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【コラム】アオリ記事/報道のテロリズム

 簡単に言うとこういう、不安を煽るような記事。

 マイナス金利というのはたしかに異常なことなので、どこかで修正されて通常の金利の発生する状況に移行するのは当然ではあるのだけど、こういうネガティヴなサプライズに利用して株価の大暴落を起こすような状況を一国の中央銀行の総裁がすると思うのか?っちゅう話。

 例えばアメリカでは強烈なインフレが起きて、それを抑え込むためにガンガン金利を上げていった。これはFRBがわざと景気を減速させて消費を抑え込もうとした、要するに敢えて景気を悪くするために取った金融政策で、これもまた異常事態であり、このために株が暴落するのは防ぎたいから良く言われるソフトランディングを狙って、金利、株価、失業率などを注意深く見ながら、まず金利上昇を止めて据え置きとし、今年は引き下げ入るというアナウンスで、株価の下落を止めているのだ。日本とは完全に真逆の展開。

 ここで前提になるのは、金利が上昇すれば必ず株価は下がるということすなわち、企業の業績が悪化するということだ。

 ではこの記事にあるように、突然のサプライズで緩和政策をやめ、金利を上げて日本の株価が暴落を起こし、急激に円高に振れたらどうなるか?
円高のせいで輸入物価が下がる。原油も下がるから物価は確かに全体として下がる。ということは企業の売上が下がり、業績は悪化する。業績が悪化すると人件費の上昇を抑える。そうすると賃上げの持続は昨年と今年のわずか2年で終了。
 これのどこに持続的な賃上げを伴った実質インフレ率2%の安定成長という要素があるのか。

 今までの数十年に渡るデフレスパイラルの経験があるので、人間も企業も少し業績が落ちると現金を溜め込むような習性になってしまっている日本に於いて、一気に業績が悪化した企業はまず最初に人件費を削る。人件費を削られることによって賃金の上昇が見込めなくなった上に金利の上昇で住宅等のローンの金利も重くなり労働者は消費を控える。円高で物価が安くなった上に消費を控えることで更に物価が下がりその影響で企業業績は更に下がる。
 というこの30年間続いたデフレスパイラルに逆戻りになるのだ。

 世界と日本は真逆の経済状況にあるということを念頭に置けば、はっきり言って年内の金融引き締めだって時期尚早である。
 賃金が上がらず、ひたすら物価が下がり、企業業績が悪化した30年という時間を取り戻し、持続的な賃上げを伴う物価の安定的上昇を確実にするという大仕事が、わずか2年で完了すると考えることが短気すぎるし、今年から始まった新NISAでやっと投資を始めた人たちがわずか3ヶ月で暴落を体験するとしたら、この新NISAという制度もここで終わる。損失の恐怖を知った投資初心者は2度と投資に手を出すことはないのだ。
 バブルの崩壊で大損失を出した多くの人が2度と投資に手を出さなくなったことが繰り返されるわけで、普通に考えればそんな金融政策はありえないとすぐに分かるはずである。

 と、同時に我々一般庶民は、賃金の上昇と物価の下落が同時に起きることは絶対にないということを常に頭に置かなければならない。
 好循環というのは、賃金が大きく伸びるから物価の上昇が気にならなくなる状況のことである。今現在、そんな気持ちを抱いている労働者はいるだろうか?みんな物価高に喘いでるんじゃないの?
 まだ収入が増える前に人の不安を煽るようなことは、直ちに経済を冷やす暴論であり、報道による暴力あるいはテロリズムとさえ言えると思っている。

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