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日記5・ハラスメント対策を考える後半

前回の日記続きです。


前回のおさらい

ものすごーく些細なことなのですが、こんなことで悩んでいました。

状況:LGBTQ+当事者中心の趣味の集まり場

困ったこと

  • 主催者(当事者)Aさんから女性扱いされている気がする。

  • 自分の男女どっちでもない状態を伝えると余計拗れそう訂正できず

  • 主催者だからこそ伝えたいけど「考えすぎ」片付けられそう

私は、性自認は男性で、仕事上は男性として生活していますが、女性が好きな(いわゆるノンケ)の男性と婚姻状態にあり、パートナーの家族やご近所からは依然として「奥さん」、「嫁」のままでもあります。

そんな外的な要因もあって、男女に切り分けた自分の説明が難しいんですね。

前回は、「男女二元論」専門用語の説明をしつつ、私のような男女二元的な考え方では説明ができないアイデンティティや生き方について書いていたらガッツリ長くなっちゃったわけです。

主催者の一人に打ち明けることに

そもそも、苦言を呈するべきか、すごく悩みました。

趣味の場ですから、行かなければいいだけなんですが、私はその場をすごく応援していたんですね。応援して色々な人にもオススメもしていました。

だからこそ、まだ誰も傷ついていないうちに指摘しなくてはならないと考えました。

「些細なこと」と書きましたが…私にとっては全然些細ではないんですよね。「当事者がやってるから」と安心して心を開いたのに、自分のアイデンティティを否定されるのは、けっこうきついです。

男女二元的な考えの人に、誤解なく私のアイデンティティを受け入れてもらおうと思ったら、「結婚していて」「何歳で治療を始めて」「夫は理解してるけど、私のことは女性として見ているので、ゲイではなくて」……と、初対面相手に、プライベートの全部を話さなくて全然納得してくれません

全部話さなくても、どこまで話せば警戒されないか、相手の反応を見ながら、逐一説明を考えなくてはなりません。

正直、最初からカミングアウトしなきゃよかったなと後悔しました。

今後参加される方に、そんな思いはしてほしくありません。

「苦情」ではなく「提言」。ポジティブに受け取ってもらえる安心感

別の主催者、Bさんに、メールを送ることにしました。「本人には言わないではほしい」とした上で、「女性扱いされているようでしんどい」「次回から参加できないかも」と伝えました。

すると、すぐに返信がきました。その方は私の相談に驚きとショックを感じていましたが、即座に、真摯に対応してたのです。

メールをしたその日のうちに、オンラインヒアリングの場を設けてくれて、どうしたらいいか一緒に考えてくれました。

Bさんは、「傷つけてしまったこと、それに気づかなかったことは本当に申し訳ない」という謝罪と、私がメッセージをしたことへの感謝の意を示してくれました。

「この経験を次に活かす教訓にしたい」苦情ではなく、提言としてポジティブに受け取ってくれたことが何より救われました

また、Bさんが「メッセージを打つことにきっと勇気が必要だったと思う」と、寄り添ってくれたこともかなり助かりました(実際めちゃくちゃ書き直した)。

一番大切なのは、あなたが傷つかないこと

なかでも、Bさんが何度も繰り返し言ってくれたことが「一番大事なのは、佐倉さんが安心して参加できること」だという言葉でした。

極端な言い方をしますが、主催者側からすれば、私のような苦情をいう存在は、面倒ではあるはずです。それが改善につながるとわかっていても、トラブル対応心を砕く作業ですからね。

頭でわかっていても、どこか厄介事へのめんどくささ精神的な辛さを覚えてしまうことはあると思うんです。

もちろん、Bさんも私のメッセージに驚き、どこか傷ついてもいました。

しかし、それはそれとして、「あなたが傷つかないこと」明確に宣言し、繰り返してくれたことは、すごく心強く感じました。

言葉の「謝罪」よりも今後の対応こそが「謝罪」

もちろん、謝罪や寄り添うことをいうだけでは終わりませんでした。

Bさんとは、今後どうすれば改善するか?どう本人に伝えるかを話し合いました。そもそも、それをしたくてメッセージを送ったわけです。

「あとはこっちで勝手に考えます、以上」みたいな姿勢だったら、伝えたことを後悔していたでしょう。

言葉の「謝罪」よりも、今後どうするか具体的なアイデアは圧倒的に「謝罪」を感じられます。そもそも謝罪欲しいわけじゃないですからね。

具体的な改善策をどう考える?

このような考え方を出し合いました。

  • 相手のセクシュアリティ(趣味のグループなので、趣味をする上で関係ないこと)には踏み込まない

  • 本人が言っていないことを決めつけない

という方向性で探っていくことになりました。

また、Bさんは私のことには触れず一般論としてAさんに上記のことを気をつけようと伝えると私に約束してくれました。

その上で
「ここまで話して思いましたが、佐倉さんからもお伝えする方が本人にも響くと思うが、言ってみてはどうか?」
と言われました。

冒頭で、「本人言わないでほしい」と伝えていて、私から言うつもりは全くありませんでした。

しかし、Bさんと話していて考え180度変わっていたんですよね。

「そうですね、言ってみたいと思います」

そう言葉を返していました。むしろ、早くAさんに会って話したいと思うほど気持ちが前向きになっていました。

これは本当に自分でもびっくりしました。

改善しようという態度はもちろん、Bさんと話すことで、自分サポートしてくれる存在がいる安心感が芽生えたからではないかと思います。

苦言という、軋轢を生みかねない発言を促すには、まずは、「発言や存在が否定されない」「相手受け入れてくれる」という安心感醸造することが一番大切なのだと、学ぶいい機会でした。

一連のBさんの対応は、企業のセクハラ窓口の対応にも応用できるのではないかと感じました。

セクハラ窓口として満点のBさんの対応

というのも、Bさんと話していて、思い出したことがあったからです。それは、以前勤めていた会社でのことです。

私は同僚と折り合いが悪く、同僚からハラスメントのような態度を取られたことがあり、上司改善を求めて訴えたことがありました。

感情的になっていたとは、当時から悪いのは同僚ではなく、会社の体制だと感じていました。スタートアップの部署だったこともあり、その同僚作業領域が不明瞭で、事あるごとにぶつかっていたからです。

同僚からすれば、むしろ私のほうがハラスメントをしていたと感じていたようです。

その時も上司に「同僚を責めたいわけではないので言わないでくれ」と、頼んでいたのですが、上司は「言わないと改善のしようもないから言うよ」と、強行突破してしまいました。

上司はとても温和な人で、寄り添ってくれる人ではありました。

しかし、改善策を全く考えられないタイプで、まるで政治家の答弁のような言葉遊びみたいな対策ばかりで、状況いつまでも変わらなかったのです。

それどころか、社長からは「ハラスメントと感じるのは、あなたの精神的な問題なんじゃないの?」「同僚のことが嫌いなんだね」と完全に個人の問題にされてしまいました。

その後、本当に精神を病んでしまい、休職。そのまま退職してしまったわけですが、その時の上司がもしBさんだったら、今も働けてんだろうなぁとめちゃくちゃ感じました。

思うのですが、組織で起こるハラスメントって、その後の対応が悪くて悪化ってことが往々にしてあると思うんですよね。ハラスメントが起こらないようにするのはもちろんですが、人と人が働いている限り、必ず問題は起こるものです。

どうすれば、スタッフが気持ちよく働けるか、ハラスメント事案発生後の対策こそ、めちゃくちゃ重要なんじゃないかなと思います。

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