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変なおじさん

「富士山が見たい❗️」

と言うSちゃんの希望で、金時山の向かい側にある「矢倉岳」に登った。

一番最短で山頂にたどり着ける矢倉沢登山口、矢倉沢をスタート。

登山道の途中で、
山頂のお昼ご飯に菜の花を摘んで。

私達は、食料危機が来ても生きて行ける!

最短コースという事は、急な登りが続くコース、
歩くのが嫌いなSちゃんは、
私より軽快にスタートしたと思ったら、
「はーっ」とため息をついたり、
「富士山見えるよねー(怒)」
と、子どもの様にダダをこねたり、
ヘリコプターで運んでほしいだ
いろいろ言いながらも、
落ちていた枝を杖にして、這う様にして登ってきた。

「やったー、山頂、おめでとう🎊」

「富士山見える?」

遅れて、後ろの方からSちゃんが叫ぶ様に聞いてくる。

残念、目的の富士山は雲の中、
本当にもう、天気に裏切られてばかりいる。

「あーあ」

ため息をつくSちゃんだが、
ランチをしながら、雲が晴れるのを待つ事にした。

富士山は見えないが、
箱根外輪山の明神ヶ岳、煙が上がる大涌谷、
デン!と正面に金時山、愛鷹山、
左に目を移すと、キラキラ光る相模湾。

標高870mにしては、展望が素晴らしいお得な山。

と、そこへ、私達が来た道とは反対側から、長靴姿のおじさんが登ってきた。

「今日は空いてるなー、いつも人がいっぱいなんだよ。どっちから来たの?」

と、気さくに声をかけてきた。

「矢倉沢から登ってきましたー」

と言うと、急登りだったでしょ、と言いながら、ススキで箸を作り始めた。

荷物を置いて、姿が見えなくなったなぁーと思ったら、

「ちょっとカップ貸してみろ。面白いもの見つけたから。」

と、手に握っているものを、カップの中に入れ、お湯を注ぐ。
硬く縮まっていた黒い塊は、お湯を含んで広がってきた。

「おじさんは、山に来て、こういうのとってるんだよ。なんだか知ってるか?」

と聞いてくる。

私、山好きですから、畑もやってるし、わかった。

「キクラゲ❗️」

「正解!食ってみろ、おじさん料理してきたのあるから、天然だよ!」

と言って、卵と炒めたキクラゲを差し出してきた。

「天然」という言葉に弱い私達、興味深々頂いてみた。
コリコリ、強い弾力、だけど歯切れがいい。
美味しい!おじさんの味付けもなかなか。

これからの時期は、コシアブラとかタラの芽をとって、食べるんだよ、という。

私達も、来る途中菜の花摘んで、茹でて食べたんです。とか、来る途中にタラの芽の木があった、という話しをすると

「偉い❗️」

と褒められた。

実は、明神ヶ岳の麓に畑を借りてるんです。
畑に向かう途中に見える、この矢倉岳が気になって、今日登りに来たんです。

と言うと、面白い人達と思ったのか、

「おじさんも一緒に混ぜてよ。」

と、ご飯を持って移動してきて、
いろんな話をする。

去年は富士山に116回しか行けなかった、とか、(今までに1500回登ってるそう)
金時山は6000回登ってるとか、
小田原の海から、明神ヶ岳、金時山を超え富士山に登って戻って来たとか、
富士山は1日に2回登ってるとか、
話がぶっ飛び過ぎていて、驚くのを通りこして、こんな人もいるのか?と呆れて聞いていた。

話の途中に、

「変なおじさんでしょ!」

というフレーズが何度も入る。

うん、本当に変なおじさん。

気がつけば、山頂に2時間もいた。

「さ、行くぞ、今日はコーヒー御馳走になったから、無料でガイドしてやる、早く用意しろ。」

と言って、一緒に下山する事になった。

ガイドを頼まれて、ガイドする事もあるらしい。
テキパキと、年齢とは思えない足取りではスタスタ降りていく。

途中、この木は何でしょう?とクイズ形式で、木の名前を教えてくれる。

そして、あんた達はおてんば娘だから、と言いながら、登山道を外れて、雑木林の中へサクサク入っていく。
小型のノコギリをザックから出し、アブラチャンという木を、ギコギコ切りはじめた。
長さを揃えたら、あーら、いい感じの杖になった。

「杖いるか?」

いつも、ストックは使わない私だが、よく出来た杖を面白がって受け取った。

3人分の杖が出来たら、
そのまま登山道に戻らず、雑木林の中をショートカットして、降りていく。
サクサク、フワフワした山の中、急な下りで杖が役に立つ。

「楽しい!わー、おもしろーい!」


「あんた達は、おてんば娘だから、
こんな道いいだろ。お客さんを楽しませるのもガイドの仕事だから。」

とか言って、変なおじさんはスタスタ進んでいく。

その後もクイズ形式の、樹木クイズは続く。

柔らかい枝の「鬼しばり」

猛毒の「うつぎ」

コメツゲ

その他、ゼンマイ、わらび

わらびがたくさん自生するところも教えてもらった。今度また来よう^ ^

変なおじさんは、私達を地蔵堂まで送ると、
来た道を戻り、足柄峠へ向かって行った。

「明日も登るから、また来てね。」

と言って。

すごい人は、だいたい変な人なのだが、
変な人は面白い、そして楽しいし、何よりバイタリティがある。

こんな風に、
面白おかしく、日々を重ねていきたい。

山を歩いていると、いろいろな人との出会いがある。それもまた登山の楽しみ。

おー、面白い1日だった。

変なおじさん、
またどこかで会いましょう。

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