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創価学会員歴55年、教員歴32年の楢崎修平さん&現役の小学校の先生・鈴木あづみさん「日本の教育は大丈夫なのか!?」2024年最後の対談LIVE【対談YouTube vol.233】
教育の独立と四権分立の必要性――日本の教育は大丈夫なのか?
日本の教育は、今まさに大きな転換点に立たされている。2024年最後の対談LIVE「日本の教育は大丈夫なのか!?」では、現役小学校教師・鈴木あづみ氏と、教員歴32年、創価学会員歴55年の楢崎修平氏が、日本の教育の現状と未来について語り合った。本稿では、彼らの議論を整理しつつ、日本の教育が抱える根本的な問題点と、教育改革の可能性について考察する。
教育の独立をめぐる議論
日本の政治体制は「三権分立」、すなわち立法・行政・司法の三つの権力が分立している。しかし、楢崎氏はこれに「教育権」を加えた「四権分立」を提唱している。これは、教育を行政や政治から独立させることで、より公平で自由な教育の実現を目指す考え方である。
そもそも、日本の教育制度は明治時代以来、行政主導で運営されてきた。戦前は国家主義的な教育が推進され、戦中は戦争協力のための教育が行われた。戦後になり、民主主義教育の理念が導入されたものの、結局のところ、教育は政治や行政の影響を大きく受け続けてきた。楢崎氏によれば、1969年に創価学会の故・池田大作氏が「大学紛争を教育の失敗と捉え、教育の独立を提唱した」ことが、この四権分立の発想の源流であるという。
教育が行政や政治の支配下にある限り、本当の意味での教育改革は難しい。たとえば、学校のカリキュラムは文部科学省が決定し、教員の人事も行政によって管理される。この状況では、教育現場の実情に即した改革を行うことができない。だからこそ、教育権を独立させることで、教育の自由度を高め、より良い学校運営を実現すべきだというのが楢崎氏の主張である。
現場の教師が感じる改革の必要性
対談の中で、現役の小学校教師である鈴木氏も、教育制度の硬直化を指摘した。教育現場では、改革が必要だと感じる場面は多々あるが、実際にはほとんど何も変えられないのが現実だという。
たとえば、教師たちは子どもたち一人ひとりに向き合いたいと考えているが、文科省の定める厳格なカリキュラムや、過度な事務作業によって、十分な対応ができない。また、いじめ問題や発達障害の児童への対応など、現場の裁量で柔軟に対応したい場面でも、行政の規制によって動きが制限されてしまう。
このように、教育現場で働く教師たちの声が行政や政治に届かず、改革の必要性が認識されても実行に移すことができない現状がある。鈴木氏は、「教育権が独立すれば、現場の実情に即した教育改革が可能になるのではないか」と語った。
教員が政治に関与しづらい構造的問題
しかし、教育を改革するためには、政治の場で議論を深め、制度そのものを変えていく必要がある。ところが、日本では教員が政治に関与しづらい仕組みになっている。
楢崎氏によれば、教育出身の国会議員は非常に少ない。その理由の一つは、公務員が政治活動をすることが法律で厳しく制限されているからだ。公立学校の教員は公務員であり、政治活動を行うことが禁じられている。もし国会議員や地方議員を目指す場合、一度教職を辞めなければならない。しかし、政治の世界に挑戦しても必ず当選するとは限らず、大きなリスクが伴う。こうした事情が、教員出身の政治家が少ない理由となっている。
また、教育改革の重要性が政治の世界であまり重視されないという問題もある。政治家が選挙で票を集めるためには、有権者に直接メリットが伝わる政策を掲げる必要がある。しかし、教育改革はすぐに成果が見えにくいため、選挙の争点になりにくい。結果として、教育に関心のある政治家が少なくなり、改革の遅れにつながっている。
教育の未来と四権分立の実現可能性
では、今後どのようにして教育改革を進めるべきなのか。楢崎氏は、まずは教育の独立を訴える世論を広げることが重要だと述べた。四権分立の概念をより多くの人々に知ってもらい、教育の重要性を社会全体で再認識することが第一歩となる。
また、政治の場においても、教育の専門家がもっと関与できる仕組みを作る必要がある。たとえば、教育政策を専門とするシンクタンクを設立し、そこで提言をまとめて国会に働きかける方法も考えられる。さらに、地方自治体レベルで教育の独立を進めることも一つの手だ。たとえば、教育委員会の権限を強化し、行政から独立した意思決定ができるようにすることで、実践的な改革が可能になる。
結論
日本の教育は、長年にわたって行政と政治の影響を受け続けてきた。その結果、現場の教師たちは改革の必要性を感じながらも、なかなか変革を実現できない状況にある。楢崎氏が提唱する四権分立の考え方は、こうした問題を解決するための一つの有力なアプローチとなるかもしれない。
教育を独立させることで、より自由で創造的な学びの場を実現し、子どもたちが未来に向けて本当に必要な力を身につけられるようになる。そのためには、まず教育の独立の重要性を社会全体で認識し、政治の場でも教育改革を推進する動きを強めていくことが求められる。
これからの日本の教育をより良いものにするために、私たちは何をすべきなのか――その問いに向き合うことこそが、今、最も重要な課題なのではないだろうか。