見出し画像

【読書ノート①】メトロポリタン美術館と警備員の私

あらすじ

兄の死をきっかけに、元の世界にはもう戻れないと「ニューヨーカー」勤務というエリートコースから、美術館の警備員の仕事に変えた著者。喪失から離れたくない、動きたくない、沈黙の中で過ごし、歩き回っては元の場所に戻り、そこにあるものも心を通わせ悲しみと美しさのみ感じたい。誰かを失ったからと世界の動きが止まるわけではない。と思い、この仕事を選んだ筆者が警備員としての仕事の話と所蔵美術品に向き合う話。警備という脚光を浴びない裏話も面白く、芸術への深い造詣も興味深かった。

感想

「沈黙の中で過ごし、歩き回っては元の場所に戻る」という警備員の仕事同様、静かなテンションで語られていくのだが、だんだんと警備員の同僚や所蔵品との対話を重ねていくことで語り口も静かな熱気を帯びている気がしてきて、これは彼自身が仕事を通じて周囲とコミュニケーションを取りながら喪失を埋めていく、成長物語かと思った。最初は、

誰かにパスすべきボールも
前に進めるべきプロジェクトも
目指すべき未来もない。
この仕事を30年間続けたとしても何の進歩もないに違いない。

本編より

ということで、
作者は優秀な大企業勤めであったという大きな前提の違いはあれど、なんだか自分の現状と似ていて、日々ルーティンワークをこなし何時間も無駄に泥沼に落ちていく感じに何か納得をし、自分だけではないのだと慰められている気さえしていた。けれど、読み進めているうちに、特に言及されているわけではないけれど、同僚との関わり、家族、観光客との関わりという、人との関わりの中で彼が静かに変わっているのではないかと思った。
そして、やはり、成長や変化にはどこにも人との関わりが大切なのかなと認識した。とは言いつつ、私には難しいが。だから筆者は成長し、大切なものも変化し新たなステージに向かっていく。これは希望の物語なのかなと思った。
所蔵品にも色々な見解があり、面白かったのだが、特に、
モネは「この世界の視覚では飼い慣らせない側面を描いた」という視点が印象的で、
たしかに、有益となる情報のみを探し回り、それ以外は無視しがちな現代に何か刺さるものがあった。
また、古代ギリシャでは、
メンタルの変化は外的影響、女神が現れることで起こるという理解も面白くて、

だるくてよろよろしていたのに、
突然気分が明るくなってエネルギー、勇気が溢れてきて、それまで出来ないと思った事が出来るようになる

というのが、今は内面から変わったと考える考えるが古代ギリシャでは女神が現れたと考える価値観がなんだか心に残った。
なんだか静かに美術館の常設展に行きたくなった。

ということで、
読書ノートもどきの乱文メモを文字化してみたのだが、きちんと読書ノートに纏めるのって意外と大変な作業だ、、
ま、これも自分の何かの成長につながれば、、笑。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集