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観劇『レイディマクベス』

キャスト

レイディマクベス 天海祐希/マクベス アダム・クーパー/マクダフ 鈴木保奈美/バンクォー 要潤/レノックス 宮下今日子/娘 吉川愛/ダンカン 栗原英雄

スタッフ

作 ジュード・クリスチャン/演出 ウィル・タケット/音楽 岩代太郎

東京公演

よみうり大手町ホール 2023年10月2日(日)〜11月12日(日)

あらすじ

ウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』に登場するマクベス夫人を新たに解釈し、彼女を主人公にしたまったく新しい物語。
戦争が続く国で、レイディマクベスの関心ごとは「夫・マクベスとともに国を治める」ことだった。しかし、かつて軍人として戦場に赴いていた彼女だが、娘の出産を機に戦場に戻れない身体になっていた。一方のマクベスは、度重なる戦いで心を病んでいた。そんな折、国王ダンカンが次の後継者を血縁以外から選ぶと宣言する。レイディマクベスは野心に燃え、なんとか夫・マクベスを再起させようとする。

普遍的な問題提起

本作では、具体的な地名や時代が語られることがない。劇中で登場人物が名前を呼び合うこともない。(公式サイトでは登場人物の紹介とキャラクター同士の関係性が記載されている。これを読んでいないと話についていくのが少し難しいかもしれない)
これらは、登場人物たちがディスカッションするテーマや舞台上で起こる出来事は、どの時代にも当てはまる普遍的なものだということを示している。公演パンフレットのインタビューで、演出のウィル・タケット氏は「現在と過去の間のどこかに浮かぶ一種の『異世界』」であると表現している。

前半(1幕・2幕)では登場人物がそれぞれの立場から戦争や国の在り方を議論し、後半(3幕・4幕)では野心に燃えるレイディマクベスの狂気を中心に物語が大きく動いていく。
この物語の軸は、レイディマクベスの感情のうねりにある。その変化を読み取り、感じることで、物語に上手く没入していけるのではないかと思う。もっと言えば、どこか異世界の話ではなく、自分事として考えることができれば、より響くのかもしれない。結婚や出産、キャリアのこと、親子のこと、国の攻防のこと、シンプルに捉えればとても身近なテーマが散りばめられている。インタビューなどでの天海さんの「人間シェイクスピアの時代から変わらない」というコメントもヒントになる。

これまで2回観劇したが、1回目は演者の膨大な台詞が自分の体を滑っていくような、掴みどころのない感覚のまま2時間が過ぎてしまった。2回目は全体像を把握できていたからか、レイディの感情の動きとともに物語についていけた気がする。前方席だったこともあり、役者さんの表情で伝わるものも大きかった。セットや音響がシンプルだからこそ、細かい表情まで視認できる席で観た方がわかりやすいというのはあるかもしれない。特に2幕ラスト(休憩前)。野心に火がついたレイディが正面を見つめた時の目つき、表情が恐ろしく、ゾクゾクした。

そして、要潤さんが公演パンフレット内の対談で「誰かのキャラクターの一つの台詞が、もの凄いグサって刺さる瞬間がある」と話していたけれど、そのような台詞に一つでも出会えれば、この観劇体験は成功(?)とも言えるかもしれない。

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