![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/149015373/rectangle_large_type_2_03302baefd824ef0e0eecd8d61dd286e.png?width=1200)
【読書記録】すきだらけのビストロ うつくしき一皿 冬森灯
今回は冬森灯作『すきだらけのビストロ うつくしき一皿』の感想をアウトプットします。
あらすじ
イルミネーションに飾られた小さなサーカステントにキッチンカー、お腹がぐうと鳴るいい香り。それらに出会ったあなたは運がいい。
そこは期間限定で現れる幻のビストロ「つくし」。
猫を思わせるギャルソンとシロクマのようなコックが、抜群においしい料理で迎えてくれる場所だ。
キッチンカーの赴くままに店を開く「つくし」だが、きまっていつも芸術のある場所に現れる。ピアノの演奏が聞こえる野外劇場、絵画が飾られたマルシェ、映画が上映されている砂浜……。
おいしい料理と素敵な芸術は最高のマリアージュ。弱った心と体をふっくら満たしてくれるので、どうぞ夢のようなひと時を楽しんでお帰り下さい。
主人公について
今作の主人公は白熊のようなコック江倉有悟(えくら ゆうご)と、黒猫のようなギャルソン江倉颯真(えくら そうま)兄弟です。ギャルソンとは男性の給仕係のことで、兄が作った料理を弟がサーブしています。見た目や性格は似ていませんが、お互いに認め合い支え合う仲の良い兄弟です。
料理について
ビストロとはフランス語で、伝統的で家庭的な料理を楽しむことのできるカジュアルな飲食店だそうです。「ビストロつくし」も例に漏れず、おいしいお酒とフランス料理を提供しています。
「左から時計まわりに、パリのきのこのポタージュ、香草と木の実のサラダ、秋ナスのファルシ、オリーヴのマリネ、パテ・ド。カンパーニュでございます。ごゆっくりお召し上がりください」
お客様のおもてなしや料理の内容説明、飲み物のおすすめは給仕係の弟颯真が、メインであるスペシャリテについては厨房からでてきた兄の有悟が説明をしてくれます。
印象に残ったフレーズ3つ
「芸術は、心のごちそうですね。心が満ち、お腹も満ちたら、それは世界で一番おいしい料理なんじゃないかって、私は思うんですよ。そんな時間がちょっとでもあれば、憂き世を乗り越えていける気がするんです。見える世界も、ちょっとだけ変わる気がして」
芸術は時に、なにげなく過ごす日々を一気に塗り替えるような、鋭い切っ先を突き付けてくる。
「好きなものは増えれば増えるほどあなたを強くする。たくさん出逢ってほしいわ、映画でもお洋服でも本でも」
感想
読んでいて心が満たされるお話でした。「ビストロつくし」が現れる場所には様々な芸術があります。料理の描写と芸術の描写、どちらも繊細で想像力を搔き立てられました。その芸術に触れた後にこの作品を読み直すと、また味わい深い一冊になるのではないかと思います。
物語は有悟に援助をしていた謎の人物「翁」を探すことが軸になっていますが、私にとっては、「翁」に関する話よりも、サーカステントを携えた「ビストロつくし」の描写や芸術を愛する人々の話の方が魅力的でした。
この話を通して興味をもったのがフランス料理です。本文を読むだけで”なんかおいしそう&おしゃれ”感は十分に伝わるのですが、フランス料理についての造詣が深ければ、より解像度の高いイメージを持つことができると感じました。参考文献にフランス家庭料理に関する本があったので、読んでみたいと思います。
個人的、こんな人におすすめ!
・芸術に関する小説が好きな人 例:原田マハ
・夜の飲食店に魅力を感じる人 例:『満月珈琲店の星詠み』
この本が好きならこの本も好きそう…!というつながりをどんどん増やしていきたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。