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詩『スポットライト』

今夜お届けするのはダークな詩です。
たまにこういうのを書きますが、最初におことわりしますので、
苦手な方もご安心下さい。
それでは、裏荒神をお楽しみ下さい~

オディロン・ルドン『ペイルルバード』

暗い夜道を歩いている
バス停から家まで約十分
人に会わないことも多い
午後10時半を回ったところ

ぼくには夢がある
その夢に手が届くところまで来た
必ず日の当たる場所へ出る!

スポットライトを浴び
止むことのない拍手に包まれる
妄想だったが現実になりそうだ

後ろから足音
降りたのはぼくだけだったのに
一定の距離を保ってついてくる
なんだか気味が悪い

ヒタヒタ、コツコツ
足音が夜気やきに響く
バスみちから外れて路地に入ると
足音が速く、大きくなってきた

自然にぼくの足も早まる
背後の足音はさらに速く、走り出した
追われている? なぜだ?
「おい!」という男の声

背後から襟を引っ張られ
よろめき、向き合った瞬間
鋭い痛みとともに命が
赤い、ぼくの命が噴き出した

遠ざかる後ろ姿
見知らぬ男
足が体を支えきれない
電柱にすがろうとして倒れた

放置された生ゴミのそばで
出血の多さに絶望しながら
煤けた蛍光灯にぶつかる蛾の音を聞き
まだ生きていると知る

街灯が落とす丸い光の中で
悪臭に包まれる

思い描いたのとかけ離れた

スポットライト

熱い涙がこぼれ落ちる
ぬるい血も流れ落ちる

止まらない

止められない……

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