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書籍:フローとストック

物事を理解するとき、色々な考え方を持っておくと役に立ちますよね。

「マクロとミクロ」とか、「トップダウンとボトムアップ」とか、「長期と短期」とか、「具体と抽象」とか。

そのような考えの枠組みの一つに、「フローとストック」があります。

細谷功さんの著書『フローとストック』で、その概念を学ぶことができます。
さらに、書籍の中で展開されている「CAFSマトリックス」というものまでたどり着くと、世の中の色々なものをメタ(俯瞰)で捉えることが可能になります。

著者の細谷功さんは、『地頭力を鍛える』というベストセラーも出版されており、「地頭」や「フェルミ推定」などの言葉を世に広めるきっかけをつくった方でもあります。
思考に関する様々な書籍を出版されており、『具体と抽象』という本も話題となりました。

今回、『フローとストック』という本から、いくつかピックアップしてご紹介いたします。

フローとストック

「フローとストック」という言葉は、経済学やビジネスの領域で用いられてきました。
「フロー」は変化のことで、「ストック」は状態のことを指します。

フロー

「フロー」は、日本語では「流れ」を意味します。

水の流れや、人の流れ、のような目に見える流れ。
お金の流れや、時間の流れ、のように目に見えない流れ。

このようなものをフローと呼びます。

フローの特徴は、動きや変化です。

「AからBへ」というように from と to があります。
そして、その変化の大きさがあります。

例えば、「東京から大阪に500人移動した」というものがフローです。

ストック

「ストック」は、日本語では「積み上げ」を意味します。

本の積み上げや、ドラム缶の積み上げなどの、目に見える積み上げ。
お金の積み上げや、時間の積み上げなどの、目に見えない積み上げ。

このような積み上げをストックと呼びます。

ストックの特徴は、状態です。
フローの結果が、ストックと言えるでしょう。

例えば、「東京にいる人数」や「大阪にいる人数」がストックとなります。
「人の流れ」というフローの結果の積み上げが、ストックであると言えます。

入力と出力

世の中の変化は、何かしらの入力と出力で捉えることができます。

人口、ダムの貯水量、銀行口座の残高などをイメージするとわかりやすいと思います。

銀行口座の場合は、お金の預け入れが「入力」、お金の引き出しが「出力」となります。
その結果、銀行口座の残高が変化します。

ストックを増加させるフローが「入力」で、ストックを現象させるフローが「出力」という関係性があります。

行為と状態

フローとストックの見分け方は、「行為か状態か」という判別方法があります。

例えば「転んで怪我をした」の場合は、「転ぶ」が行為なのでフロー、「怪我」が状態なのでストックと言えます。
「ダイエットで痩せた」の場合は、「ダイエット」が行為でフロー、「痩せた」が状態なのでストックですね。

ビジネス用語

ビジネスの領域では「フロービジネス」「ストックビジネス」という言葉があります。

一度の販売でそれっきりのものが「フロービジネス」と呼ばれます。
例えば、コンビニやファストフードなどがこれに当たります。

一度の販売の後、長期的なサポートで収益をあげるものが「ストックビジネス」と呼ばれます。

フローとストックの特徴

これまでの説明が「フローとストック」そのものの説明です。
その上で、フローとストック、それぞれの特徴をもう少し細かくみていきます。

連続性

「フローとストック」は、0と1のように明確に分けられるものではありません。
グラデーションがある、あるいは、連続性があると言えます。

例えば、川の水をコップでバケツに汲み、そのバケツを家にあるタンクに運ぶとします。

ここで、川とコップの関係をみると、川がフローで、コップがストックになります。
そして、コップとバケツの関係を見ると、コップがフローで、バケツがストックになります。

このように、フローとストックは明確に二つ決めきれるものではなく、とある視点で切り取ったときの関係性と捉えることができます。
特に、時間軸を長くとれるものほど、ストックになりやすいと言えるでしょう。

粘性

フローとストックのグラデーションは、粘性で表現できます。
フローは「サラサラ」で、ストックは「ドロドロ」と言い換えられます。

「ドロドロ」しているものは、溜まりやすいですよね。

気体、液体、固体のような状態変化で考えたときに、気体よりも固体の方が留まりやすく、ストックになりやすいと言えます。

単調増加性

ストックは、基本的には増える傾向を持ちます。

金融資産などはわかりやすく、福利で勝手に増えていきます。
社会のルールも、増える傾向にあり、意図的に減らそうとしない限りは増え続けます。
家の中のゴミやホコリも、勝手に積み上がっていきます。

ストックは、プラスする方向は比較的簡単で、マイナスする方向は労力が必要なケースが多いです。

お金は簡単に減るため、必ずしもすべてのストックが単調増加するわけではありませんが、人の心理としては「なるべくお金を増やしたい」という方向に力が働いているのは確かでしょう。

思考と知識

フローとストックは、人の思考のタイプにも現れます。
フロー型の考え方と、ストック型の考え方があります。

これらは明確にパキっと別れているわけではなく、グラデーションがある点は留意していただきつつ、把握していただくと良いかなと思います。


人の知的活動を、「思考」というフローの蓄積が、「知識」というストックを生み出すものだと捉えることができます。

フロー型の人は、「思考」に強みを発揮します。
論理計算が得意だったり、閃きに優れていたりしりタイプは、フロー型と言えます。
過去の伝統に縛られない考え方もするため、イノベーティブでもあります。

ストック型の人は「知識」の活用を行います。
社会に蓄積された伝統や資産を活用します。
過去の失敗事例も多く知っているため、リスクを最小化するといった、守りに強い考え方でもあります。


…という内容が、書籍『フローとストック』の前半で語られる説明の一部です。

後半では、「CAFSマトリックス」という概念が語られ、これがこの本の見どころです。

CAFSマトリックス概略

CSFSとは、以下の頭文字をとったものです。

  • C:Concrete(具体)

  • A:Abstract(抽象)

  • F:Flow(フロー)

  • S:Stock(ストック)

具体・抽象、フロー・ストックの分類で、以下の四象限のマトリックスを描きます。

  • 1. フローとしての具体

  • 2. フローとしての抽象

  • 3. ストックとしての抽象

  • 4. ストックとしての具体

これらの順で、人間社会の様々な概念が作り上げられているといいます。

フローとしての具体

世の中にはたくさんの具体的なものがあります。

例えば「リカちゃん」や「バービー」があります。

これらの具体的な1事例を、「フローとしての具体」とします。

フローとしての抽象

その「リカちゃん」や「バービー」、それぞれから特徴を吸い上げて、抽象化します。

リカちゃんには、次のような特徴があります。

  • 人の形をしている

  • 洋服を着ている

  • 人形と洋服を組み合わせることができる

バービーにも、同様の特徴があります。
しかしながら、サイズが異なったり、メーカーが異なったりします。

これらの個別に抽象化された特徴が「フローとしての抽象」となります。

ストックとしての抽象

そのような個別のケースを集めていくと、特徴をストックすることになります。

ストックされた特徴を並べて、一つの名前をつけることができます。
例えば「着せ替え人形」のように。

このような個別の特徴が積み重ねられて出来上がった抽象概念を、「ストックとしての抽象」と呼びます。

ストックとしての具体

その抽象概念を使って、具体的なものをグルーピングします。

「リカちゃん」や「バービー」を、「着せ替え人形」とまとめることができます。
このとき「ジェニーちゃん」も「着せ替え人形」としてまとめることができます。

そうして、具体をまとめた状態を「ストックとしての具体」と呼びます。

サイクル

このように、CAFSマトリックスを使って考えると…

  • 1. フローとしての具体:ぐちゃっとした状態

  • 2. フローとしての抽象:ぐちゃっとを整理

  • 3. ストックとしての抽象:ルールを明文化

  • 4. ストックとしての具体:ルールを適用して秩序だてる

というステップを踏んで、様々な概念が作られ、世の中の整理されていっていることがわかります。

書籍の中では、CAFSマトリックスを用いて、「イノベーション」や「アンラーン」といった、近年重要視されている概念についても語られています。

この思考の枠組みをインストールすると、世の中を、よりメタに捉えることができるかもしれません。

この記事だと、その凄さがあまり伝わらないかもしれませんが…
書籍のCAFSマトリックスの章を「これめっちゃスゴイこと言ってる」って思いながら読んでいました。

めっちゃくちゃオススメなので、気になった方は是非読んでみてください。

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