木の根もとに蝶は
仕事の帰り道、きゅうに 足元に目を惹かれました。
しばらく、自分がなにを見つけたのか 分かりませんでしたけれど、街路樹の根もとに ハタ、ハタハタ、と 風を受けている きれいなものがあって、それが 一頭の蝶だと気づきました。
細いあしが 驚くほどちからづよく、いちょうの木肌をつかんでいました。車がとおるたび、風が起こって四枚の翅は ひるがえるのでした。蝶は、精いっぱいに 自分自身をまもっているように見えました。
木の根元で
蝶が
やすんでいた
傍らからくる
車の風に
ハタハタと
翅を はためかせながら
細い 六本の肢で
体を 支えて
はっとして 五、六歩
もどって
みつめた
ゆっくりと
しゃがんだ
つかれた蝶は うつくしく 力づよかった
今日も 私と あなたが
幸せですように
明日が
ありますように