料理教室の講師である男が歪み切った世界を彷徨う話【『Chime』映画感想文】
料理教室の講師である男が歪み切った世界を彷徨う話。無駄を剃り落とした黒沢清的世界がバチバチに決まった画で描かれていく。それが魅力であり、それが全てとも言える。過去作のリメイクも行い、キャリアとしては自己模倣に入ったとも言える。
今作もcureを筆頭にいつかどこかで見た黒沢映画の要素が集められて形作られている。言うなればファンムービーであり、それ以上の物は無い。むしろ物理的な制作費の限界によって削られた要素や尺を鑑みるに、過去作に比べてパワーダウンしている。しかし役者の芝居が全員素晴らしい。棒な芝居も映画の世界を形作る要素として利用してきた過去作と違って、芝居がハレーションを起こしていない。これは役者に対する演出のスタンスが変わったというよりも、純粋に役者が上手いからであろう。
異物ではなく、異物感としての芝居。だから尚のことファンムービー的であるのだが。