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近未来と政治と地震と青春と【『HAPPYEND』映画感想文】

 グレーディングのおかげか、エドワードヤン『カップルズ』を思い浮かべる。固い絆で結ばれた友人グループに一人の女が介入する事で関係がひび割れていくという図式もまさしくそうだ。メインビジュアルにもなってる分かれ道や、窓に反射するショットなど、人種や貧富の差を反映した図式的表現ははまっている。自由を求めて音楽に傾倒する主人公たちも随分図式的なキャラクターである。地震と身体の震えを直球で重ねたり、掃除をしてたら行き場がなくなった男女といった表現も効いている。
 しかしこの映画が訴えたいであろう政治主張を直接伝えるシーンになった途端、強度が落ちてしまうのは何故だろうか。結局映画としての伝え方が拙いのだと思う。途中何度か出てくる擬似アフレコごっこのごとく、主人公たちの政治主張とその方法論はただの政治ごっこでしかない。露悪的に描かれている校長の方が理にかなっている様に見えるのは、果たして作り手の意図通りなのか甚だ疑問である。
 大きな戦略を描きながらそれを表現する戦術を持ち合わせていない映画だ。ごっこ遊びの範疇を出ないのであれば、愛嬌なき『ぼくらの七日間戦争』でしかなく、皮肉を効かせたはずのタイトルも機能していない。何故なら皮肉とは大人の技術なのだから。

#映画感想文

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