
若者を孤立させない社会を目指して、DxP今井さんと語る|DEIラーニングレポート
サクラグの社内研修プログラム「DEIラーニング」に、若者支援に取り組むNPO法人DxPの今井紀明さんをお招きし、「若者支援と法人寄付の意義」というテーマで代表遠藤と対談を行いました。
・プロフィール
今井紀明(Noriaki Imai)
NPO法人DxP理事長
1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。神戸在住、ステップファザー。高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立。その活動のために、当時、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと日本社会から大きなバッシングを受ける。結果、対人恐怖症になるも、大学進学後友人らに支えられ復帰。偶然、中退・不登校を経験した10代と出会う。親や先生から否定された経験を持つ彼らと自身のバッシングされた経験が重なり、2012年にNPO法人D×Pを設立。
遠藤洋之(Hiroyuki Endo)
株式会社SAKURUG 代表取締役
千葉県出身。株式会社GOOYAを経て2012年に株式会社SAKURUGを設立。DEIを推進する採用マッチングプラットフォーム「Sangoport」の運営、WEB制作・システム開発支援、人材事業のほか、ブロックチェーン領域での研究開発もおこなっている。世界的起業家ネットワークであるEO Tokyo理事、千葉イノベーションベース初代理事。ジャパンハートエバンジェリスト。PEAD/Famieeなどの団体にも参画。高校生インターンの受け入れや海外支援、スポーツ支援など、事業の枠を超えた若者支援にも取り組んでいる。
サクラグとのこれまでの交流
遠藤:今井さんとは、2021年に「ソーシャルアクションの新しいかたち」というテーマでご一緒させていただいたのが、一番最初ですね。この時は、DxPではなく今井さんが別でやられている寄付サービス「solio」の代表としてお招きしました。サクラグが、法人で初めてsolioを福利厚生として導入して。メンバーがsolioを通じて寄付をした場合に会社が補助を出す、という仕組みにしたんです。寄付金控除も合わせると個人の負担がすごく軽くなるので、まさに「サクッと寄付」という感じで、皆が寄付を始めたり関心を持ったりするきっかけをつくれれば、という想いでトライした企画でした。

今井:2022年は、不登校と貧困について考えるというテーマで、対談しました。これがもう2年前ですね。
遠藤:コロナ禍を経て不登校の子どもが増えた、という問題が顕在化したタイミングでしたね。当事者である子ども達が大変なのはもちろんですが、それを支える家族にとっても様々な負担がある。今井さんにお話を聞きながら、サクラグができる支援として「仕事、働き方」という切り口で対話をさせていただきました。

今井:あとは、僕のX(旧Twitter)のスペース企画に遠藤さんをお呼びしたり、遠藤さんが神戸に来たタイミングでお食事させてもらったり。もう3年くらい、仲良くさせていただいてます。
NPOと企業の連携強化の必要性 社会課題の解決を促進

遠藤:D×Pさんの活動内容について教えてください。
今井:D×Pは、10代の孤立を解決するNPOです。相談内容は、家庭環境、虐待、貧困、いじめなど多岐にわたります。生きづらさを抱えた10代が、この社会で生きることができる新しいセーフティネットをつくっていきたいと思っています。「ユキサキチャット」というオンライン相談の事業と、大阪ミナミの繁華街「グリ下(道頓堀のグリコ看板下)」近くで、ナイトユースセンターという50坪ぐらいの支援拠点を運営しています。
遠藤:サクラグの今期のスローガンである「ZEBRUG(ゼブラグ)」と、前期のスローガンである「for children」は、今井さんの活動から刺激を受けた部分もあるんです。ZEBRUGとは、ゼブラスタートアップから取っていて、企業も自社の利益だけを優先するより、社会に対して何ができるかを考えたほうが、結果社会に対してインパクトが出せるんじゃないかと思っていて。今井さんはそのあたりどう思いますか?
今井:個人的には、法人も個人も、非営利な部分に関われるのかがテーマだなと思っています。国が解決できない社会課題が増えているなか、民間企業や個人が非営利的な活動を通して社会環境を変えていくことが重要です。これは長期的に見れば投資となり、利益にも繋がると思います。
遠藤:今井さんが特に社会に対して課題だと感じている部分はどこですか?
今井:子供と若者の課題は悪化しているなと感じていて、すごく危機感をもっています。NPOは、少しずつですが社会課題の解決に向けて国の政策に影響を与えることができています。D×Pとしても、いかに国に影響を与えられるようになるかってところを、いま勝負しています。悪化している現状を改善する取り組みとして、社会が動いていく必要があると思います。
遠藤:いまの社会は、不安が蔓延しているなと感じています。色んな要因があると思いますが、個人的には、SNS等を通じて不安を掻き立てられることも多い気がしていて。今井さんの考える、不安との向き合い方についてもお聞きしてみたいです。
今井:不安ってほとんどの方が感じることなんじゃないかなと。僕の経験としては、20年前にイラクで人質事件に巻き込まれ、PTSDやパニック障害に苦しみました。結果的には家族や友達のおかげで少しずつ、なんとか社会復帰を叶えたのですが、なので、もともと結構不安が多い人生ではあったんですよね。その上で、不安と向き合うために、自分の弱みを受け入れ、友人や周囲に本音を打ち明けること、健康に気を配り毎日走ること、色んな人に頼ることなどを日々心がけています。
フィールドワークを通してキャリア形成に役立てる

DEIラーニングでは、メンバーとの対話も重視しています。Q&Aの時間には、メンバーの質問ひとつひとつに今井さんが気さくに、そして真摯に回答してくださいました。
Q:DxPという支援団体を作ろうと思った背景とストーリーを教えてください。
今井:高校1年生の時に9.11のテロ事件があって、衝撃を受けたのがきっかけです。子どもの不条理な状況を変えたいとそこで思い始めて、高校生在学中に、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを作りました。その後、様々な経験を経て、もう一度子どもの支援に携わりたいと思い、2012年にDxPを設立しました。
Q:佐賀県と協定を結んでいるとのことですが、なぜ佐賀県なのでしょうか?
今井:佐賀県から誘致があったことと、もともと佐賀県からの相談数も多く、相談実績もあったので協定を結びました。県内の高等学校で月1回ほど居場所事業を実施したり、LINEを使った無料相談などを行っています。
Q:社会インフラを作るためにサクラグができることを、今井さんがいま見えてる世界のなかでなにかアドバイスをいただけたら嬉しいです。
今井:大前提サクラグさんは珍しい会社だと思います。なぜならボランティアの現場に参加したり、こういった社内講演をしたりする企業はそこまで多くないと思っていて、そういう機会提供をしている会社はかなりレアだと思います。
NPOと企業の連携が進んでいるので、NPOと連携できる事業で一緒にできることがあるのであれば、私も一緒に考えたいと思います。
遠藤:こういう学びの場を提供することで、メンバー自身が年を重ねたときに、人生にとって何かプラスになればいいなと思ってやってます。
今井:キャリア形成のためにも、色んな現場に行って実際に話を聞いたり、見たりするのはとても大事だと思います。フィールドワークすることで、自分が本当にやりたいことが見つかったり、視野も広がるので、仕事にも役立ちます。自分の人生で興味のある分野を見つけて、どんどん外に出て、色々なことを体験してほしいなと思います。
Q:ユースセンターを大阪ミナミに開所した理由を教えてください。
今井:居場所を求める若者が集まる、大阪ミナミの「グリ下(道頓堀のグリコ看板下)」から近い場所だからです。住所非公開で開所していて、週2回のオープンで年間4000人くらい来ます。
困ったときに助けてと言える社会に

遠藤:最後に、今後の展望をお聞きしたいです。
今井:僕が実現したいのは、若者が未来に希望を持てる社会です。そこに向けて、NPOと企業の関係性を強化していきたいと思っていますし、社会課題の解決に貢献していく仲間として、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。