、心を鈍らせちゃいけない。
視野を、自分の周囲半径1メートルにしちゃいけない。
あらためて、そう思った。
想像する。想像する。……と、つぶやいてみる。
「イマジン」だ。
かりに、じきに緊急事態宣言が(ここ東京でも)解除されても、はじけちゃだめだ。第二、第三の波が夏や秋に来るのは何としても防がないと。
これ以上、苦しむ人、悲しむ人を増やしちゃだめだ。
私にもできることがある。
手を洗う。
そして想像する。
いま、誰ともふれられない自分の手を、心の中で、たくさんの人とつなぐ。
Imagine all the people living for today!
(わかるだろう、誰もが今日を生きているんだよ!……ジョン・レノン)
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![実村 文 (theatre unit sala)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158188785/profile_da7a1aec040a5f91354bfe11b6091b34.jpg?width=600&crop=1:1,smart)