冬の夜の晶子
冬の夜の星君なりき一つをば云ふにはあらずことごとく皆
与謝野晶子
「思えばあなたは、この夜空の一つの星どころか、私にとってはすべての星でした」
これは自分より先に逝ってしまった亡き夫への賛美と、愛慕を込めた歌。
与謝野鉄幹と言えば、色の絶えない恋多き男として知られました。晶子に出会う以前から、品行方正とは程遠い男。いまでいう「ダメ男」の類でしょう。
しかしそんな人だったからこそ、晶子は夢中になったのかもしれません。なんであれ晶子にとって鉄幹は、執着してやまぬほどに恋に焦がれた夫でした。
先の歌のほかにも、亡き夫へ捧げる歌はいくつかありますが、実は夫より先に病臥にいたのは妻の晶子で、彼女が苦しむ闘病のさなかにおいては、鉄幹はこんな歌を詠んでいます。
人の屑われ代り得ば今死なぬ天の才なる妻の命に
与謝野鉄幹
「自分のようなロクデナシが身代わりになることで、この人が救われるのであれば、こんな命、投げ出したっていい」
この歌にも滲むように、鉄幹は晶子を妻として愛する以上に、彼女の歌人としての才能を、ひときわ尊敬してました。
お互いに、相手の最期までを愛したのは、他でもない自分なのだと、こうも誇らしくいた二人に、憧れを禁じ得ないのは私だけかしら。
鉄幹の最後を看取ったときにも、晶子はさぞ誇らしくいたことでしょう。なんだろう、このうらやましい気持ち。そしてなんでかしら、冬になると触れたくなる晶子と鉄幹。
ということで、二人に捧げてこの花を。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ポインセチア 白 花言葉「あなたの祝福を祈る」
Text
フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主 鈴木咲子
都内生花店に8年在籍ののち渡独。2000年に南ドイツ、アルザス地区の生花店での勤務を経て帰国後、2002年 通販サイトHanaimo開業。
一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格
https://www.hanaimo.com/