破壊と創造、この孤独に繋がりがある 岡本太郎『孤独がきみを強くする』
「芸術は爆発だ」、”太陽の塔”といえばこの人だろう。芸術家 岡本太郎、名前は聞いたことがある、しかしその生きざまに触れる機会は現代に生きる私達にはほとんどない。
本書はフランス滞在と太平洋戦争を経験した氏の孤独観を写した1冊である。氏の孤独とは徹底的に闘うことだった。
孤独、破壊、創造
まず、岡本太郎の“孤独”を正確に定義しなければならない。
孤独者とは一人ぼっちで社会から孤立している人間を指すのではない、他者から傷つけられながらも戦い続ける人間を指すのだ。
そしてここで注目してほしいのは戦いを挑む相手だ。孤独者は私を傷つける他者と戦うのではない、傷ついた私と戦うのである。
他者に耳を傾け、傷つき、自己を破壊し、創造する。そしてまた傷つく。このスクラップアンドビルドこそが岡本太郎が持つ孤独観の中心ではないだろうか。“自分と闘え”この言葉は何度も登場する。そこに他者はいない、だから岡本太郎は勝ち負けという概念を嫌う。
社会的な孤独とは
こうしてみると一連の循環は全て個人の内部でおこなわれている。耳を傾けるのも自分、破壊も想像も自身に対し、自身の手でなされる。しかしここで1点疑問が生まれる。だったら結局、岡本太郎だってただの独りぼっちではないか。何が“社会的”なのだと。
岡本太郎は体内に社会を見出したのである。
自分を救えない人に他者は救えない。「自分を愛せないものに他者は愛せない」と説いたエーリッヒ・フロムと通ずる心がある。愛と救済、この2つが可換であると仮定したとき、岡本太郎の言葉は「自己の破壊と創造、その先に人は人を愛することができる」このように換言はできるかもしれない。
本書は1つのテーマにつき2ページ程度でまとめられており、読みやすい構成となっている。しかしページをめくる速度はきっと想像の何倍も遅くなることだろう。ページをめくる過程において、あなたは破壊され、創造されるのだから。
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