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黄金の荒野を拓く@宇宙ビジョン作家人響三九楽(ヒビキサクラ)
2020年11月7日 10:56
愛されていることに、自信がありますか?家茂様は二十一歳だった。和宮様も同じ年で、そして愛する人を失った。私が家定様を失った年に近い。愛する人を失った和宮様の気持ちが、心に染みわたるほどよくわかる。そんな時、心にぽっかりとブラックホールが生まれるのだ。ブラックホールは、どこまでも深くて暗い。愛する人を失った悲しみと辛さを吸い取り、ブラックホールはどんどん肥大する。和宮様は生きる気力
2020年11月4日 18:35
今、いる場所で私ができることは何だろう?1865年、和宮様との結婚の三年後、イギリスとフランス、オランダが兵庫の開港を要請してきた。「兵庫開港が認められなければ、幕府と交渉は止め、京都御所にいる天皇と直接交渉する」これらの国は、そう脅しをかけてきた。兵庫開港拒否は、彼らに攻撃を受けるチャンスを与えると考えた幕府は、天皇に許可を得ないまま兵庫開港を決めてしまった。しかし一橋慶喜は天皇からの
2020年10月30日 16:56
私がここにいる意味は、きっときっとある和宮様の兄上に当たる孝明天皇は、攘夷派で外国からの進出を阻止しこの国を守る意思がお強い方だった。その思いから、ご自身がお決めになった妹の和宮様の婚約を破棄してまで、家茂様に嫁がせたのは、徳川幕府を倒すためではなく幕府と力を合わせ、外国から日本を守るためだった。「兄上はご自分の意見をしっかり持った方ですが、とても穏やかでやさしい方です」和宮様は、私
2020年10月23日 22:13
小我を手放した時、大我はその姿を現す和宮様は、御所風のやり方を大奥で通せるように私をコントロールしようとし、私はこれまでの大奥でのしきたりややり方を通せるよう和宮をコントロールしたかった。私達はお互いをコントロールしようとしていた。何年も後に「あの時は私達、火花バチバチですごかったわよね~!」と笑い合っていたけど、当時はそんな余裕なんてなかった。どちらも自分がマウントを取りたかった。
2020年10月22日 17:19
嫁と姑のひそやかな戦い初めて嫁となる和宮様を見た私の印象は・・・「お雛様か!!」だ。和宮様は、まるでお雛様のように絵巻物から現れたお姫様だった。雅なお顔立ちに、小さなお身体。精巧に作られた手の込んだアンティークドールのようだった。私達武家の女とは、まったくちがうイキモノ。瞬きもせず、無表情だった。家茂様も初めて顔を合わせた時、一瞬驚いていた。が、家茂様はやさしく彼女に微笑んだ。
2020年10月20日 19:12
生まれ育った環境が創るものやがて江戸城に慶福様が入ってこられた。私と家定様の養子、という形で、名前も徳川家茂に改められた。「お義母上様、家茂でございます」そう言いながら、彼は頭を下げた。息子、というけれど彼は十三歳で、私は二十二歳。息子、よりも弟、という感じだった。聡明で年齢よりも落ち着いて見えた。今後私は彼を支え徳川家を守っていくのだ、と背筋を伸ばした。家定様亡き後、私は落飾し
2020年10月16日 21:54
あなたは本物のソウルメイトです私と家定様が一緒に過ごした時間は、両手からサラサラと流れていく砂のように儚い夢のような時間だった。わずか二年足らずの結婚生活。けれどこの二年間が私を強くし、私を変えた。「もし私がこの世を去り、今度菓子職人として生まれ変わっても、私の妻でいることを。私の作った菓子を食べ、笑っていることを。いつまでもずっと私のそばにいることを」そう家定様と私は約束をした
2020年10月14日 18:45
幸せは与えられるものではなく、自らが作り出すもの安政四年六月に、家定様が政を任せていた老中の阿部正弘が死去した。その後は同じく老中の堀田 正睦に託した。阿部正弘は、時期将軍争いに関してお義父上様と同じく一橋慶喜様を押す一橋派だった。彼を失った一橋派は、力を弱めていった。今まで一手に政権を握っていた阿部正弘を失ったことで、幕府の吸引力は低下し、これまで影に潜んでいた家定様も、表舞台に出
2020年10月3日 17:31
「あきらめ」を明らかに改めたい眠れないまま朝を迎えた。布団にじっとこもったまま横を見ると、起き上がり手を伸ばせば届く距離に、家定様はいる。が身体はそこにあっても、心は何億光年も離れている。天を衝くほどに高い木々に囲まれ、道もない大きく深い森の中でたった一人取り残されたような、とてつもない寂しさが私を襲う。これから私はどれだけの夜を、この大奥で過ごさなければならないのだろう?なんの希望も
2020年10月2日 16:24
眠れない初夜お式は緊張の内に終わった。家定様はお式の時に一度も私と顔を合せなかった。ずっと前を向き、視線をそらせていた。嫌われているかと思ったが、それはあとで違うことがわかった。けれどいっそ嫌われている方がましだったのかもしれない、と後で思い知った。家定様は私に何の興味もなかった。ただ御台所の地位が空いており、家臣や生母の本寿院様達にせっつかれ仕方なく私を迎えたようだ。チラッ、と見
2020年9月27日 13:43
星が私を導くこの日から幾島の厳しい修行が始まった。薩摩の田舎でのびのび育った私に、京都の公家のしきたりや御台所修行は納得できない事ばかりだった。「どうして、ここでこうするの?そこに何か意味があるのか?」「篤姫様、意味があろうとなかろうと、そうするようになっております。そういう昔からの習わしでございます」食ってかかった私を、幾島はぴしゃりとはねのけた。納得できぬ!私は両手を握り締め
2020年9月25日 14:40
運命は「もし・・・」を超えた積み重ね「今の日本の状況がわかるか?アメリカやイギリスなどの外国が目を光らせ、日本を狙っている。が、我が国は徳川が外国との交易を一部だけ認め、鎖国を続けている。時代遅れのまま裸で、世界から取り残されている。そのことに気づいているものは少ない。今、外国から攻めてこられたら日本は何の準備もなく、すぐに占拠されてしまうだろう。この国はどこかの属国に成り下がるだろう。