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春の光を纏う 〈菓子四季録 vol.10〉
菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、みずみずしく春を知らせる「柑橘のマリネを添えたババロア」。
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国産柑橘のハイシーズンです
冬から春にかけてたくさんの国産柑橘が旬を迎えます。冬の始まりと共に青果売り場のみかんのスペースが増え、年末に向けて柚子や金柑を見かける頻度が上がります。年が明けると、りんごと交代するようにいろんな種類の柑橘がどんどん出てきます。黄色から橙色まで色も様々、大きさも様々。甘味も酸味も違うし、果汁の量も違います。こんなにたくさんの種類が手に入るのは今の時期だけ。
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今回はマリネに仕立て、身も果汁も余すことなく使います。味わいもさることながら、その清々しい香りを堪能していただきたいのです。いくつかの柑橘をブレンドするのも良し、お気に入りの1種類だけで作るものよし。この時期の柑橘はどんな種類を使っても、組み合わせてもおいしく仕上がります。マリネはそのまま食べると、けっこう酸味が効いています。「酸っぱ過ぎる!」と思うかもしれませんが、この酸味がババロアと合わせるとちょうどいいのです。
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今回作るのはクラシカルなタイプのババロアです。今っぽい軽やかな感じではなく、卵黄のコクに生クリームのミルキーさが合わさったまろやかでどっしりとした味わい。ブランデーの風味が加わるとバニラの風味と相まってノーブルな雰囲気に。ここにマリネを合わせることで、お互いがお互いを盛り立てます。マリネがババロアの濃厚さクリーミーさを引き立て、ババロアがマリネの爽やかさ、軽やかさを引き立てます。しっかりとした甘みに、マリネの酸味がとても良く合い、最後までおいしく味わえます。
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見た目も、クリーム色のババロアにカラフルな柑橘が並ぶととてもきれい。全体が薄い黄色から橙色の優しいグラデーションでポカポカのひだまりのような温かさがあります。見ているだけで心がウキウキするような春の空気感みたい。光を浴びて、ジューシーな柑橘がキラキラする様は季節の移り変わりを告げ、新しい四季のはじまりを予感させます。見た目も、食べご心地も春爛漫なデザートです。
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ババロアとマリネを上手に作るコツをお伝えしつつ、国産柑橘の食べ比べをしてみたので、その様子もレポートしていきたいと思います。
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柑橘の種類が変わると、雰囲気も変わります。ぜひ、いろんな柑橘で食べ比べてみてくださいね。
柑橘のマリネを添えたババロア(レシピ)
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【材料】
〈ババロア〉容量150mlの型 約3個分
粉ゼラチン 5g
冷水 大さじ2
卵黄(Mサイズ) 2個分
*卵黄を取り分けやすいように卵は冷蔵庫で冷やしておき、使う直前に卵黄と卵白に分けましょう。
グラニュー糖 50g
バニラペーストまたはバニラオイル 少々
牛乳 220ml
ブランデー 20ml
生クリーム 100ml
〈柑橘のマリネ〉作りやすい分量
お好みの柑橘 150g(種、皮、薄皮を取り除いた正味)(約2〜3個)
レモン果汁 大さじ1
コアントロー 小さじ1/2
*清見オレンジ、ぽんかん、伊予柑など、お好みの柑橘で作れます。
*レシピではババロアを冷やし固める間にマリネを作っていますが、マリネは事前に作っておいても大丈夫です。
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下準備:生地を冷やす用の氷と生クリームを泡立てる用の氷を用意する。
【作り方】
〈ババロアを作る〉
1.小さな容器に冷水を入れ、粉ゼラチンをふり入れてふやかす。
*ゼラチンに水を入れるとダマになりやすいので、ゼラチンを水にふり入れましょう。
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2.ボウルに卵黄とグラニュー糖を入れ、白っぽくなるまで泡立て器でよく混ぜる。バニラペーストまたはバニラオイルを加えてさらに混ぜる。牛乳を小鍋で沸騰直前まで温め、ボウルに少しずつ加えて混ぜる。
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3.鍋に戻し、弱火にかける。ゴムベラで底からかき混ぜながら加熱し、ゆるくとろみがついたら火を止める。
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4.ふやかしたゼラチンを加え、ゴムベラで混ぜて溶かす。ゼラチンが溶けたらボウルに戻し、ブランデーを加えて混ぜる。ボウルの底を氷水につけ、時々かき混ぜながら、とろみがつくまで冷やす。
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5.別のボウルに生クリームを入れ、ボウルの底を氷水につけ冷やしながら、卵黄生地と同じくらいのかたさになるまでハンドミキサーで泡立てる。
*重いとろみはありますが、ハンドミキサーの筋が残らないくらいのかたさです。泡立てすぎないように注意しましょう。
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6.4の卵黄生地のボウルに、泡立てた生クリームを入れて混ぜ合わせる。生地が一体化したら型に流し入れ、冷蔵庫で3時間以上冷やし固める。
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〈柑橘のマリネを作る〉
7.好みの柑橘の皮と薄皮を剥き、種を取り除く(金柑の場合は皮ごと薄めにスライスする)。
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8.レモン果汁とコアントローであえ、冷蔵庫で冷やす。
*薄皮に果肉が残った場合は果汁を絞り、レモン汁と一緒に入れましょう。
*酸味が強い柑橘を使う場合や甘みを足したい場合は、はちみつやグラニュー糖を少し加えましょう。
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〈盛り付ける〉
9.ババロアの型を50度くらいの湯にさっとつける。指または水で濡らしたスプーンの背で縁を軽くおさえ、型からババロアを剥がす。型の上に皿をかぶせて逆さにし、軽くふって型から中身を外す。
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10.ババロアの横にマリネを添え、果汁をかける。好みでミントを飾る。
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小さなコツいろいろ
<下準備>
卵を冷やしておくのは卵黄を取り分けるときに作業がしやすいから。卵黄は油分が多いので冷やすとキュッとかたくなります。常温の卵の方が卵黄が柔らかく、取り分けの難易度が上がります。使う直前に取り分けるのは、卵黄だけで置いておくと表面がかたくなってしまうからです。また、生クリームを泡立てる、ババロア生地を冷やすのに氷水が必要です。冷やすことで濃度がついて、生クリームと均一に混ざりやすくなるのです。作り始める前に、氷があるかを確認して準備しておいてくださいね。
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<ブランデーは必要?>
ブランデーを入れずに作ると「おやつ」という雰囲気に、ブランデーが入ると一気に「デザート」という雰囲気に変わります。もちろん入れなくても作ることはできますが(その場合は牛乳の量をブランデーの分だけ増やしてくださいね)できれば入れて作ってみてください。入れるとぐっと上品な味わいになります。
柑橘のババロアを作るときに、ブランデーではなくコアントローを使うレシピもあります。コアントローはオレンジのリキュールなので柑橘類とも相性良し。もちろんそれはそれでおいしいのですが、今回のマリネを添えるのには爽やか過ぎるのです。今回はブランデーを使いババロアは柑橘に寄せません。逆にどっしりと構えていて欲しいのです。甘く、どっしりとバニラとブランデーの香りに包まれたババロアでこそ「マリネに合う」のではなく「マリネを輝かせる」のです。
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<生クリームの泡立て>
生クリームの泡立てはかなりゆるめ。とろみがつくくらいでやめておきます。泡立て器を左右に動かした時に筋が残らないくらい。持ち上げるとゆっくり流れ落ちます。泡立て過ぎると、ムースっぽくふわふわの食感になります。ババロアは口溶けのよさに加えて、ぷるぷるした感じや、つるんとした感じも欲しいのです。「生クリームを泡立てすぎない」はけっこう大事なポイントです!
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ゆるく流れるくらいが目安です
<とろみの加減>
何か2つのものを合わせる時は同じくらいの濃度にすると混ざりやすくなります。ゼラチンを加えて冷やした卵黄生地と生クリームのとろみを揃えるようにしましょう。こうすると混ざりやすく、なめらかで均一のババロア生地になります。
<柑橘のマリネ>
私は普段、柑橘は包丁で皮も薄皮も剥いていますが、これはやりやすい方法で。手で剥いてもOK。身が崩れても大丈夫です。品種も好きなのを選んでください。1種類ではなく、複数を組み合わせると味に変化が出て楽しいです。
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剥いた皮に果肉がついていたら、ぎゅうっと手で絞って果汁をマリネに加えてください。コアントローはホワイトキュラソーと呼ばれるオレンジのリキュールの一種。無色透明。まろやかな甘さと爽やかな香りが特徴。クリームや冷菓と相性が良いと言われています。少しだけ入れると柑橘の香りが引き立ちます。
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私は剥いた皮はしばらくそのまま部屋に置いておきます。部屋中に柑橘の爽やかな香りが広がるからです。香りの成分は皮にたくさん含まれます。これこそ天然のアロマです。
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<きれいに型から抜きたい!>
まずは冷蔵庫でしっかり冷やします。ゼラチンが固まるのに必要な要素は「温度」と「時間」。きれいに抜くためには時間をかけてしっかり固まらせることが大事です。
抜く前に型をお湯につけますが、湯の温度の目安は50度くらい。ぎりぎり触れるくらいの湯にサッとつけて、型の縁を押していきましょう。型とババロアの間に空気が入るように意識しましょう。すっと抜けます。お湯の温度が高かったり、つけている時間が長いとババロアが溶けてきてしまいます。お皿も冷やしておくといいですね。
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2024冬 国産柑橘食べ比べの会
一緒に菓子四季録を作っている清佳さんから「先生『はるか』って食べたことありますか?」と去年の冬に言われました。清佳さんのお気に入りの柑橘でぜひ食べてみて欲しいということでした。買う気満々で売り場にいって大混乱。そこには名前が似てるものが多数あったのです。せとか、はるか、はるみ、はるひ…。「え?どれだっけ?」柑橘ってそもそも見た目が似ている。もちろんサイズ感は違ったりするけれど、みんな黄色か橙色の果実だし。そして「はるか」でなく「せとか」を買ったり「はるみ」と迷ったり。結局去年は「はるか」にたどり着けませんでした。
それにしても国産の柑橘はいつの間にこんなに種類が増えたのでしょう。昔はスーパーで普通に買うことができたのはみかん、伊予柑、はっさく、甘夏、夏みかん、柚子に金柑くらい。今は知らない柑橘もたくさんあります。知っているような国産柑橘でさえ、それぞれの特徴を言えるか?と言ったらそんなこともない。なので今回柑橘のマリネを作るにあたって、「柑橘食べ比べ会」を開催することに。せっかくなので清佳さんにも参加してもらいました。
今回エントリーいただいた柑橘さんたちはこちら。
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上段左から:サンフルーツ、甘夏
中段左から:不知火、清美オレンジ、伊予柑
下段左から:はるか、はるひ、ぽんかん、金柑
金柑だけは結構、特徴的なので試食といっても別枠です。
今回エントリーしたものは、これを買うぞ!という感じではなく、私が買い物に行った2つのスーパーで販売していたものを購入。丸ごとの外見を見つつ、皮と薄皮を剥いて、グラスに入れて並べます。色味も果肉感も違います。ぷるぷるもあるし、粒がしっかりしているものも。
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まずは1つずつ見た目を確認し、実食していきます。個人的な目標は1つずつの柑橘を個別に認識できるくらいに落とし込むこと。ネットで調べれば、いろんな情報はすぐに出てくるし、どんな個性をもっているのかもすぐにわかります。でも、そういう事前情報のバイアスに引っ張られていることもあると思うんです。今は情報が多くてなんでも知った気になれちゃう。でもだからこそ自分で感じること、自分で体感することを大事な気がしています。
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とは言え、比べて違いがわかるのかな?と思ったけれど、食べてびっくり、それぞれの個性がちゃんとしっかりと出てくるのです。香り、ジューシーさ、甘味、酸味、コク、微妙な違いがあっておもしろい。でもこれは食べ比べをしているからこそだなあと思います。比べて食べると差異がわかりやすいのです。
<私の簡単な感想>
サンフルーツ:甘夏をジューシーにした感じ。みずみずしい。爽やか。
甘夏:さっぱりとした味わい。酸味がキリッとしてる。少し苦味。果肉はしっかりめ。食べると懐かしい気持ちになる。
不知火:甘味と酸味が濃厚。ジューシー。
清美オレンジ:オレンジをさっぱりしたような味わい。
伊予柑:バランス型。一番見分けがつきにくかった。
はるか:甘いけれどさっぱり。ぷるぷるでジューシー。見た目がレモンみたいで酸っぱそうでギャップがある。
はるひ:甘い。酸味弱め。
ぽんかん:甘みはさっぱり。食べやすく、後に独自の香り。
そして、後から調べて「不知火」のうち糖度 13 度以上、 クエン酸 1%以下のものが「デコポン」 として流通していることを知りました。えー、知らなかった!!
そうやって全部を食べて、清佳さんと感想を言語化していきます。すごくおもしろかったのは「甘夏」を食べると二人とも昔の記憶がふわっと甦る感じになること。なんだかノスタルジイな気持ちになるんです。清佳さんは具体的なイメージも浮かんだとのこと。あとはお互いの好みも感想に影響するなあとも思いました。私は甘いのもおいしいけれど、酸味がキリッとしたものも好きなので「サンフルーツ」が好きでした。甘夏と似てるけれど、もっとジューシーにした感じ。「サンフルーツ」は甘夏の進化版!みたいな雰囲気。清佳さんはやはり、いろいろ食べても「はるか」が好きとのこと。
そして食べ比べ終わったら、目をつぶって食べて、何を食べたかを予想するゲームを開催。意外とちゃんと当てられてびっくり。正解するとシンプルにうれしいし、その子のアイデンティティ的な要素を自分なりに捕まえらた気がして少しほっとします。
食べ比べた後で気づいたこと
この食べ比べが興味深くて、終わった後も時々思い出してはいろいろ考えました。というのも、個々の特徴を見分けられる大きな要因は同時にいろんな種類を食べ比べているからというのが大きいと思うのです。1つだけ食べるとただおいしいで終わってしまいそう。これは酸っぱい、これは甘みが強い、これはみずみずしいね、こっちは果肉のつぶつぶがしっかりしている。これは比べる対象があるからこそはっきりとするのです。
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どれがいい、どれが悪いとかではなくて比較することで、その子の持っている個性がキラキラ光って見えるのです。
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そして、よく「人と比べると不幸になる」と言うけれど、あれはちょっと違うんじゃないかなと思いました。「比べること」自体はネガティブなことではないと思います。「人と比べて、ないものを嘆くから不幸になる」なんだと思うのです。私が好きな「サンフルーツ」は甘味は少なめ。それは甘くないのではなくて酸味に特化しているということ。甘味が足りないわけじゃない。さっぱりして、甘味もほどほどにあって酸っぱい柑橘を求めている人にはぴったり。「比べること」「比較をすること」で違いや差異をより見つけることができます。そしてその違いを「素晴らしいすてきなもの」と感じたら、幸せにもなれるし、肯定感も満たされると思うのです。春の光を纏った柑橘たちは似ているけれど、よく向き合えばみんな違ってそして美しく凛としておりました。
比較の根本の意義は、比べることで個々の特徴を際立たせること。優劣をつけることでも、上下を決めることでもない。知ることではじめて、本当の良さが見える。「じゃあ、私の良さってなんだろう?」と思いました。自分のことはわかっているようでわかっていないから。そんなに簡単なことではないけれど、自分の心と頭で向き合うことは大事だなあとしみじみ。
柑橘の食べ比べで、自分のアイデンティティついて考えるとは思わなかった(笑)。似てるようで違う柑橘の食べ比べ、ぜひみなさんもためてしてみてください。こんなにたくさんの種類じゃなくても大丈夫。2〜3種類でも十分その個々の性格の違いが感じ取れます。ネットにある「これが甘い」「これがおいしい」という情報ではなくて、自分で味わって感じてみてくださいね。そしてぜひあなたの推しを見つけてください。
国産柑橘はなかなか奥の深い世界。まだ食べたことのない種類もたくさん。これからも研究、探検は続けていきたいです。おすすめの国産柑橘があったらぜひ、教えてくださいね。食べ比べの後はぜひマリネを作ってババロアと一緒に楽しんでみてください。
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【Photos : Sayaka Sawada】
同じレシピをグラフィックデザイナーの澤田清佳さんが絵で紹介しています。絵のかわいさもさることながら、手順の流れがとってもわかりやすいです。個人的にはイラストで全体を把握し、写真で詳細を確認していただくのがおすすめです。
撮影当日は天気が良く暖かで、たくさんの光が差し込み春の日そのものでした。その陽の光に照らされて柑橘の実もマリネもババロアも全部がキラキラして美しかったです。今回の清佳さんの記事を読むとあの日の光景が目に浮かぶようです。言葉で綴る色彩の世界は時々目に見える世界よりも美しく感じます。情景描写と過去の思い出の心情描写が相まって広がる鮮やかでみずみずしい彩りをぜひ読んでみてくださいね。