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【認知心理学】感性認知のメカニズム


感性とは

感性あるいは感性表現、芸術に関して、実験心理学の立場から研究している心理学者の三浦佳世による定義は以下の通りである。
※2006年に定義し、その後2013年に再定義している。

ものやことに対して、無自覚的、直感的、情報統合的に下す印象評価能力。創造や表現などの心理活動にも関わる(三浦佳世,2006)

包括的、直感的に行われる心的活動およびその能力(三浦佳世,2013)

感性認知のメカニズム

 目、耳、鼻、舌、体、そして心を通じて、色や形、音、香り、味、触れた感覚、直感などを感じ取る。これらの感覚を総合して認識する働きのことを指す。

感性認知の具体例

・都会住まいの人が田舎に訪れた際に、自然の香りや、広大に広がる田園風景、虫や鳥の鳴き声などの自然音を感じ、妙に心が穏やかになる
・合唱コンクールの練習で、先生が「ここはもっとバーンと」という表現をしたが、「バーン」の解釈が生徒それぞれで異なり先生のイメージ通りの合唱にたどり着くのに時間がかかる
・サラリーマンが新商品の企画提案書を作成する際に、上司からより洗練した印象を与えるように指示をされたが、上司の理想系をイメージすることができず、何度も修正する羽目になってしまった

感性情報処置の働き

概念

感性処理は、直感的で感覚的なプロセスを含む。これは、曖昧で多義的な情報を扱い、主観性が重視される。

特性

  1. 感性処理は、状況依存性が高く、個別の状況に応じた情報の処理が行われる。具体的な外的対象ではなく、内的な感覚や直感に基づいて情報を処理する。

  2. 情報量は膨大であり、圧縮が困難である。また、非合理的に見える場合があり、共感や追体験が重要な要素となる。

  3. 結果は予測が困難であり、最適解が明確ではないことが多い。

知性情報処理の働き

概念

知的処理は、論理的で思考的なプロセスを含む。具体的には、明示的な記号や概念を使って、正確で一意的な情報を扱う。

特性

  1. 知的処理は、客観性が重視され、情報の正確性と一貫性が求められる。状況依存性が低く、普遍的な原則に基づいて情報を処理する。

  2. 情報量は比較的少なく、圧縮が容易であり、合理的な方法で情報を扱う。

  3. 具体的な動作原則を持ち、理解や説明が容易である。また、予測可能な結果をもたらし、最適解を見つけやすい。

感性情報処理と知性情報処理の関わり

知的処理と感性処理の相補性

知的処理と感性処理は相互に補完し合う関係にある。知的処理が論理的で客観的な情報処理を行う一方で、感性処理は直感的で主観的な情報処理を行う。これにより、両者は互いの弱点を補い合い、より豊かな情報処理を実現する。

具体的な関わり

知的処理は、情報の正確性と一貫性を保つために、合理的な方法で情報を扱う。一方、感性処理は、個別の状況に応じた情報処理を行い、直感的な判断を下す。このように、知的処理が構造的で予測可能な結果を導くのに対し、感性処理は予測困難で創造的な結果を生み出す。

実践例

例えば、デザインや芸術の分野では、知的処理と感性処理の両方が必要とされる。デザインの基本構造や理論は知的処理によって形成されるが、その実践には感性処理による創造性や独自性が不可欠である。

参考文献

新妻悦子, 描画制作過程における「知的処理」と「感性処理」, 美術教育協会誌, 31, 649-660, URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/55/4/55_4_649/_pdf.
高梨隆雄, 「感性のメカニズム」, 精密工学会誌, 55巻, 4号, 1989年, 649-660頁, URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/55/4/55_4_649/_pdf.

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