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「YOUR/MY love letter」とは、令和版「阪急電車 片道15分の奇跡」である

 タイトル読んで「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」となった人とは良いお酒が飲めそうです。


1.はじめに


 なんの因果かこの記事にたどり着いた方の多くは、小説「阪急電車」および映画「阪急電車 片道15分の奇跡」のファンか、コミュ「YOUR/MY love letter」が好きな THE IDOLM@STERシャイニーカラーズのファンでしょう。(後者はプロデューサーと呼ぶのが一般的ですが便宜上ファンと呼びます。シャニマスがどうとかって話は今はしないということで)



 そうです。あなたです。誰でもないあなたです。あなたがどちらのファンであろうと、私はあなたに言いたいことがあります。




1⃣「阪急電車」が好きなあなた
 こういったジャンルのものは慣れていないかもしれないです。とても月並みな表現ですが1度騙されたと思って、コミュ「YOUR/MY love letter」というストーリーを読んでみてください。THE IDOLM@STER シャイニーカラーズというスマホゲーム内のストーリーですが、Youtubeで検索すれば出てきます。あなたはこの物語が大好きになることを私が保証します。

2⃣「YOUR/MY love letter」が好きなあなた
 今すぐ図書館で小説「阪急電車」を読んでくるか、アマゾンプライムの日本映画NET無料体験で「阪急電車 片道15分の奇跡」を見てきてください。どちらも名作です。あなたはこの物語が大好きになることを私が保証します。

 はっきり言って全く別ジャンルといえるこの2作品、双方のファンに双方の作品を勧めるべくnoteを書いている理由について話していきます。

 以下小説「阪急電車」、映画「阪急電車 片道15分の奇跡」、IDOLM@STERシャイニーカラーズのコミュ「YOUR/MY love letter」を冒頭少しだけネタバレしています。
 これを読んでも本編の面白さを損なわないよう書いていますが、1mmもネタバレがダメな人はここでブラウザバックして今すぐ作品を見てきてください!!





2.「阪急電車」とは

 2008年に単行本化され、2011年に「阪急電車 片道15分の奇跡」として映画化された、著者 有川浩さんの短編小説集です。関西圏のホームタウンを走る阪急今津線の列車内およびその路線上の8駅を舞台に、偶然に電車に乗り合わせた人たちの人生が少しずつ交差し、それぞれが抱える人生の悩みに希望を照らすハートフルストーリーです。
 映画版の主人公はこちら。

高瀬 翔子 (中谷 美紀)
森岡 ミサ (戸田 恵梨香)
萩原 時江 (宮本 信子)
伊藤 康江 (南 果歩)
権田原 美帆(谷村 美月)
門田 悦子(有村 架純)
萩原 亜美(芦田 愛菜)
小坂 圭一(勝地 涼)

()内は演者。役者がま~~~~~~良い。

 主人公が8人おり、駅に到着すると乗客の乗降が発生し、そのシーンにおける主役が変わっていきます。つまりは群像劇ということです。

 ストーリーは、前半は宝塚駅を出発する西宮北口行きの電車内で、後半は反対に宝塚行きの車内で進んで行きます。

阪急電車 路線図

 物語の冒頭は以下の通り。

 32歳OLの高瀬翔子は、同僚の彼氏との結婚準備を進めている中にも関わらず、彼の浮気が発覚します。婚約を破棄したいとも言われ、翔子は激怒。彼から「翔子に自分は必要ない」とまで言われた翔子は、沈黙ののち披露宴に自分を招待する条件で婚約破棄を飲みました。

 結婚式当日、翔子はウエディングドレスで出席。何も知らずに式場に入ってきた新郎の彼と新婦は、翔子を見て唖然とした表情を浮かべ、翔子は復讐を果たしたことに満足していました。その後退席を求められ、引き出物を持ち電車で一人帰る翔子。

 翔子と同じ電車に乗っていた萩原時江は、孫の亜美の母が出かけるため面倒を見ているところでした。
 乗り合わせた翔子を見て、その姿を不思議がる亜美。時江はドレスに引き出物を持った翔子の事情を察し、話しかけます。「話せば楽になる」と言われた翔子は、洗いざらい告白しました。時江は心意気に感服しながら、号泣する翔子に次の駅で下車して休むように勧めます。小林駅で降りた翔子は時江の言葉で自信を取り戻し、服を着替え心機一転するのを決めたのでした。

 翔子が降りた後、亜美から犬を飼うよう勧められる時江ですが、絶対に犬は飼わないと決めていました。亡き夫が犬が苦手だったためです。そんなことを時江が思い出していると、カツヤの怒鳴り声が聞こえてきます。

時江ばあちゃんがあったけえんだ

 このような感じでその瞬間の人間に抱える問題を少しずつ前に進めていく物語が、登場人物が変わっていく形で進行していきます。
 あらすじから推し量れますが、時江は本作のキーといって差し支えないです。この後のカツヤとミサの関係についても一家言を放っていきます。

 後半では前半から月日が経った半年後が描かれ、前進した人間模様や問題に更に切り込んでいく様子にカタルシスを得られ、温かい気持ちになれるでしょう。





3.「YOUR/MY love letter」とは

 冒頭に書いた通り「THE IDOLM@STER シャイニーカラーズ」というスマホゲーム内のストーリーです。ゲームは2018年リリースですが、このストーリーが実装されたのは22年のことになります。ゲームの細かい説明は長くなるほか、ストーリーを読む上で"必要がない"ので割愛します。
 このゲームの特徴とも言えますが、ストーリー尺が1つあたり2時間ほど(※自動再生の場合)あり、読み終えたあとは1つの映画を鑑賞したような気分になります。そのため、映画阪急電車との比較対象に挙がるのです。

 この物語の主人公はこちら。

26歳 会社員/Webディレクター
19歳 大学生/コンビニ店員
17歳 高校生
XX歳 会社員/プロデューサー
29歳 高校教師
59歳 会社員

アイドルグループ 「アルストロメリア」
17歳 高校生 大崎甜花
17歳 高校生 大崎甘奈
23歳 桑山千雪

この本編とはあまり関係ないが、上から4番目のプロデューサーは
アルストロメリアをマネジメントしているその人

 こちらも群像劇にあたります。違いとしてはアルストロメリアの3人以外は紹介が年齢・職業のみなこと。人物名が明かされているアルストロメリアについては、本編の3割程度しか登場しないため、名もなき6人が主人公と言って差し支えないです。ただしアイドルたちは阪急電車で言うところの時江の位置に当たり、キーであることは間違いないです。

 物語のあらすじは以下の通り。

26歳 会社員/Webディレクター。
漠然とした悩みを抱えていた。
会社員として新人ではなくなり、後輩社員がつくようになった。後輩が早く一人前になれるよう見守ってたまに少しだけ軌道修正。一時脇役になるのは甘んじて受け入れる...。
帰宅すると待っている溜め込んだ家事。気付けば流行のアーティストに追いつけなくなった。責任ある仕事も肩書も無く、生活に彩りが欠けていた。

19歳 大学生/コンビニ店員。
新生活に胸を躍らせていたが、いつの間にか忙殺されていた。
勉強とバイトを繰り返す日々。余裕はないのに単調な生活は、大変だけど辛いとは言いたくない。きっと慣れの問題だろう。いつもの夜勤、知らないアイドルの店内放送が時刻を告げる。0時の時報を聞いたらバックヤードで休憩は日課になっていた。

17歳 高校生。
なんとなく何者かに変わりたかった。そして可愛くなりたかった。アルストロメリアみたいに。
SNSで有名な女子高生「まな」は化粧品のプロデュースだってしている。一度は所属していた演劇部も辞め、今はただのいち学生として過ごすほか無かった。

 人物紹介のようですが、あらすじで間違いないです。阪急電車の登場人物は主体的に行動を選択した中での人間関係の難しさや悩みを抱えていますが、こちらの登場人物は受動的に日常生活を過ごす中での漠然とした不安や悩みを抱えています。
(あとの2人は物語の核心に少しずつ触れるため省略しましたが、概ね同じ類と考えて大丈夫です。プロデューサーだけはこの職種を自ら選んだ上で発生するイベントに頭を悩ませるため、どちらかというと阪急電車における登場人物の様な悩みに近いです。)

 この登場人物とアルストロメリアとの関係性が描かれるのかと思いきや、間接的にしか触れない人間、ほぼ関わらない人間がいます。アルストロメリアのファンであるため直接的に関係を持つ人達を含め、様々な人間の悩みにどう触れていくのか、その伏線を回収していく「6話」は刮目してください。



4.なんでこのnote書こうと思ったか

 さて私がこのnoteを書くに至った理由ですが、読んでいてなんとなくおわかりかと思います。
 この2本のストーリーは構図や展開が非常によく似ています。
 
人間生活の営みの中で様々な人間に生まれる千差万別の悩みや問題を前進させる構造になっています。かといって全く同じ作品ということではなく、悩みや問題が主体的or受動的、さらにYour/my love letterは2022年に発表されたストーリーということもあり、抱える悩みが現代的(メタなことを言えばコロナ禍での人間関係の希薄さも遠回しにクローズアップしている可能性がある)ということが言えるかと思います。

 ということで、片方が好きな人はきっともう片方も絶対好きなので見てきてくれ!ここまで読んだってことは見てくれると信じてますよ!感想書いてくれたら絶対見に行くよ!!




 余談。
 小説版の阪急電車、とっても好きなんですよね。思い入れもあって、同居してた祖母にこの本を貸したんです。祖母は戦時下の福岡育ちでまあ気が強く、合わない物はバッサリといくタイプだったのですが、この本は非常に気に入ってくれました。
 その後まもなく、これといった前兆もほとんどなく倒れ、そのまま亡くなってしまったが故にろくに恩返しが出来なかったのですが、この本がせめてもの手向けになってればと思うばかりです。


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