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2023年3月の記事一覧

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む エピローグ (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む エピローグ (「澪標」シリーズより)

新潟の新居での結婚式当日。

「見たまえ、子どもたち!お母さん良い仕事をしたと思わない?」
紋付袴を着付けてくれた美生さんが、僕の晴れ姿を孫たちに披露した。

「おじいちゃん、格好いい!澪さんも早く見せて!!」
孫たちは、結婚式という非日常の空気感に興奮気味になっている。

「航さん……」
別の部屋で着付けされていた澪さんが、緊張ぎみに僕の目の前に現れた。孫たちは、急にお行儀が良くなった。

「あ

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 17 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 17 (「澪標」シリーズより)

実咲さんの一周忌法要から小山のアパートに帰宅すると、出迎えてくれた澪さんが玄関で僕を抱き締めた。

「法事、どうでしたか?」

澪さんには、実咲さんの妹のみのりさんが参列することを伝えなかった。ましてや「前妻を忘れるな」と言われたことを、再婚相手である澪さんに伝えるわけにはいかなかった。僕は澪さんに心配をかけまいと、そっと彼女の体から離れ、笑顔を作った。

「……滞りなく済みましたよ。ああ、僕、お

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【コラボ小説「陸で休む」番外編】花を手向ける人

【コラボ小説「陸で休む」番外編】花を手向ける人

これは、「陸で休む」主人公の航さんの息子である航平さんが、母親のお墓参りで【ある人】と出会うお話です。

春の彼岸。僕は1人で、千葉にある菩提寺まで母の墓参りに行った。妻と小学生の息子2人は、妻の実家の方のお墓参りに行っていた。

ブリキのバケツに水を汲んでいると、小鳥の声が聴こえてきた。声がした方を見上げると、桜が咲き始めていた。

「桜か……」

中学3年の時、僕は父の転職の為に大阪から東京に

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 16 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 16 (「澪標」シリーズより)

新居に仕事に結婚式と忙しくなるので、志津への報告は籍を入れてからなんて悠長なことは言えなくなった。

僕は竹内くんの電話を切った後、すぐに志津に電話を掛けた。

「志津、こないだは青梅ありがとう。梅シロップにして今日いただいたんだけど、すごく美味しかったよ」

「おお、そうか!うちは、梅酒にして飲んだぞ。あっ、糖尿なんだから酒は控えろなんて野暮なことは言うなよ?旬を味わうのは、大事なんだからな!」

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【コラボショートショート】そのお星さまは甘く春の味がした

【コラボショートショート】そのお星さまは甘く春の味がした

3月14日。あなたが京都の研修から帰ってきた。

「志津課長、お土産の生八ツ橋です。営業部の皆さんと召し上がってください」
あなたは志津に生八ツ橋の詰め合わせを手渡した。

「鈴木、ありがとうな!おーい、皆!お茶にするぞ!」
志津が声を掛けると、営業部全員が集まってきた。

「繁忙期の受験シーズンはご苦労様!この生八ツ橋は、鈴木からの土産だ。どうぞ食べてくれ」
志津は営業部のムードメーカーだ。大量

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 15 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 15 (「澪標」シリーズより)

無事に仲直りした僕たちは、翌日一緒に梅仕事をした。血圧を気にして、アルコール類を控えている澪さんも楽しめるよう、梅酒ではなく梅シロップを仕込んだ。氷砂糖が溶け飲み頃になった頃、ちょうど益子で絵付けをした湯呑みが小山のアパートに届いた。僕たちは、梅シロップを炭酸水で割って梅ジュースにして、出来上がったばかりの湯呑みでいただくことにした。

「……何だか、下手な絵で申し訳ないです」
僕の湯呑みには、台

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