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中学校除籍 その9 幼児性

ここで、私が同居しはじめた「おじさん」について、詳しく書いておきたいと思います。

母はそれなりの理想を抱いて家を出ました。
それはあまりにも自分勝手で、妄想にも似たものでしたが、その夢のようなものを完璧に打ち砕いたのは、同居相手に選んだ男性です。

前回、同居後すぐにこの男がアルコール依存症と判明したことを書きましたが、それだけではなかったのです。アルコール依存症の人間はたくさんいるけれど、この人には他の人にはない顕著な幼児性がありました。

小さなトランジスタラジオを私がイヤホンで聞いていると
「あ、ラジオだな! 貸してくれ!」
と言い出すので、渡すと五分も聞かないで飽きてしまい、放り出してしまいます。
私が
「聞かないのなら返して」と言うと、
「いや、聞くよ。ラジオだもん。そりゃ聞くさ」
とよくわからない理屈をこねて手放そうとしないのです。

万事が万事、この調子でした。

私がインスタントラーメンをすすっていると
盛んに欲しがりますが
ろくに食べもせずにそのままにして
麺が伸びてしまっても
「食べるんだから片付けるな」
と、片づけようとさせない。

自分が手に入れたものは自分のもの。

私が幼児だったころによくあった感覚です。

新しい生活の新しい同居人が
「こんな人で大丈夫なのだろうか?」と気持ちの悪~い不安がぐんぐんと広がりました。

彼の幼児性は生活の中で多々見られます。

自分の機嫌が悪いときには
母がちょっと外に出た隙に
こっそり玄関の鍵を閉めてしまいます。
ドアの向こうで母が
「あれ? どうしたんだ?」
と困った様子の声をあげると
嬉しそうにニタ~と笑うのです。
その姿を見て

大人がこんなことをするものなのか

と背筋が寒くなりました。

テレビを見ていて
「このティーエイチイーというのは何て読むんだ?」
「THE ザ」
「どういう意味だ?」
これにもビックリしました。
三十代半ばの働き盛りの男性が
「THE」が読めなくて、意味も知らないのです。

英語も駄目なら
漢字も駄目でした。
読み方がおかしい。
読むのでなく耳で聞いて覚える。幼児の覚え方です。

母の財布から勝手にお金を抜いてお酒を飲みに行く。
働かない。お金がないときはいつもゴロゴロしている。お酒を飲みに行く以外には
自発的に何かを始めることが一切ない。

現代であれば、ASD ADHD。
もしくは軽度知的障害。
そういったものを持っていたんだと思います。

近々詳しく書きますが
母には住民票を移せない事情がありました。
ここに住んでいることを誰にも言っていません。子供である私の存在も、ないことになっています。
収入は自分がスナックで働いた給料だけですが
財布の中のお金は男が持っていってしまう。

3月に名古屋を出て
5月にはもう生活は完全に破綻していました。



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