80歳義父母と「Perfect Days 」

義理の両親と「Perfect Days」を劇場で観た。私にとっては２回目の鑑賞だ。


１回目を観たときに、２回目は夫と観るつもりでいた。でもふと、義母と観てみようと思った。

１回目の劇場内で、50代女性と80代の父親とおぼしき男性が、女性に支えられながら階段をゆっくり上がっている姿があった。「ああ、父と娘で観にきているのだな」とだけ思ったが、その姿が脳裏にあったのかもしれない。

あるいは、結婚して12年、義母とちょうど良い距離感を築き、お互いに苦しくない関係を保てるようになったから、かもしれない。今なら映画を2人で鑑賞することを2人で楽しめるかもしれない、と思えたのだろう。義母も年齢にしては若いとはいえ、もう80歳だ。義母の人生の残された時間をつい考えてしまう。

義母に声をかけると、義父も行きたがっていると言う。断る理由もなく、３人で観に行くことになった。義父母と３人で出かけることは、１人目を授かった時に安産祈願にお参りに行ったきりだ。今から11年前のことになる。だから、義父母と私の３人で映画鑑賞なんて今回が初めてだ。

ショッピングモール内にある劇場だったから、軽い昼食を３人でとり、その後本屋へ行ったり、義母が必要としていたフライパンを買ったりして過ごした。

父と母は映画を観るのは30年ぶりだそうだ。映画館に入っても、もの珍しそうに周りを眺めていた。父にはコーヒーを、母にはミネラルウォーターを買って、席についた。父は歩くのに時間がかかり、階段を上るのもゆっくりだ。

映画の内容に、2人は静かに感動したようだ。映画が終わり場内にあかりがつくと、母が「もう少し映画にひたっていたい」と言うので、３人でお茶をすることにした。「三浦友和が出てたわね」と母が言い、「あまり喋りすぎない映画で良かった」と父が静かに言った。カフェを出るときに、「美味しいものを食べて、良い映画を観て、今日は良い１日だったわ」と母が言うので、「パーフェクト・デイだね。」と私が言うと、母が笑った。

３人で映画を観ることは、もうないかもしれない。義父母と一緒に観たいと思える映画には、もう出会えないかもしれない。でも、ある映画を観たことで、私の行動が変わり、３人での思い出が１つできた。ありがたいことである。

私にはもう実の両親がいないから、映画に限らず、義父母との残された時間を大切にしたい。そう思わせてくれる映画だった。