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観劇 劇団⭐︎新感線『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』1幕

キャスト

石川五右衛門 古田新太/クイーン・アンヌ 天海祐希/ロザリオ・イクシタニア 石田ニコル/ラウル・ド・ボスコーニュ 神尾楓珠/マリア・グランデ女王 高田聖子/ケッペル・レンテス 粟根まこと/エリザベッタ・アミスタ内務大臣 森奈みはる/マクシミリアン・ド・ラブズブール 早乙女友貴/ベルナルド・アミスタ 西垣匠/ボルマン・ロードス宰相 生瀬勝久

スタッフ

作 中島かずき/作詞 森雪之丞/音楽 岡崎司/演出 いのうえひでのり

東京公演

新橋演舞場 2022年11月1日(火)~12月6日(火)

主催・製作

松竹 ヴィレッヂ


先日、大千穐楽を迎えた『薔薇とサムライ2』。
新感線は前作の『薔薇とサムライ』も含め学生時代から定期的に観ているのですが、今作、久しぶりにどストライクの作品に出会ってしまいました。11月5日マチネの公演を観劇して以降、新橋演舞場に通い詰めてしまったほど。感想はネタバレしています。

前作のあらすじ

『薔薇とサムライ』は、古田新太さんが石川五右衛門を演じる五右衛門ロックシリーズの第2作目。日本を飛び出しヨーロッパを舞台にしたパラレルストーリーという位置づけです。前作は2010年上演。女海賊アンヌが、実はヨーロッパの小国・コルドニアの国王の血を引く継承者であることが発覚。海賊仲間であった五右衛門の協力を得て国の混乱を収め、国王になるまでが描かれました。

薔薇サム2のはじまり 〜デルソル島〜

今作の舞台は、アンヌがコルドニアの国王になって十数年後。物語は南の島・デルソル島から始まります。
場面は島の研究所。医者のケッペルが何やら閃いた様子でいるところに、慌てた島民が駆け込んでくる。

「ヨーロッパの兵が攻めてくる!」

あっという間に兵隊に囲まれてしまったケッペルたちを救うのは、石川五右衛門。

「我々には強い味方がいる!」

ケッペルの台詞を合図にシリーズお馴染みの五右衛門ロックが流れ、パイナップルを被って隠れていた(笑)古田さん演じる石川五右衛門さまが登場。
2015年上演の『五右衛門vs轟天』以来、実に7年ぶりの五右衛門との再会に、序盤にしてなんだかウルっとしてしまいました。そう、私、五右衛門シリーズ大好きだったなぁ…と。学生時代、今はなき新宿コマ劇場に『五右衛門ロック』を観に通いました。ここ数年、他の趣味に忙しくしていて新感線の舞台からも少し離れてしまっていたのですが、このゾクゾクする感覚がやっぱり好きだなぁ…と。

そして、ここから薔薇サム2は始まります。攻めてきた兵隊がコルドニアの騎士だと気づいた五右衛門は、その真意を探るべく、久しぶりに旧友アンヌに会いに行くことにします。

「久しぶりに会ってみるか。アンヌ・デ・アルワイダ…いや、今じゃ立派な女王様、クイーン・アンヌによぉ!!」

ワクワクさせる古田さんの台詞。あー どんなアンヌに再会できるのだろう?と期待を煽られます。

調印式

場面は変わり、ソルバニアノッソの国王・マリア陛下がボスコーニュ公国を併合し、宮殿ではその調印式が執り行われていました。

「コルドニア国王、アンヌ陛下がご到着されました」

宮殿の扉が開いて、いよいよアンヌ陛下こと天海祐希さんが登場します。場面的に自然と客席から拍手が起こるのですが(こうしたさりげない演出が好き)、マリアからわざと違う時間を教えられて遅刻したいう設定のため、少しムスッとした表情です。でもお美しい。この後、七変化どころではない衣裳チェンジをされる天海さんですが、私はこの薔薇の刺繍をあしらったドレスが、ヘアスタイル、メイクとの組み合わせも含めて一番好きです。登場シーンに相応しく華やかで、かつ、国王としての貫禄も感じる。

この調印式のシーンでは、国とその文化を愛し、民を敬うアンヌの在り方が描かれます。その象徴がアンヌとアンヌが贔屓にするイクシタニアの王女ロザリオによる劇中歌『パンの文化』です。コルドニア製の小麦やバターを使い、自国の真面目な職人が焼いたパンが、フランスやスペインの美食家を唸らせる。

パンひとつにだって
文化があるの
美食家の皆さんが気に入ってくれた
それが何よりの証拠
パンと文化 作詞:森雪之丞

『薔薇サム2』の魅力のひとつは、物語の要となるメッセージが歌に乗せられていることだと思っています。森雪之丞さんの歌詞が本当に素晴らしく、歌唱力のある演者さんの歌声によって胸に響きます。天海さんはご自身では歌は得意ではないとおっしゃっていますが、私は今作での、力強く役柄の感情を乗せた天海さんの歌が大好きです。そして石田ニコルちゃん。歌がめちゃくちゃ上手い。声色もかわいくて、若き王女役にピッタリでした。

パンの件でマリアの怒りを買ったアンヌは、さらにマリアを牽制します。

「フフフッ… 誤魔化すつもりはない。
 確かに私は海賊出身。だからこそ私が愛するのは七つの海を吹き抜ける自由の風。
 そのコルドニアの自由が脅かされるときには たとえ無礼だ野蛮だと謗られようが遠慮なく立ち向かう。
 それがこの、クイーン・アンヌの誇り!」
♪チャ~~ チャ~~ チャチャチャチャ〜〜〜

かっっっっっこいい!!!!!
照明が落とされ、他の演者さんたちがはけていく舞台にひとり、センターで最高明度(?)の照明を当てられた天海さんが、この台詞をそれはもうめちゃくちゃかっこよく、威厳たっぷりに言い放つ。台詞終わりと同時に盆が回ってセット転換、生のバンド音が響きオープニング曲のイントロが流れ始めます。
ああ 五右衛門とアンヌの物語がまた始まるんだ・・と初見で最も胸が高鳴った瞬間です。

オープニング『海賊女王の伝説』

パンフレットを読むと、オープニングの稽古を終えた天海さんがハイテンションでいらしたことが雪之丞さんのインタビューに書かれているのですが(アゲアゲになった可愛い姐さん、なんて言われていてそのお姿見たすぎる!)オープニングの天海さんは本当に楽しそうです。その表情、立ち振る舞いから伝わってくる。特に大好きなのが、五右衛門を見つめる目。五右衛門は少し悪い目つきで見下すけれど、アンヌはそれすらも嬉しそう目で笑い返すんです。あーーー 古田さんあんなにかわいい天海さんをあの距離感で見て恋しないの????笑
また、これは完全にファンサービスだと思うのですが、1の海賊姿で出てきてくれます。1分足らずのパフォーマンスですが、後ろのスクリーンには前作の映像が流れ…今時の表現で言えばエモいというやつ?敵たちとの殺陣を披露し、衣裳チェンジのためダッシュでセット裏へ。下手側の席では走りながら海賊帽子を脱ぐ天海さんの姿が見えました。スピード勝負の衣裳チェンジの大変さが伺えます。

再び、今度はシルバーのドレスに着替えてロングヘアーを下ろしたスタイルで登場したアンヌ陛下のソロパート。

「♪コルドニアは〜 自由の国〜〜」

大好きすぎる・・・!!!!!
すべてのライトを浴び、目をカッと開き、両手を広げるアンヌ様。いや天海さん。新橋演舞場を支配するかのようなオーラ。こんなにも舞台が似合う。めちゃくちゃかっこいいんです。何度も通いましたが、オープニングだけ延々に再生したいくらい大好きです。コルドニアの民たちの「♪最高!だね!」に合わせてとびっきりの笑みで民たちと目を合わせるアンヌ様。この、わぁ〜 っていう天海さんの笑顔がとってもかわいい。

「♪その笑顔 絶えないように守りたい」

客席を包み込むように胸に手を当ててソロパートを歌い上げるアンヌ様。12年前のステージで観た荒削りな海賊アンヌの姿はもうそこにはなく、国を治め、国民たちから慕われてきた、アンヌ陛下の姿がそこにありました。

ボルマン宰相の野望

その頃、コルドニアではソルバニアノッソの侵略に怯える国民たちが宮殿の前で騒ぎ始めていました。そこへ現れるのが、コルドニアの宰相・ボルマン。不安に陥った国民をなだめるのですが、ボルマンには裏の顔がありました。(まぁ生瀬さんがいい人そうな役で出てきた時点で察しがつくw)
ボルマンは、マリア陛下と共謀し、中毒性のある塩・パライソブランカを使ってヨーロッパを支配しようと画策していました。それに気づいた五右衛門は忠告するも、アンヌを盾に取られ、身動きを封じられてしまいます。
ベテランお二方が対峙するお芝居。観るたびにテンポや台詞の抑揚が違い、でもとても自然なところがすごい。生のお芝居の面白さを感じられる場面でした。

五右衛門とアンヌの再会

コルドニアの危機を悟った五右衛門が、エリザベッタに化けてアンヌと再会するシーン。
五右衛門の顔を見た瞬間、手を叩いて笑顔になるアンヌがもうかわいいの!昔馴染みの顔を見て安心したような。
しかし、五右衛門からボルマンの野望を聞き、顔色を変えるアンヌ。そして五右衛門に言います。

「頼みがあるの!私、簡単に動けないから」

アンヌとエリザベッタの絆

慌てふためきながら花道を駆けてくるエリザベッタ。(本物)
このときロザリオが「本物!?」って言うのですが、これ、いつの日からか私のお気に入り台詞のひとつでした。ニコルちゃんのポーズがかわいい。

イクシタニア国王の崩御の知らせを受け、ロザリオはベルナルド(エリザベッタの息子)とともに国へ戻ることに。二人を見送りながら、アンヌとエリザベッタはお互いが出会った頃を回想します。

アンヌ「立派な若者になったわね、ベルナルドも」
ベッタ「それだけ私たちが歳を取ったってこと」

みはるさん曰く「ご褒美のような」元宝塚ペアによるデュエット曲。宿命を受け入れ、自由の海を去りコルドニアの国王へと転じたアンヌを、一番近くで見守りながらずっと気にかけてきたエリザベッタの心情が歌われます。

時々ふと思うの
女王の座を押しつけてしまって
あなたの自由な未来
奪ったんじゃないかと…
私達の夢 作詞:森雪之丞

2幕のクライマックスとも関連する重要なシーンです。前作から続投のエリザベッタの存在は、一見、逞しく生きるアンヌにも葛藤があるのではないかと、アンヌというキャラクターに奥行きを与える役割を担っているように思います。アンヌは他人に弱みを見せないクイーン、だからこそ天海さんの表情や台詞ではなく、みはるさんのキャラクターを通して間接的に伝わるものがあります。

マリアの息子・マクシミリアン

ソルバニアノッソではマリアが息子・マクシミリアンに国の統治を任せようとしていました。
マクシミリアンを演じるのは、早乙女友貴くん。国王など微塵も興味がなく、マリアの圧力から逃げるため箱に引きこもっているおぼっちゃま役。五右衛門に憧れ、「ニンジャになりたいんだっ!!!」なんて甲高い声を出すからびっくり。笑
でもこのおぼっちゃまが後にやってくれちゃいます!五右衛門が化けていたという設定でムッシュ・ド・ニンジャとしてソルバニアノッソの兵士から逃げるロザリオたちを助けたり、ピンチの場面に颯爽と現れては高速な剣捌きで敵を薙ぎ倒し、去っていくのです。友貴くんを…憎い使い方する…!
初見ではニンジャの登場でもウルっとしてしまって。自分でも謎の感情だけど、新感線が見せてくれる圧倒的ヒーローがあまりにかっこよくて懐かしくて、こういうの好きだった…また会えた…みたいな気持ちだったのかもしれません。

マクシミリアンのシーンでは村木よし子さん演じるアーヤの歌唱に合わせて友貴くんが扇子を捌きながら踊ったり、五右衛門が現れて忍術極意の歌を披露したりとサービスタイムのような演出がありました。

シャルルの弟・ラウル

前作から続投の人気キャラクター(?)浦井健治さん演じるボスコーニュ公国の王子は、今作では映像出演しています。冒頭ではイタリアへ航海中に音信不通になったとされていたシャルルですが、海賊に襲われたところを鷲のアンヌ(シャルルが飼ってる鷲w)に捕まって命拾いしていました。
鷲のアンヌがシャルルからの手紙を届けにくる。という若干無理やりな設定で、五右衛門はシャルルの無事を知らせるため弟のラウルに会いに来ます。マリア陛下の権力に屈し、生きるために国の併合に応じなければならなかったラウル。でもそれで、シャルルが戻ってきた時に堂々と胸を張っていられるのか?葛藤するラウルの背中に五右衛門が問いかけます。

浦井さんの映像(シャルルの手紙)が流れると会場からはクスクス笑いが。なんなら一番笑いとってなかったか?シャルルってやっぱり人気なの?笑

難民の避難所

イクシタニアから逃げてきたロザリオたちはコルドニアへ辿り着きます。ソルバニアノッソの支配下にあるイクシタニアの民を連れ出したことで、マリア陛下は戦争を起こすかもしれない。しかしアンヌは屈することなく避難民を受け入れます。

夢を見るため
人は生まれてきた
その夢守るのが
理想の国です
理想の国 作詞:森雪之丞

多くの劇中歌の中でも、大好きなフレーズのひとつです。また、このフレーズを舞台下手、前方に立ち歌う天海さんがお美しい。このシーン、下手のお席だと目の前に天海さんが立たれるのでドキドキ。。眩しい。。衣裳も変わり、赤い総レースのようなドレスです。

そしていよいよ1幕のクライマックスへ。
ボルマンの悪事を知ったアンヌは兵を用意しボルマンらを捕らえようとしますが、避難民を装って入国していたソルバニアノッソの兵士らに逆に襲われてしまいます。ここからメインキャストがほぼ集結。アンヌたちのピンチを例のニンジャが助けに来ると、アクションクラブの役者さん達(敵兵)と華麗な殺陣を披露。花道を役者さんたちが走る!走る!花道横のお席では本当に真横を駆け抜けていくのでとても迫力があります。そして友貴くんや西垣くんら若手俳優さんの走りがめちゃくちゃ速い!いろいろなお席で観劇したけど、やっぱり花道の近くは舞台の世界観に入り込めるような体感があって好きかなぁ。花道があることで舞台に広さも奥行きも出て、よりお芝居の世界の”立体空間”を感じられる気がします。

1幕の最後は、敵兵に襲われたアンヌが滝壺へ落下し、記憶を失ってしまうところで幕間へ。まぁ2幕の冒頭を見ると、これがやりたかったがための記憶喪失ね(ニヤリ)となるわけなのですが。

2幕の感想は次の記事に続きます。

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