2024年映画年間ベスト
2024年に見た映画は新旧含めて200本くらい、その中で邦画部門と洋画部門のベストを発表したいと思います。
○邦画部門
『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』
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発達障害を扱った映画の金字塔であり、ご当地映画としてもこれから参照されるべき傑作だと思います。
映画全体の丁寧な描写と、どこか愛嬌ある雰囲気が生み出す温かな世界観が心地良い涙を誘います。
王道かつ安定感のある展開で、決して奇をてらわずにここまで惹きつけられる演出を行う西川達郎監督はこの作品が商業映画デビュー作との事で、その完成度の高さに大変驚かされました。これからの時代を担う大物監督の誕生に賛美の拍手を送りたいと思います。
○洋画部門
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
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学校に取り残された普段は交わらない人々の寄り添いを描いたこの作品、現実の厳しさを言い訳にしない、その強靭な温かさに心動かされました。
特に車上でケーキを分け合うシーンの多幸感は格別で、70年代のハリウッド映画を思い出させるノスタルジックな雰囲気も相まって作品のハイライトとなるシーンでした。
俳優達の演技も素晴らしく、また学校内の美術など見る物の多い傑作となっていました。監督の次作に期待です。
○総評
今年は全体的に、優しさや温かさを感じる人間関係の中で絆や連帯を描いた作品に素晴らしい作品が多かった年でした。『夜明けのすべて』『ぼくのお日さま』『アイミタガイ』など、いずれも様々な形で優しさを描いた作品が揃い、多幸感のある映画界でした。
ただ表現と現実は合わせ鏡の様な存在で「優しさ」というテーマがフィクションの世界で求められるという事は、一方で現実の世界のやるせ無さに人々の嫌気がさしているという事でもあり、世相は決して明るくないというのが気になるところです。
映画界で来年以降も「優しさ」というテーマがキーワードになるのか、世界への希望を抱きながら注目したいと思います。
来年も素晴らしい傑作に出会えます様に。