
ラインケアとマインドフルネス
合同会社さくらSOC労働衛生コンサルタント・産業医事務所です。
マインドフルネスは、セルフケアの文脈で語られることが多いとは思います。今回は表題の通り、ラインケアの文脈で私見を語ってみます。
マインドフルネスを技法として語れば、瞑想が代表的でしょう。しかし、瞑想=マインドフルネス(技法)というわけでありません。この点については今日の主題ではないのでこれ以上は触れません。
マインドフルネスを状態として語れば、「気づき」「今ココ」「ありのまま」「Being」などのワードが、頻出でしょう。本日のポイントはここにあって、この「気づき」が、ラインケアの関わりでも重要であるというのが、本日の私が伝えたいことです。
メンタルヘルス講習の柱の一つである「ラインケア」でありますが、これは、上司が部下に対して行う介入とも言えるわけですが、ラインケアのキモは、「気づく・聴く・つなぐ」です。部下の普段との違いに、気づき、それを業務上の行動(≒事例性)を中心に個別な安心できる空間と時間を確保しつつ、聴く。そして、その内容から、一定程度の疾病性が疑われたら、早々に産業保健スタッフにつなぐ。まあこの一連の話が講演の中で行われることが一般的なラインケア研修と言えるでしょう。
私が、今日お伝えしたいことは、マインドフルネス(技法)で向上が期待できる「気づき」の力は、ラインケアにおける聴くのクオリティを向上させるのに有用であるということです。
多くの人は、聞き手として、相手の話を聴いているつもりでも実は聴けていないことはあるあるです。聴いているようにみえても、内心では、違うことを考えていたり、相手の話に自分の評価を下していたりしているものです。しかも、その内心の状態に聞き手自身が気がついてない(=無自覚)。
もし、その無自覚に聞き手が適切に気づくことができたら、
その内心をいったん脇において、もう一度、相手の話に集中することに修正が可能となります。
この修正を適切に上手にやれるかどうかが、聴くことのクオリティに直結します。この修正力を高めるのに、マインドフルネス(技法)が有用であると私は考えます。この観点からは、ラインケアとマインドフルネスは密接なかかわりをもっているのです。
次の図は、対人関係療法の専門家である水島広子先生の著作から図を引用させていただき、私のラインケア講習の中で使っているスライドの一枚です。

この図の、気づくということに、マインドフルネス(状態)が実に適合するわけです。水島広子先生は著作の中でマインドフルネスというワードは使いませんが、私としては、「ああ、これはまさにマインドフルネスそのものだ!」と感じました。
以上が今日のお話でした。ラインケアとマインドフルネスがつながっているということに気がついて頂ければ幸いです。
ありがとうございました。