学習塾と学校教育の現実

大学を卒業して、新卒で教職に携わる人の大半は大学時代に学習塾でアルバイトをしている。アルバイト、という表現が相応しくないほど、正社員と殆ど同じ働き方である。

現実問題、私も4年間某学習塾で時間講師として働いていた。その4年間と、この1年間中学校の教員として働いた経験により感じた双方のギャップを、書き連ねていく。

1. 定期考査問題の複製について

定期考査の問題は、基本的に複製が禁止されている。著作権上の問題も然り、問題の使い回しができなくなることが大きい。
毎年使い回しをしていなくとも、所謂ネタ切れにより、同じ類の問題を出題せざるを得ないことはあるだろう。

殆どの学習塾では、そんなルールも無視して定期考査問題をコピーしている現実がある。
他の生徒に情報漏洩をしたい、という悪意のもと行っているわけではない。

単に、担当している生徒の苦手の傾向を掴むためにすぎなかったが、すべてコピーして、ファイリングするということが塾内で義務化されていた。担当科目だけでなく全科目だったので、コピーすること自体が面倒だった記憶がある。

そして、定期考査問題はカラーマーカーで印をつけ、苦手の分析を行う。ケアレスミス・対策不足のミス・重大なミスという3種類で分析を行い、今後のテスト対策の指導に繋げていくのだ。

それが担当生徒の間のみで行われれば話は別だが、他校の生徒の問題を解かせて色々な問題に慣れさせるというパターンもあった。

つまるところ、学校内で「複製禁止」と大声を張り上げても、その声は暗黙の了解で無視されていう事実がある。勿論、すべての学習塾で行われているわけではない。だが、実施している塾がある以上、どこでも行われていると覚悟しておくのがベターであろう。


2. 講師の質について

この章では、私が4年間アルバイトをしてひしひしと感じていた塾業界の実際について明らかにしていく。

というのは、講師の質にバラつきがあるということである。それは教員においてもそうであろうが、学習塾においては重大な問題であった。

講師は、所詮大学生である。1年生から始めていれば、殆ど高校生といっても過言では無い。
だからこそ、給料に目が眩み、時給の高さを理由に塾講師を始める大学生が多いのだ。
そこにあるのは、「子供たちの成績をあげたい」「勉強を好きになってもらいたい」という責任感ではない。責任感など全くない。
中には、塾講師をやっている生徒がInstagram等に「英語まじで苦手なのに塾講やってる笑」といった書き込みをするような例も見られた。
そして、堅苦しい雰囲気に耐えられず、結局居酒屋バイトがいいねと勝手に辞めていくのだ。

それに対して、本当に大学生か?と疑うほど質が高い講師がいることも間違いない。
生徒から支持され、保護者からの評判も良い。受験の知識も豊富で、面談等で的確なアドバイスができる。講師の研修なども行い、リーダー的な立ち位置にいる。

私は塾講師時代、後者の方だったと思う。
というのは、指導力があるという意味ではなく、金目当てでやっていたわけではないということだ。生徒が勉強を好きになるように尽力したい、と心底思っていたからだ。
本音を言えば、給料を目的にするならば塾なんかよりもっと良い職場がある。
塾は、割りに合わない。

問題は、生徒がその講師を選べないというところにある。講師はこちらの勝手で自動で振り分けられ、講師の都合がつかない場合は知らない講師が担当することもある。

指導力の高い講師が固定の担当というラッキーな生徒もいれば、不定期でころころと講師が変わるような可哀想な生徒もいる。

どんなにやる気のない、そして指導力の低い講師であろうが、生徒にとっては大好きな先生。
でもその講師はその生徒のことなど見捨て、居酒屋バイトの方が給料がいいと辞めていく。
生徒は次の授業でその先生がおらず戸惑う。
急に担当講師が変わって、その日の授業はなんとなくそわそわする。
そして、大好きな先生がいないからと生徒のやる気も低下する。

…というような事例を、私は痛いほど見てきたのだ。

だからひとつだけ声を大にして言いたい。
塾に行くことが必ずしも正解ではない。
塾に通うことが「正しかった」か否かは、固定の講師次第である。
指導力が高く、親身になってサポートしてくれるような講師が担当になったならば、それは高額を出してまで通わせる価値があったと言えるだろう。
だが、高額を支払う価値のない講師もいる事実がある。それは、間違いない。


だからこそ、教員になって感じることは、
「この子は独学でもできるだろう」と確信できるような生徒は塾に行かない方がいいということだ。このような講師の質をめぐる駆け引きは、ギャンブルだ。寧ろそのような生徒こそ、学校内でサポートを施していきたいと思う。

※塾仲間同士でライバル関係となり、切磋琢磨したいという場合は別。

逆に、勉強に対してやる気のない・勉強方法がわからないといった、根本的に机に向かう姿勢がない生徒に関しては100%塾に行くことを勧めたい。



気ままに書き連ねてきたが、これはあくまで私の見解であって、これらが正しいという根拠はない。だが、昨年まで塾講師・今年から教員という、双方に挟まれた状態の私から言えることは全て語り尽くしたはずだ。

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