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【エッセイ】連鎖#2【映画】室町無頼


前回

連鎖

 当家の娘は「なにわ男子」のファンである。
 たびたび地元のスタジアムへも関東方面へも出張して(私はほとんど送迎)、ライブ観戦などもしている。
 今回、なにわ男子の長尾謙杜が出演しているという映画「室町無頼」を一緒に観てきた。
 以前「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」を観たときに、劇場の予告で観て気になってはいたものの、その後多忙なこともあり失念していたのだが、思いがけず娘に言われて思い出した。

 ということで、最初は映画の感想として書こうと思っていたのだけど、昨日投稿したエッセイ兼映画感想とまさに連鎖するような作品だったので、連作とした。

室町無頼

 時代劇である。
 まだ戦国時代に突入する前の話。
 庶民は飢饉や伝染病、圧政の中でもがき、記録では2ヶ月ほどの間に8万人もの死者が出ていたらしい。

 細かい内容についてはいつもどおり書かないが、この話の主人公である蓮田兵衛という人物は実在したらしく、正長の徳政一揆について記した書物にただ一回だけその名前の記述がある、この一揆の首謀者である。
 彼が、苦しむ庶民を束ね、高利で金を貸し付ける法曹界や、重税を課す幕府や公家に対して謀反を起こす話である。

現在の日本社会とリンク

 この作品の所々に、今の日本の状況を示唆するセリフが散りばめられている。
 脚本も書いている入江悠監督が意図しているのかどうかはわからないが、私には今の日本の閉塞感を突き刺す言葉たちと捉えることができた。


・「この世は銭でできている。だが、銭よりもっと動くものはなんじゃ?・・・風評じゃ」
  風評というのは、今の世の中で言えばインターネットを介した情報、SNSを指しているとも取れる。

「目障りなものは燃やすに限る」
 多額の通行料を徴収するために無駄に作られた関所を破り、火を放った。

「つまらぬ世はさっさと潰し、面白き世を作った方が良い」
 兵衛が集めた1万の群衆の力を前に、ライバルであり友人でもある骨皮道賢が「これはただの一揆ではない、幕府転覆ではないか」と詰め寄った際に発した言葉。

「民のために使わんで、何のための税じゃ」
 民の命を奪ってまで取り上げた税を好き放題に使い、遊興に明け暮れる権力者に対して、兵衛の片腕とも言える浪人が放った言葉。

「天下を燃やせ」
 借金の証文を焼き払いながら、民衆が放ち続けたシュプレヒコール。

 あと、私には強烈な風刺として聞こえたセリフとして。
「わしらに銭がなければ、民に新たな税を課せば良い」
 公家が自らの財政について語った言葉。
 これって、今の日本政府が国民に言っていることと、全く同じじゃない?

 あまり深読みをすると、せっかくのエンターテイメント性が損なわれてしまうのだが、こういうセリフのひとつひとつが、あまりにも直近の日本の人たちの想いと重なるような気がして、大きな共感とチカラを感じた。

 まぁしかし、作品自体はものすごく爽快な時代劇であるし、ストーリーそのものはある意味、王道とも言える勧善懲悪である。
 
 長尾謙杜も、若さと同時にもともと運動能力には長けているのだろうけど、それにしても絶え間ないアクションシーンを大迫力で演じている。
 
 実際の蓮田兵衛がどんな人間だったのかは別として、大泉洋が演じて大正解だったと思う。

 音楽も変に重厚なだけではなく、マカロニ・ウエスタン(知ってる人いる?)的なアプローチもあったり、かなり現代的な表現があって、時代性とのミスマッチが逆におもしろい。
 そういえば、荒廃した村の路を歩く兵衛の薄汚れた姿は、どこかクリント・イーストウッドを思わせる部分もある(笑)

 いや、面白かった!
 文句なし!

 この後、現代の日本がきっと変わっているであろう来年あたりにもう一度観たとしたら、どんな気持ちになるのだろうかと考える。
 現代日本に一揆が起きるかどうかは別にして、この物語同様その時に民衆が圧政に勝利しているとしたらきっと、周りのみんなと乾杯し、嬉し泣きで観ることになるのだろうなぁと、変化を求め面白がれる世界を作らなければと、そんなふうに思った次第。

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