書籍:独学の地図
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
独学の地図
荒木博行さんの著作「独学の地図」を読みました。
著者について
荒木博行さんは、株式会社学びデザインの代表で、武蔵野大学の教授、金沢大学の客員教授、グロービスの講師をされています。
Podcast「超相対性理論」、Voicy「荒木博行のbook cafe」のパーソナリティとしてご存知の方も多いかと思います。
大量の本を読んだ上でのVoicy毎日発信を5年続けてらっしゃいます。
そのような、学びを日々実践しながら、教授・講師として他人の学びにも関わり続けている荒木さんが、学びを深めるための考え方について語ったのが本書です。
本書をオススメできる人
本書は、学びを深めたいという人にオススメできます。
特に、以下のような問いを持っている方にとって、非常に有益な本です。
何を学ぶべきか?
何を学びたいのか?
何を学んだのか?
ビジネスパーソンの多くは、「これからのキャリアを考えたとき、何を学ぶべきか?どこで学ぶべきか?」という課題を持っていることでしょう。
例えば、「海外にMBA留学する」「ビジネススクールでマーケティングを学ぶ」「簿記やITの資格を取得する」「ChatGPTの使い方講座に参加する」なども考えることでしょう。
ビジネス環境が変化していく中で、メディアでは「これからは○○の時代」という話が取り沙汰されるため、「それらを学ばないと」と焦りを覚えてしまいます。
しかし、ここで「何を学ぶか」「どこで学ぶか」よりも、「どう学ぶか」の方が重要であると筆者は語ります。
学びの本質を知ると、「それらを学ばないと」という焦りはどこかに追いやられます。
「なぜ学ぶか」という問いを持つこともあると思います。
この問いは重要ですが、これに囚われすぎると、役に立つかどうかといった点に目がいき、行動が抑制されてしまう場合もあります。
「なぜ学ぶか」という問いに対しては、極端な話、「面白そうだから学ぶ」ということ以上の理由は必要ないでしょう。
このような、学びに対して「それらを学ばないと」という焦りをもっている方、「なぜ学ぶか」ということに囚われて行動が抑制されている方にとって非常にオススメできる本です。
本書の概要
タイトルには「独学」と書かれていますが、これは学びのスタンスを示しています。
ビジネススクールや大学や職場にしても、最終的には教えを取り込み、内政し、学びに転換するというプロセスは、結局のところ独りで学ぶということを示しています。
荒木さんは、独学を三つの階層に分けています。
第一階層:独学のための「行為」
第二階層:独学のための「能力」
第三階層:独学のための「土台」
第一階層では、学びを深めるための行為を「疑問」「差分」「他者」というキーワードに集約し、これらの3点をサイクルとして回すことの重要性を説明しています。
第二階層では、独学に必要な能力を筋力として例えています。
「自己批判筋」「保留筋」「抽象化筋」「具体化筋」「表現筋」という五つの筋肉に例えて、これらの筋力を鍛えていくことの大切さと、具体的な鍛え方を示しています。
第三階層では、行為と能力を支える土台について説明しています。
学びを継続していくために、今まで何を学んだかの整理と、今後何を学ぶかの整理としての地図が存在します。
この三階層モデルを理解して実践することで、身の回りのすべての物が学びに転換されていきます。
先述した「どう学ぶか」を示したものが、この三階層モデルであるともいえます。
本書では、この三階層モデルの体現者として、レオナルド・ダ・ヴィンチを例にあげています。
レオナルドは体系的な教育を受けてきたわけではなく、ほぼ独学で若き日々を過ごしました。
そのような彼は、今は不世出の芸術家として世界中に知られています。
今回、この中から、第一階層の「疑問」をピックアップしてご紹介します。
疑問
その学びに「問い」はあるか?
資格のための勉強は、「一定以上の得点をとる」という明確な目的があります。
これはある意味、「他者が定めた要件を満たすための手段」としての勉強でしょう。
しかし、学びはそのような他者視点にあわせた学びだけでしょうか。
もっと、自分の内側からくる学びの意欲があります。
しかし学びには、忘れてはならない根源的な役割があります。
それは、自分の内なる疑問に答えるために学ぶ、知りたいことがあるから学ぶ、ということです。
この内なる疑問、「問い」が忘れられたり、疎かにされたりしています。
例えば、夏休みの自由研究を題材に、この状況を考えてみます。
自由研究は、おそらく夏休みの宿題の中で苦手な宿題ナンバーワンではないでしょうか。
それは、自由研究は「自ら問いを立てる」という点に難しさがあるからでしょう。
今は「自由研究キット」が販売されています。
これが存在するのは、問いがなくても自由研究をこなすことができるからです。
「自ら問いを立てる」ことに慣れていないことの現れでしょう。
学校の授業や宿題は、考えるべき問いがすでに決められています。
私達は、「他者が立てた問いに答えを出す」というトレーニングをひたすらに積んでおり、それがクセになっています。
そのクセが大人になっても継続しています。
資格の勉強は、その典型例と言えるでしょう。
自ら問いを立てることの重要性
自ら立てた問いへの答えは、一般論にはならないケースがほとんどです。
例えば、「日本国内で最も学歴が高い大学は?」という問いに対する答えは、一般論としての答えになるでしょう。
しかし「自分の人生においてベストの大学は?」という問いに対する答えはどうでしょう。
自分は何に興味をもっているのか、人生において何を優先するのか、といった個別理由に影響されます。
自分の内側を深く理解しない限り、このような問いに答えることはできません。
自分で立てた問いは、自分の人生論とつながったものとなります。
そのような問いであれば、探求力が刺激され、外から強制されなくとも学びのサイクルが始まります。
「問い」は単なる「疑問」で良い
ここで良い「問い」は何かということを考えます。
独学における良い問いの条件は、「その問いの答えを本気で知りたいか」です。
ビジネスや研究における良い問いの条件には、社会的意義や新規性、実現可能性などが含まれるでしょう。
しかし、独学の場合は、好奇心や意欲が重要です。
他者の視点が入りすぎたり、必要性を重視しすぎたりすると、行動に結びつきづらくなるケースもあります。
以上、「独学の地図」という書籍の一部をピックアップして紹介しました。
本書では、「疑問」という項目はさらに詳細の興味深い説明がされています。
その後に続く「差分」「他者」、そして独学に必要な筋力についても得られるものがあります。
「差分」においては、学びの本質は「経験の前後の差分」と説明されています。
しかし、多くの場合、前後の差分が無いものも「学び」と呼んでいます。
ここで、その差分をしっかりと抽出することで、様々なことを学びに変えられると書いてあります。
独学に必要な筋力というテーマにおいては、独学を加速させるために必要なベースの能力を紹介しています。
「保留筋」というネガティブケイパビリティに通ずる能力の重要性や、具体と抽象を行き来するための「抽象化筋」「具体化筋」について書かれています。
これらは、Podcast「超相対性理論」の内容とも通ずるものがあり、「超相対性理論」のリスナーの方には強くオススメできる内容となっています。