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花野のうた

なにとなく君に待たるるここちして
出でし花野の夕月夜かな
与謝野晶子

(なんとなく恋しい人が私を待っていてくれるような気がして、歩いていると、そこは秋の花々が咲く野原。上を見上げると美しい月)

秋の夜、恋人の面影、野には花、空に月。なんてロマンティックな情景でしょう。

ここでいう「花野」とは「秋の花が野に咲き乱れる様子」という意味で使われていますが、古い時代の「花野」といえば、萩の花が咲き乱れる様をいいました。

日本文化における植物観賞は、万葉時代の貴族が、外なる自然を庭に植えたことにはじまります。そこでもっとも多く植えられたのが萩であったことを推測するのは、万葉集において、最も多く歌われた植物だから。

萩が庭に咲き乱れる様子をはじめ、ほかなる植物への賛美は、当時たいへん多くの詩歌を生みました。またそうした植物の観賞が、貴族の外にも広がったことから、「花野」という言葉は庶民へも浸透し、「秋の花が野に咲き乱れる様子」を表す言葉へと、変換されていったのです。

このように「花野」は、人の立場に縛られることなく、自由な視点と文化の香りを染み込ませて、今へと受け継がれています。絶やさず残していきたい美しい言葉です。

さて先の晶子の歌では、どんな花が咲き乱れていたのでしょうね。

今日もいちりんあなたにどうぞ。

ハギ 花言葉「柔軟な精神」

アスカノハギ

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。
「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/


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