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旧友を思い出した、北アルプス大冒険(薬師岳〜五色ヶ原)最終日


「晴れてれば、良かったのにねー」

山小屋スタッフの男性が言う。
今年は晴れが少ない、自分達も日の出を見ていない。雪が少なかったので、雪解けも早く、もう秋の花が咲いていると言う。
8月に来る方は、花はないだろうなぁ、とも。

地球温暖化の影響が、こんな標高の高いお花畑にも及んでいる。心が痛む。

「今回は残念だけど、きれいなお花畑を期待して、また来ちゃうんですよね、」

お礼の挨拶をして小屋を出る。

「天気とくらす」と言うサイトでは12時までA、その後Cになっている。
Aのうちに歩き出そうと、5時過ぎに小屋を出発した。

外は相変わらず雲の中で真っ白。これでAですか?と聞きたくなる。風がないだけ、昨日よりいいかなぁ、と思う。
出発して、小屋を振り返ると、五色ヶ原山荘はすでに雲の中で見えなくなっていた。

五色ヶ原は木道が整備されていて歩きやすい。
あの辺に立山、こっちには黒部湖が見えるのかも?と心の中で景色を描きながら、足元のお花を楽しんで歩いた。

イワカガミ
岩の間に
ヤマユリ



歩きやすい木道が終わると、
岩場を下って、いよいよ根性のザラ峠だ。



富士山の砂走りの様な直登りを想像していたが、そんな事はない、ジグザグに、登りやすく登山道が作られている。細かな石がザラザラしているが、雨降りが幸いして、地面はぎゅっとしまっていて、滑らず歩きやすい。
地面が乾いていたら、ザラザラ滑って歩きにくいだろうなぁ。

時折雨が強く降る。少しすると上がる、を繰り返す。レインウェアを着て急登りを歩くのは熱い。
雨が上がるとフードを脱いで、胸のファスナーを下まで下ろす。
雨が降り出すと、フードを被るの繰り返し。今日は全く視界が晴れない。
ザレた道を登り切り、山頂の獅子岳に到着した。今日1番の難所は無事に通過出来た。



先を歩いていたご夫婦はこの山頂で休憩をしていたが、私は立ったまま水分補給をしただけで、先を失礼させて頂いた。

獅子岳を下ってしばらくすると、目の前に雪渓が現れた。

「えっ!雪渓を渡るの?」

雨の登山は何度も経験してる、岩登りも、鎖もハシゴも経験済みだが、雪渓を渡るのは、、、
雪渓があるという情報は調べなかった。
こんな天気の雪渓は、見ているだけで怖い。

はーーっと、息を吐き覚悟を決めて、ザックからストックを取り出す。(岩登りが多いので使っていなかった)

でも、雪が硬くてストックが滑って、雪に刺さらない。そーっとストックを雪に付いて、バランスを崩さないように、一歩ずつ歩く。

着地‼︎

はー良かった😮‍💨渡れた。
しばらく行くと、さっきよりも大きな雪渓が現れた。
この雪渓には、ロープが張られている。ロープを持ち、ストックも使いゆっくり通過する。

フィニッシュ‼︎


3つ目の雪渓、
ここはロープもなく、どこを渡ったらいいのか、そもそも渡っていいのか、赤いペイントが見つからないから、進む方向がわからなかった。
前方で人の声がした、声がした方を目を凝らして見ると、赤のペイントが見えた。(先を歩く家族連れに追い付いた)

やっぱりこれも越えるのね。
3回目の雪渓は少し慣れた。雪渓を無事に越えると、目の前に大きな岩、これを越える様だ、はしごがかけてある。

ストックが邪魔だ。
ザックを下ろし、ストックをしまう。
両手でしっかり梯子を握り、登る。登った先も、急な岩登りが続く。


吉澤Mちゃん
突然、小学校の時の障害物競争を思い出した。
彼女は美人で頭もよかった。もちろんクラスの人気者で、学級委員だった。走るのも早く、100m走でもマラソンでも勝つ事は出来なかった。

その彼女に唯一勝つ事が出来たのが障害物競争だった。
ブカブカの長靴を履いて、平均台を歩いたり、網の下を括った。
早くトイレに行きたかった、と言うのもあるが、圧倒的に彼女を引き離し、1番でゴールした。

そんな事を、ここ北アルプスの岩登りで思い出す。ふふっと笑ってしまう。

母が作ってくれたスカートを、鉄棒遊びで何度破いたことだろう。
猫の気持ちを分かりたくて、屋根の上にも登った。もちろん木登りなんて日常茶飯事だった。

好きなんだよね、障害物。
そして、人より得意なんだろうな。

天気は相変わらず真っ白のまんま、展望はない。
でも、この変化に富み過ぎる登山道がおもしろく、楽しかった。

「鬼岳東面」の道標が現れる。


ここを過ぎれば龍王岳、そして浄土山だ。面白く楽しく歩いて来たが、さすがに太ももが重ーくなって来た。
雨で展望もないので、浄土山は登らず、分岐から、一の越方面へ下山して、岩畳を歩くことにした。
一の越への登山道でも雷鳥が、愛らしく岩場を歩いている。かわいい💕


雨と、汗でびっしょりで下山して来た室堂は不思議な場所だ。

私の様にガッツリ登山してきました風の人と、ちょっとハイキングにきました、という感じの小さなザックのグループや、学生さんの団体、観光地に遊びにきたラフな格好の人達が入り乱れている。

室堂へ降りて来ても、真っ白で霧雨が降る。一の越から雄山も見えないくらいなのに、沢山の人が一の越へ向かって歩いていく。

石畳の道にも雪渓が残る


「この天気の中、この人達はどこへいくのかな?」

不思議に思いながら、
今日のゴールのみくりが池温泉に到着した。10時20分。
雨で冷えた体に乳白色の硫黄泉が気持ちいい。4日ぶりの温泉、はぁ〜緩む。

ホームページより
外が晴れてれば、窓からの景色が



ビールと富山名物でお疲れ様の食事をして、お土産を物色していると、同じコースをずっと歩いて来たソロ男性がみくりが池温泉に入ってきた。
今日はみくりが池温泉に泊まって、明日は大日岳を歩くと言う。

わー、いいなぁ。休みが許されるなら、私もそこまで歩きたい!

と思った。
不思議なもので、天候が悪く大変な山登りだったのに、終わってしまうのが寂しい。もっと山の中にいたい、と思うのだ。

外は叩きつける様な雨が降ったり、止んだりしている。
雨が止んだ隙をみて、みくりが池温泉を後に、室堂バスターミナルに向かった。
雲が風であおられ、ちらっとみくりが池と、立山の山肌が見えた。

登山の珍味がのった定食と、クラフトビール
立山、真っ白
お土産の手拭いと、雷鳥さんバッチ










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