楽しすぎた湯俣温泉 2日目
1日目の続き
夢を見ていた。
はっとして飛び起きた!寝坊した!
山小屋で寝坊するなんて初めてだ。朝食の時間を過ぎている。これも温泉効果だろうか?
慌てて飛び起き、顔だけ洗って食堂に行く。
「おはようございまーす」
と、まだしょぼしょぼした目で皆さんに挨拶して食卓に着く。
今日泊まっている方は、ほとんどが真砂岳から竹村新道を降って来た方で、今日は下山だけだという。
私は竹村新道の途中にある展望台まで、片道40分くらいの登山をする予定だ。
しかし、お肉を上手く消化出来ない体質らしく、普段お肉を食べない私だが、夕べのカレーはスパイスが効いていて美味しそうで、お肉を残していただいた。それがやはりお腹にハードだった様で、お腹の調子が良くない。
「お世話になりました!」
と山小屋を出た後に、もう一度トイレに戻る始末。
「やばい、お腹痛い!」
トイレと登山道を3回往復した後、
富山で買った赤玉があった事を思い出し、30粒服用すると、お腹の痛みは遠のいていった。
7時20分、
昨日あんなに賑わっていた広い河原に、ポツンと私一人になった。
お腹が落ち着いてきた、大丈夫!行けそう!
青嵐荘の裏の登山口から展望台を目指す事にした。
展望台からは槍ヶ岳が見えると言う。
コーヒーはこの展望台で、と決めていた。大丈夫、コーヒーも飲めそうだ。
天気も良くてうれしい、楽しい。
軽く準備運動をして登り始める。登り始めから急な登りだ。しかも登山道は狭く、枯れた松葉がたくさん落ちていて滑りやすい。
標高がどんどん上がる、湯俣川は、はるか下へと沈んでいく。
灰色の雲が南面の空をを覆っている。槍ヶ岳は見えるだろうか?
急な斜面を登る事40分弱、樹林帯から抜けて、急に開けたところに出た。展望台だ。
そして、びっくりした!
槍ヶ岳が目の前だ。想像してた以上に近くに大きく見える。
展望台の目の前に、北鎌尾根と一緒に見える。この方向から見る槍ヶ岳の穂先はきれいな三角をしている。
しかし、灰色の雲が邪魔をして、良い写真が撮れない。
西に見える鷲羽岳山頂は雲がなくなってきれいだ。この後絶対晴れる!コーヒーを飲みながら、雲が抜けるのを待つ事にした。
コーヒーを飲む私にも、太陽の光が届く様になって来た、暑い!
もうすこーし、槍の穂先に向かって息を吐く。黒い雲、早くどいて!
上の雲がほんの一瞬取れたのを狙って、写真を撮る。
ほんとうは、穂先の向こうは青空が良かったけど。
なんやかんや、1時間半もこの展望台にいた。
急な斜面を慎重に降りる。
30分ほどで河原に戻って来た。
湯俣山荘で、休憩しようと向かって見る。
平日の今日は、スイーツの販売がなくて、ビールを頂く。
そして気になっていた噴湯丘について聞いてみる。(噴湯丘のある伊藤新道は湯俣山荘が管理していて、情報も詳しい)
若い女性スタッフが、
「せっかくここまで来たんだから、是非みて来てください。今の時期が一番水が少ないし、お天気はいいし」
と、肩を押してくれる。
そして、
「濡れる覚悟で行けば大丈夫、濡れても歩いているうちに、乾きますから」
さらに、温泉たまこが作れるセットがある事を教えてくれる。
かわいい、楽しい。
お姉さんとの爽やかな会話から、
難しい事ないんじゃない?いろんな人がいろんな事を言っていたけど、行けそう!渡れそう!と心が軽やかになる。
ビール飲んじゃったけど、
沢靴も貸して頂き、ザックは小さなアタックザックにお水と、タオルと救急セット、それと温泉たまこセットを入れて、いざ出発だ。
昨日のルートで歩いて来て、
渡渉する川の前まできた。
ここで、沢靴に履き替えて、パンツを膝上まで捲り上げる。
キーンの沢靴がある安心感、水の中に足を入れた時の安定感が違う。
壁沿いに着いたロープを握る。足で川底を探りながら、安定している石を選びながら川の中を進む。
ロープが終わってしまった、でも先がある。よく見るとその先は砂地で浅い。
ピョンピョンと通過して、河原に着くと、そこはもう、至る所に温泉が沸いていて、白い湯気をあげていたり、地面からぷくぷくと気泡が出ていたり、温泉成分で黒く色が変わっていたり、
すごーい景色が広がっていた。
プシャーと勢いよくお湯が噴き出しているところもある。おっかなびっくり手を入れる、熱い!
「わーい、わーい!温泉卵♨️」
温泉卵を作る場所を探す。
ちょっと深さがあって、ザルがすっぽり沈むところ、
適温は70〜80度ぐらいらしい、温度計で測ると80℃、少し硬めの温玉希望で、タイマーを12分にセットする。
温泉卵が出来るまで、対岸に見える噴湯丘を見て来よう!
その為には、この川をもう一度渡らなければならない。
どこか渡りやすい場所は?
川の真ん中ぐらいまで行ってみるも、深いと流れも強く、捕まるところがないと、次の一歩が怖くて出せない。
また、違うところを渡ってみよう。
いくつか渡渉場所を変えて、川に入って見るが、どこも流れが早い、水圧がすごい。
そろそろ温泉卵が気になって戻ってみる。11分、どうかな?引き上げてみる。
温泉卵はアッツアッツで持てない、川の水で充分冷やして、ひとつ割ってみる。
「あー、ゆで卵になっちゃったー」
とろ〜り半熟とは程遠く、でもお塩を振って食べた卵は甘みがあって、あったかくて、そりゃ〜もう〜言葉になりません。美味しくって2個食べちゃった。1つはお土産にしよう。
こんな深い渓谷で温瀬卵を作って食べている自分に興奮する。楽しすぎる。
温泉卵を食べている最中に伊藤新道から男性2人が下山して来た。
そして、あっという間に川を渡って私の横を通り過ぎていった。
あの辺は渡りやすいのかなぁ?
もう一度、対岸に渡るべく川の中に入ったが、捲り上げたパンツに勢いよく水が跳ね上がってくるだけで、その次の一歩が出せなかった。
対岸から見える噴湯丘を写真に撮った。白い噴湯丘は自然が作った芸術品だ。
湯俣山荘に戻って、ザルを返してお礼を言う。
「ずっこく楽しかったー!、噴湯丘までは渡れなかったけどー」
先程の男性2人がくつろいでお酒を飲んでいた。
キーンの沢靴を買おう!
卵を持ってまた来よう!
最後に足湯に浸かった。
昨日はずっと足を入れていられなかったけど、今日は心地よい温度だ。
何度かジップラインを往復したから、帰りは慣れたものだ。
湯俣温泉、楽し過ぎた。
沢もきれいで、自然がいっぱいで心満たされた。
また来よう。
今度は素泊まりで。