二の足を踏む

二の足を踏む とは
一歩目は踏み出したものの、二歩目はためらってその場で足踏みする。思い切って物事を進めることができないさま。どうしたものかとためらう。

コトバンクより

これまで割と重苦しい事案ばかり語ってきた。
そうしないと中々自分の中での心の整理が付かずやりたいことに気付けない危険と、確実に私は口よりも文の方が素直に語れる気がしたからだ。

しかし、今回もまた重苦しい内だと思う。
乱文、誤字脱字があったり、感情的になっているかもしれない。独白のようなものだと思ってくれたらいいなと思う。

まず、そもそも私は夢を諦めることに慣れてしまった。
小学生の頃から高校に入るまで、声優がやりたいと強く感じていた。憧れもあったし、自分のような生い立ちでも演じている間は幸せになれる。苦しくても辛くても、いじめられていても、私には誰よりも強い熱意があると。そう思ってた。
何度かオーディションを受けたり声優の養成所や高卒の取れる専門学校を見学していたし、母はそれに対しては尊重してくれていたように思う。

だけど小骨が喉に引っかかった時のような詰まった感覚がある。何故だろうか。
掘り起こして考えたら、私同様相談室登校だった同学年の子(クラスは違う)に言われた、


「最近の声優は顔も良くなくちゃいけないけどね」

という、批難めいた声が脳裏にこびり付いて離れなかった。
もしかしたら、彼女にとってはただの世間話だったのかもしれない。同じオタクとして、最近の傾向を単に述べただけかもしれない。
けど容姿を馬鹿にされ続け自信を失っていた私にとって、それはまるで

「お前みたいな奴が出来るわけない」


と言われたようにも感じたのだと思う。
初めて誰かに夢を話して、否定された。
小学校の卒業式で急遽台本を変えて完全なアドリブで述べた
「声優になって、苦しんでる誰かに救いや希望を与えられるような大人になりたい」
そう目を輝かせていた私は、どうやらその時点で死んでしまっていたようだった。

最早執着になりつつあった。
亡霊が頬を撫でる。
「私を殺したのはお前わたしだ」と。

高校では厳しくも優しく、そして視野の広い社会科の先生が大好きだった。その先生の言葉に何度も救われた。
わかりやすい上に、聞いていて楽しい。もっと先生の話を聞きたい。一緒に哲学について語りたい。そう思わせる先生だった。

「今の心理学は過去の思考をなぞる心理学学になっている」

こんな分析をする教師は初めてだった。
感動したし、それまで独学で学んだ心理学への違和感を的確に表してくれた先生を尊敬した。
倫理の時間。性善説と性悪説の話をしていた時だったか、その際にすぐに白黒付けたがる私の人生の指標になった先生の言葉がある。

「人は誰もが"己にとっての善"を成す」
「そういう点では、ある意味性善説は正しいのだと思う」
「法的に罪であっても、その人にとってその瞬間、その時点で"善"と判断したから行動したのだ」

と口を開いた先生は語った。

それを聞いて、私はふと「戦争は正義と悪じゃなく、"どちらも正義"」という言葉を思い出した。

己にとって譲れない何かを守ろうとする行為を正義・善とするならば、罪が容認されるわけではないけれど、それとこれとは切り離して考える。

"罪を憎んで人を憎まず"が信条ではあるが、実際問題そこまでの聖人君子になれない自分を責めていた私が


「あぁそうか、私はこんな風に人を呪わなければ心が守れないんだ」
「だからこそ他の誰にもこんな風に苦しんでほしくなかったんだ」
「誰かを怨み、呪い続ける苦しみは自分がよくわかるから」


と自分の中の呪詛と夢を飲み込めた瞬間だったのだろうと思う。

そして声優の夢を諦め、取り敢えず勉強をしていただけの私の次の夢は教師になることに固まった。
小学校〜高校までずっといしじられていて、それに苦しんでた私をよく知っている先生は、誰も否定しなかった。どころか応援を沢山くれた。
担任も、社会科の先生も、数学、英語、国語、全ての教科、担当してくれていた全員が「お前ならやれる」「いい先生になるはずだ」って笑ってくれた。

それが途絶えたのは、単に私が人の怨みを勝ったせい。
当時の私は今考えるとかなり性的に奔放だった。
言い訳がましくなるが、理由は簡潔に言えばそれまで受けてきた性的被害のせい。

「私の経験はおかしくない」と思い込みたくて必死だった。

Twitterだったか書籍だったかは忘れたが、性的暴行の被害者は何となく二極化するらしい。
片方は、回避行動(性的なことを嫌悪する、避ける、恐れる)が出る人
もう片方は逃避からの性依存(自分に起こった出来事を特別なことだと思いたくない、等の心理)
私は後者だった。


付き合っていたらお互い嫉妬深くなり束縛しようとするからセフレくらいの方がいいっていう距離感の人がいた。
その人に恋人ができても私は縋ってしまった。
彼が断らないことをわかっていて利用したのだとも思うし、逆に言えば私には彼しか縋る先がなかったとも言える。
彼は多分彼女の愚痴を言える程度に仲の良い人は他にもいただろうけど、彼女の性質を理解していて無駄な前提を話す必要がないという点では都合が良かったのかもしれないと思う。

身バレ覚悟で書くと、私はその人の子供を身篭って次の日に流産が発覚して次の日には手術……というとんでもない展開をやらかした。
いや、アホだなとマジで思う。マジで。
流産であっても心がやられた。
それと同時に、彼も彼女も全く別の方向で心を壊した。私のせいで。

私は「子供を殺した」「彼にも彼女にも、親にも嫌な思いをさせた」と心苦しくなり
彼は「私が死ぬかもしれない」と不安になり
彼女は「彼女の私が体調悪いのに心配もせずずっとアイツのことばっかり」と、きっと苦しめてしまったと思う。

結果として、彼女を壊したのは自分だ思っているが、当時はそれなりにぶっ壊れていたので内心ではどこかバカにしていたところもあったかもしれない。そしてそれを態度に出していたような気もする。
被害者意識が確かにあった。何せ我々はそういうセフレ(或いは共依存のような)関係であることを隠していなかったし、グループ的な感じで仲良くしていたメンバーは知ってる人も多かったから、理解した上で付き合っているのだと思い込んで、自ら離れようとしなかった。
まぁ彼の精神じゃいずれは破綻は免れなかったと思わなくもないが、それでも彼女は私をグループから排除する方が良いと判断したのだろう。
変えたアカウントを特定した上で、「私の大事な人達のそばから消えろ」「メンヘラが教師になりたいとか夢見てるんじゃねぇよ」といった攻撃的で強い言葉を投げかけてきたのは覚えている。
そうさせたのは私だと理解はしていた。だからたった1人以外、そのグループで仲良くしていたメンバーから私は離れた。私にすぐ出来る精一杯の謝意がその言葉に従うことだった。

推しが被ったらきっと嫌な気持ちにさせると思って、定期的に彼女のツイートを確認して彼女が好きな物には絶対触らないようにしようと決めた。
好きな物と私が結び付いてしまったら、きっと彼女の生きがいや楽しみを奪ってしまうから。


夢を見ることをやめた。私みたいにゴミみたいな人の害にしかならないような人間が夢を語るの烏滸がましいのだと。


そうしたら私には何も残らなかった。
それまで苦しくても耐えられていた大学への通学も
楽しそう、役に立ちそうだと勉強しようと思っていた数々も
全てが私を壊す物になった。壊したのは私自身なのに。

耐えられなくなった私は自殺未遂のようなことをした。
飛び降りようとしたり、風呂で手首〜肘までを上腕を縦にカッターで何度も切ってみたり。
自傷痕が増えて行った。不眠症が悪化した。強迫観念に押し潰されそうだった。
精神科も行くのをやめていた頃だったから寝れなくてまた死のうとするんじゃないかと怖かった。
やりたかったことを捨てたらこんなに何も残らない。
夏には大学を退学して名実共に自分は何もない人間になったのだと、暑いくらいカンカン照りなのに真っ黒な空を見た記憶がある。
諦めた途端これまで頑張ってきた自分を否定したようで、何もかもが鬱陶しくなり友達に感情のまま吐き散らして、迷惑も心配もかけた。
親に弟や妹にも、多分、迷惑も心配もかけた。多分。母さんには呆れたような態度取られたけど。
死んだら、私を覚えててくれる人なんか誰もいないと思った。
結局死ねなかったから、今があるのだけど。

よく考えたら、私は小学校卒業時点で成し遂げたいことは固まっていた。

私は誰かの助けになりたい。そう思っていた。
それと同時に、私が私に課した



・彼女と彼女の大事な人のそばに二度と近寄らない
・夢を見てはいけない
・調子に乗ってはいけない
・私は生きている価値がない


という呪いは多分まだ解くのに時間がかかる。
少しだけ、やりたいことが見つかったけど、二の足を踏んで立ち止まってしまうのは、きっとこの強迫観念のせいだろう。
私なんかが、夢を見ていい理由はないのだと今日も言い聞かせてる。

ごめんなさい。あなたを傷付けるのをわかっていたのにマウントを取るような発言をして。
ごめんなさい。あなたを苦しめてしまって。
めごめんなさい。あなたを傷付け苦しめたことかけて目を逸らして自分だけが被害者だと思い込んで。
ごめんなさい。こんな形でしかあなたのことを吐けなくて。
ごめんなさい。思い出させることが一番苦痛だと決め付けて謝るタイミングを失ってしまって。
ごめんなさい。私なんかが夢を語って。
ごめんなさい。何の役にも立たないくせに生きていて。

情緒不安定でごめんなさい。メンヘラでごめんなさい。壊れていてごめんなさい。自己正当化ばかりしてごめんなさい。キチガイでごめんなさい。忘れられないダメ人間でごめんなさい。襲われるような人間でごめんなさい。産めなくてごめんなさい。頭が悪くてごめんなさい。

そうやって誰かに、何かに謝りながら生きていれば許されると思っている愚かさが、何よりも、気持ち悪い。

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